本作でも「反則ギリギリ」はあったのか?
2025/01/27 10:17
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある書評では「反則ぎりぎりのラインを狙ったような大仕掛けが炸裂する」『魔王の島』の著者ジェローム・ルブリの二冊目である。前作は著者も知らず中身ではなく、「死の島」をの「カバー買い」であったが、読み終わって「何なんだ?これは」という衝撃。だから、今回は内容を期待しての購入である。
一七世紀に女性たちが魔女と見なされ殺されたという歴史があるモンモール村(これは仏語の「死の山」を約めたもの)。村は世界的製薬企業経営者ティオンヴィル氏によって所有・運営され、平穏を保っていた。新たに赴任した(部下は三人の)警察署長ジュリアンに、ティオンヴィル氏から自分の愛娘を殺した犯人を捜してほしいという極秘の依頼を受ける。一方で彼は過去の事件、赴任直後に起こった奇怪な出来事に遭遇し、この村は何かおかしいと疑いはじめる。過去にこの村であった刑務所焼死事故で生き延びた一人の犯行なのか? つい最近の羊飼いとその相棒の自殺、一部の住民を苛む幻聴、幻視、奇行の原因は、殺された魔女の呪いかなのか? そして同じ日に自殺・殺人・事故死と6件の死亡事件が同時発生する。全ては一本の糸でつながっているのか?
途中で新聞記者と情報提供者の二人の女性が、「モンモール村事件」報告書という形で読む場面が介入してくる。前作での最後に物語は精神医学の講義の教材という仕掛けと同じ趣向だ。ということは、事件は解決しているということか。ティオンヴィル氏は製薬企業経営者で新薬開発をしているし、また、魔女は柳の木から抽出した鎮静効果があるアスピリンのような薬を使っていた、これらを考えあわせると、ティオンヴィル氏は所有している村の住人を非合法の向精神薬臨床治験対象としており、その影響で連続死亡事件が起こったのだ、したがって犯人はティオンヴィル氏、では愛娘を殺した犯人は?これが結びついてこない。
今回の「反則ぎりぎりのラインを狙ったような大仕掛け」は、いろいろな見方はあるだろうが、「脳生理学」だろう。脳は、ニューロンを通して電気信号を伝え、思考・行動をするが、脳が誤作動をすると、この電気信号がうまく伝わらず、奇癖・奇行に悩まされる。殺されたとされる愛娘はこの治療方法のない難病を患っていたというのだ。そしてティオンヴィル氏は、脳内の電気信号をコントロールする治療法を研究し、焼死したとされたが実は生存していた刑務所囚人を使って「人体実験」を行い、ついに治療法を確立し、愛娘の病気を治したのだ。したがって愛娘は生きている。もっともらしく科学的な記述もされている。理論的には可能だろうが、現実には確立していない治療方法を事件解決の鍵とするのは、「反則」ではないか。治験治療とはいえ、複数人の意識を同期できるのだろうか。結末を読むと、映画『マトリックス』で生身の人間がサイバー空間に入っている時に、生命維持装置を外すと、サイバー空間と現実世界の両方で死んでしまうシーンを思い出した。
ではティオンヴィル氏は一連の事件をまとめて報告書を作成し、新聞記者にスクープさせようとしたのか。そこでスクープされるニュースは、非合法の人体事件?難病の治療方法?この人のミステリは、前作もそうだが、犯人は誰か、また、善悪をはっきりさせる、ということを狙っているのではない。「大仕掛け」を楽しむミステリということだろう。
ただ、「雪が降ったなら、みんな、これから死ぬ。」とか「雪のかけら」という謎めいた言葉もでるが、物語の背景との関係はわからなかった。
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【村で次々起こる凶事は魔女の呪いなのか?】羊を殺して頓死した男の事件を皮切りに頻発する凶事。二年前モンモール村で起きた惨劇の真相は? 反則ギリギリ仏産ミステリの衝撃。
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・あらすじ
フランスの架空の街モンモールが舞台。
ジュリアンは新人の警察署長としてモンモール山という岩山が聳え立つ小さな集落モンモールに赴任してきた。
近代的に整備された町並みはある一人の富豪ティオンビルが村を買取り私財を投資しているからだという。
