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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦から今日まで、壮絶な歴史を背負わさせる事となった「沖縄」の魂の欠片を繋ぎ合わせた物語。
かなり癖のある文体に困惑しながらも、その詰め込まれた言葉に焦燥が現れているようで、抑圧された世界の息苦しさ、生々しい息遣いが伝わってきた。
沖縄で生まれ、沖縄で育ち、全身で沖縄を感じてきた著者が送り出す、終わる事のない連鎖の歴史小説。
好みがかなりわかれるだろう作品
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沖縄の多要素性を描きながら150pを疾走していく
仕掛けが多いしテーマとしても面白い
読み返したくなる
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すごい小説に出会った!
これは戦後の沖縄の人々の魂が若き沖縄の作家に憑依して言葉がほとばしってるかのようだった。
終わらない戦後と南国のじっとり湿った性と暴力が絡みつく。
最後まで取り憑かれたように読み耽った。ここ数年に読んだ若い作家の作品の中ではダントツで好きですね。
中上健次に出会ったときのような衝撃を受けてます。
『百年の孤独』のマジックリアリズムとも通ずるものがあった。
この小説自体が魂を持っていて読者に語りかけているような気がした。
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言葉が圧倒的な力でもって頭に流れ込んでくる。音と温度の濁流の中を必死で追い続ける読書体験。
聞きなれない言葉で立ち止まることさえ許されないまま先へ先へと押し流されていく。
理解するんじゃない、飲み込むんだ、と言われたような熱さ。
祖父母の代でかろうじて戦争に関わっているであろう年代の、それでも沖縄という地で生まれ育った作者だからこそ描ける立体。
彼らはきっと知らなくてもわかっているんだ、と思う。
戦争を過去のものとして平面的に拒否している自分の冷たさを、その薄さを突きつけられている気がする。
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「月ぬ走いや、馬ぬ走い」(ちちぬはいや、うんまぬはい)
このタイトルどういう意味だろう?
不思議に思い手に取った作品。
本を開くと目次がない。
さらにページをめくると改行がなく句読点が少ない。沖縄の言葉。
章の最後が次の章のはじめにの1行に繋がっていて、現在と過去を行ったり来たり。
不思議…。
14章、150ページ、14人の語り手から沖縄戦争から現在までの沖縄の歴史が感じられる。
当たり前なんだけど、歴史は繋がってるんだとしみじみ思った。
戦争は終わった、はい終わりじゃない。
戦争の残した大きな爪痕。
戦争を経験した世代、その2世、3世へと続いていく、戦争によってもたらされる様々な影響。
文章から血生臭さや決戦前の沖縄の土地の臭い、性暴力の現場、登場人物の生活の臭いまでもが伝わってくるような文章で、すごく生々しい。怖いぐらいリアル。
新しい形の戦争小説であり沖縄の歴史だと思った。
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噂通り凄い作品だった...。
歴史が地続きの『今』の連続であることをこれ程強く感じられたことはない。めくるめく時の流れと人々の生き様に胸が苦しくなったり、希望を感じたりしながら読みました。
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読み始めは、「これはすごい小説や!」と思ったが、読み進めていくうちに、ぶっ飛びすぎていて、ついて行けなくなった。再読しないとよく分からない。
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タイトルの「月ぬ走いや、馬ぬ走い」の意味は、
月日は駿馬のようにあっという間にかけていくよ、という意味の沖縄の黄金言葉(ことわざのようなもの)
沖縄出身の現役大学生が、何人もの登場人物を通して沖縄の歴史を描いている本。ベンヤミンとかパウルクレーとか、私は読んだことあったかな?って感じもあり、わからない部分もたくさん。
言葉遊びのような雰囲気と、登場人物の1人語りの形式など、作者の熱が伝染してきて、ロックだな〜っていう印象が残りました。
きっかけ
図書館で手に取った「群像」に群像新人文学賞受賞のインタビューが載ってて、謎のタイトルにひかれて購入した本。
気づき
150ページの薄い本ではあるけれど、改行らしきものは、語り手が変わる時(10ページ毎くらい)に申し訳程度にあるくらいで。漢字も多ければ、沖縄特有の言葉も出てくるし、本を開いた時にうわって思ったけれど、読み進めると癖になる文体というか。
明日の糧
