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紙の本
男の弱みは常に女か
2011/07/24 15:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
女の警察と渾名される主人公は、あるキャバレーのチェーン店の保安部長という肩書きが付いているが、要するに借金を踏み倒して逃げたホステスを探し出すのが仕事。それが学生時代の友人である雑誌記者が不審な死を遂げたことに好奇心をそそられて、引き寄せられるようにその原因に近づいて行く。東海道新幹線用地買収に絡む汚職事件を題材にした「夢の超特急」に続いて、今度は山陽新幹線での疑獄が背景に隠されている。それと平行して、様々な新興資本が業界に参入し、大勢のホステスを抱えて趣向を凝らした支店を拡げていくというチェーン店方式が勃興していく過程が重なっている。つまり金に絡む線はどこかで繋がっているのか。ホステスの失踪も金か男に絡んでいる。
そんな中で、主人公も新しいビジネスの流れに乗りつつ、女たちの生き方にも関わっていく。事件の鍵となる女に惚れてしまい、深い関係になるのだが、それは正義感から犯罪を暴こうという姿勢から、自分と女のために戦うという危険な領域に踏み込んでしまうことで、現実社会に生きる人々が何かしら抱えるジレンマだろう。自分の利害の絡む世界で問題があるからといって、恋人を告発することもできないし、公然と支援することも公正であるか疑問がある。何よりも二人の関係をおおっぴらにすることがどんな場合でも可能だろうか。本作の場合で言えば、商品に手をつけている、巨大な権力に対立している。
正義とか公正とかがまだ空論だった時代の話なのだ。モラルや人権が守られるための制度なんてものは十分では無く、人の心の中だけのことだった時代。組織の歯車になっていれば守られたかもしれないものが、個人を剥き出しに生きざるをえない世界では戦って勝ち取るしかない。この時代には多くの人がその中間のどこか不安定な場所にいて、また憧れていたりもしかかもしれない。加えてその女性が名器なんてことになれば、それって一体なんなのだ、そんなに素晴らしいものなのかという想像力をかき立てる。たぶんまだ夜の世界のこういったお仕事や業界についての情報もさほど一般化していない頃だ。
細かい設定はどうでも、事件、謎の追跡、現場に自分の恋人が絡んで来た時、人の緊張は最高潮に達する。そんな危険を犯したくはないのも人情だが、勝つか負けるか人生と女を賭けた謀略に巻き込まれてしまったらそのスリルからは逃れられない。殺された友人の仇討ちか、女を守るためか、正義感か、様々な動機が混然として、後戻りすることも出来ない。そんなドラマチックな場面の連続する展開で、まったく目が離せなくなる。作者のストーリーテラーとしてのセンスが全開されていると言っていいだろう。
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