この村には1600年代に魔女狩りと称して村の女性たちを幾人も岩山から突き落とし、その女性たちが魔女となり村に呪いをかけたという言い伝えがあった。
そしてジュリアンの赴任初日から村で何人もの人間が恐ろしい方法で死んでいく。
・感想
魔王の島の作者だし、合間に挟まれる「事実」パートが脳の電気信号やら薬の作用がなんちゃらと書いてあったので人体実験の話なのかな?と予想しながら読んでた。
大体予想通りだったけど、次々と起こる事件は結構陰惨、ホラーは読みなれてない&あまり得意ではないのでホラー描写には結構ドキドキした。
続きが気になって読む手が止まらないのも前作?と同様でおもしろかった。
けど思わせぶりな台詞や描写も明かされてみれば「そんなもんか」程度だったなという印象。
どっちかといったら魔王の島の方が好みだったかも。
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フランスの作家、ジェローム・ルブリの邦訳第二作。邦題の雰囲気が前作「魔王の島」と似ているが、全く関係ないので今作から読んでも問題なし。
小高い山と二つの丘、その下に広がる森に囲まれたモンモール村。古くからの魔女狩りの言い伝えがありつつも牧歌的な村が、羊飼いが羊を殺し自殺する事件をきっかけに一変する…
前作はサイコサスペンス+フランスらしいミステリだったが、今作は外連味が一味も二味も違い、ホラーサスペンスの域。個人的には、版元は異なるが、マネル・ロウレイロの「生贄の門」のしっかりとした捜査パートを、ホラー寄りに振り切った感じ(もちろん、ラストは全く異なるが)。
ミステリとしては前作の方が衝撃度は上だが、怖さは今作が圧倒的。じわじわと追い詰められていくこの雰囲気は他の作家では味わえない。次作以降も翻訳を続けてほしい。
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前作に続いて今回も驚きと予想外の展開が二重三重と続きます。魔王の島読んでたから身構えてた分、衝撃は前作ほどではなかったですが。
現代版、フランス版の『ドグラマグラ』みたいな作品ですね。著者は『ドグラマグラ』の存在知ってるんだろうか?
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魔王の島と同じ作者で、身構えて読んだが、全く違ってた。ミステリと言うよりはホラーサスペンスのようでモノクロの映画を観てるかの様だった。この前読んだミゼレーレと言い、フランスのおどろおどろしいのを続けて読むとは思わなかった。
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魔王のあとは魔女だ!
ミステリーよりサスペンスかホラーかな〜
前作よりシンプルですし、そっちかあ→↓と真相明かしはちょっぴり退屈!
前作の凝った構成を思うとねえ。
安い映画のノベライズみたい。
魔女の仕業にするなら伝承とか神隠し的な小話を入れてくれないとこれじゃ怖くもなんともない。
あんまりぱっとしないのはなんでだろ、翻訳はほんと読みやすい。けどなんだかなあって感じです。
こんな設定なかったっけ?と読み終わって思う。
前作のオチと似てるし。
ニトロプラスの物語っぽいなぁ〜
既視感はそこから来てるのか
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かつて魔女裁判が行われていた村で起こった事件… 人間の醜さと情念を禍々しく描くミステリ #魔女の檻
■あらすじ
かつて魔女裁判が行われていたとされる村に、新任の警察署長ジュリアンが赴任されてきた。到着してまもなく青年が死亡する事件が発生、さらにその後も住人達が不幸な出来事に見舞われていく。
警察の部下たちと一緒に事件解決に奔走するも、幽霊、幻聴、謎の言葉が聞こえるなど、不可思議な現象に吞み込まれてしまう。この村では一体何が起こっているのか…
■きっと読みたくなるレビュー
序盤から不穏な空気に包まれるこの感じ、なんか怖いんですけど…
舞台はかつて魔女と間違われた女性たちが多数殺害された村。事業家が村を買い取り、現在の村長となっている。村民は羊飼い、宿屋、料理人、スクールバスの運転手、ブロガーなど、何処にでもいそうな彼らなんですが、どうも一癖二癖ありそうな雰囲気。読み進めていくほどに、いったい何が起きているのか混乱を極めていく。