米軍基地のある沖縄とか女性の貧困が社会問題で、とかっていうのを、沖縄の人の言葉で語るから真実味が強い。現役の大学生が、問題意識を持って、たくさん取材もして、作品に仕上げたんだろうなって考えると、なんだかいい本に出会えてよかったなって印象。
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週末の時間に楽しみにしていた本作を購入し読み始めるが、正直苦痛な時間でしかなかった。
過去から続く魂の連鎖を感じはしたが、文体が硬すぎて、自分には全く理解ができず、下手すると小説って、やっぱ面白くないものと誤解しかねない。
合う合わないの問題はあると思うが、感情が揺さぶられないものとして、自分には必要ない作品なのか?と思えた。ただ、読解力のない自分が読み解けなかっただけなのかもしれないので、他の方の感想を参考にしたい。でもはっきり言いたい。純文学は面白い!この作品は面白いと思えない。
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少し変わった構成というか、場面の切り替わりが独特だったが、それは物語への没入感を害さないどころか、さらにこちらを物語に引き込む。
現代の歪みを、沖縄を舞台に、縦断横断的でありながら、一人ひとりの物語として重厚にこのページ数で描き切ったという印象を持った。
芥川賞受賞作だと言われて手渡されていたとしても、なんの違和感もなかったと思う。
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沖縄の現在と敗戦時など過去が言葉のバトンリレーのような形で切れ目なく続いていく.登場人物もゆるく繋がって,過去も現在も重苦しい閉塞感があり,そこかしこに亡霊たちが顔を覗かせる.沖縄の言葉,独特の文体,読みにくかったが読み応えのある1冊.
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ナラティブの力を感じる、久々に純文学然としたお話を読んだという満足感。そこに戻ってきたことに驚いて、まあそのお陰で理解しやすくもなり読後感意外に爽やかだけどその分スケールダウンした感も否めない。
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読みにくい。けど、文字を拾い始めると止まらない。
色々思うことがあるのだけど、とにかく著者の中に何人いるんだろうと思うくらい、各登場人物が確立されている。
特に、ケンドリックの妻と、愛依子とヤリたい男の子との差がすごく、これ同じ人が書いてるんだよな…?となった。
途中まで単話の様に捉えて読んでいたけど、登場人物たちがみんな何かしらの形で繋がっていることに気づく。沖縄のみならず、私たちが今生きているのは、先人たちの命のおかげで、今が地続きであると思い知らされる。
沖縄の文化的で先祖や周りを大切にするあたたかさ、逆に言うと、閉塞感もあり誰かが誰かの知り合いである世間の狭さ、みたいなのも感じた。
1番最後、苦しくなったな。みんな幸せになるために生きているはずなんだ。
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沖縄戦について関心を持って知ろうとしてこなかったなと痛感した。戦中のことはもちろん戦後のことも。終戦から何十年というひとまとまりの単位でしか認識しておらず、その何十年には一日一日その日ごとの出来事が積み重ねられている。その一日一日には戦争の影響がずっと日々の暮らしに及んでいるのだと感じた。
時代も性別もバラバラの複数人で語られる本作は、生々しい感情と状況を連想させる。でも全ては繋がっている。日本兵が米兵と遭遇して殺し合う場面や洞穴に隠れる同国者である母子を殺害する場面、現代の中学生の学校での行動や恋愛、戦後に女性が生きていく上で直面したアメリカからの日常的な性暴力や生き抜く手段、男に失望しながらも依存してしまう貧困家庭での母子の束縛と反発、などこれだけではなく色々と場面転換しながら沖縄を舞台に描かれるどれもが生々しい。矛盾しているようだが、「死」に「生命」を感じるような感覚で読んでいた。
実は一通り読み通すだけで結構時間もかかり話にのめり込めないところもあったのだが、日が経つほどにもう1回読んでみたい気になっている(読み終えてから1週間くらいになる)ので、しはらくして再読してみようと思う。
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古川日出男の小説を思わせるドライブ感で沖縄の近現代を生きた名も無き人々の声を召喚してみせた作品。一つのエピソードの脇役が別のエピソードの主役になっていく展開など構成上の工夫も見事だが、本作が切り出してきた「現場」のアクチュアリティには感心させられた。沖縄戦の時代から始まり、朝鮮戦争、ベトナム戦争、「本土復帰」、1990年代の沖縄がそれぞれ経験してきた出来事を背景に、懸命に、しかし決して仕合わせには生きられなかった人々の声が畳みかけるように、折り重なるように積み上げられていく(逆に言えば、それだけ沖縄の近現代史は惨酷な記憶が累々と積み重なっている、ということだ)。リサーチ力も筆力も卓越していて、次回作が楽しみ。