本作は主に警察署長ジュリアンの視点で進行。彼はいわゆる一般的な感情を抱き、当たり前の行動をするのです。そのため読者は同じ目線で読み進めることになるのですが、彼のおかげで今起こっている怪奇っぷりがより強く伝わるんですよね。
次々起こる事件もあらゆる部分が禍々しい。呪われているというか、不幸がつきまとっているというか、どうもはっきりしない。不快感に包まれる物語ってのはいいんだけど、結局どういう話なの? うーむ…
これまでさんざん読まされた猟奇的なストーリー、変な章タイトル、意味が分からない事実に関する記述などなど。終盤まで読み進めると…
はぁあああああぁ?何言ってんのか理解できず、さらに読み進めると徐々に脳みそが追い付いてくるんです。
ある意味ひとことで説明できちゃうような題材かもしれないんだけども、人が抱く愛情、醜さ、傲慢さ、悲哀を丁寧に描いているから、作品全体の重力が半端ないんだよね。読み終わってみると、何だかイイ話だったような気もしてしまうという…
正直、どなたにもおすすめできるとは言い難い。森の中を迷い込む感覚、訳わかんなない、助けてって感覚を味わいたい方は、めっちゃ楽しめると思いますよ!
■ぜっさん推しポイント
「正義」の反対語は何か知ってます?
「正義」の反対語は、逆の立場から見た「正義」だそうです。「悪」じゃないんですって。たしかに社会秩序を守るために法律がありますが、一定の善と悪を定義しているだけなんすよね。
時は常に流れ、時代や世相によって価値観や技術も進化していく。正義の物差しってのは質量も重力も方向もすべてが曖昧だよなぁ。こんな風に得体の知れない虚無感に浸れること請け合いです。独特のフランスミステリー、楽しんでください。
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やってくれたな、今回も!
オープニングから最高に好み、訳の分からないことが起きてるゾクゾク感に包まれ、モンモール村の雰囲気も素晴らしい!
ただ、製薬会社って設定でなんとなーく予想してたことが当たっちゃったよ。ベアゲルター感満載です←ストーリー違いますよ、念のため。
腹がたたない程度にはあ?と思わせてくれるのはルブリならではでしょう。この感覚は彼の作品でしか味わえません。次作にも期待大です。巻頭に村や登場人物イメージした曲が紹介されてて、ググって聴いちゃいました。モンモール村、ジュリアンのテーマが良かったです。道尾秀介氏作品のようで、こういうの大好きです。
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タイトル!絶妙!
真相の好みは分かれると思いますが、悔しいほどに説明がついてしまう。どうして、なんで?!と引き込んでおいてからの、真相。えーって、でも、全てのことの説明がつく。
魔王の島も良かったけど、こちらもとても楽しめました。
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雪山・魔女狩り伝説・殺人→フランスらしいダークなミステリー小説
期待を裏切りません
村の人間の大量殺人がどのように起きたのか、どのような背景があったのかを現在と過去を行ったり来たりして読ませるスタイル
こうだろうと謎解きをしたが、うまく予想をずらしてくれる
いい作品です
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ミステリーはあまり読まないので、ミステリーとしてのレベルはわからないが、結末はかなり予想外。
現在の科学では実現できないオチというのは、SF好きの立場では違和感がない。純粋ミステリーとしては邪道かもしれないが
楽しめる。
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魔女裁判で女たちが殺された山。その麓には実業家が私財を投じて管理する村があった。そこで起こる怪事件を捜査するのは、新しく赴任してきた警察署長とその部下。しかし事件は次々と起こり…。村に隠された秘密とは…。ホラーサスペンスというだけあって、ミステリーというよりホラー寄りな作品で終始どんよりとしたムードで話が進んでいきます。まぁ、結末はなんとなく予想してた通りだったのですが。もう1作の『魔王の島』もいつか読んでみようと思います。