嫌悪感と愛のトラウマ作品
2025/01/31 16:30
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投稿者:アカイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒーローを応援する普通の人間たちを、その視線を一身に引き受けるヒーロー目線で描く異色作。応援と愛の不気味さと、守られる側でいる不遜な傲慢と、それでもなおヒーローに見捨てるという選択肢を与えない生物としての弱さが、目を覆いたくなるほどの丁寧さで描かれています。登場する人間たちへの嫌悪感と、ブーメランように突きつけられる問いに、本を閉じたくなりましたが、読むのをやめれず夢中のうちに一気読みしてしまいました。みんなを嫌いになっても人々を守るのは果たして愛なのか。ずっと記憶に残るトラウマ作品です。
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
謎のパワーを手に入れた平々凡々な大学生・至が、「みんなを守るマン」として地球外生命体と日々闘う。なぜ、特別な力があると問答無用で闘わないといけないのか?卑しい人間が作り上げてきたヒーローの概念を根底から覆す、正しさだけではない正義が炸裂する異色の物語。
普通に考えればわかる事だよね?と自分の胸に手を当てたくなるような、極々当たり前の事実に今日まで思い至らなかった事に絶望した。
守りたい人がもし不死身だったら、ヒーローはその他の地球人を敢えて守る必要はないと思うのかもしれない。勝手に押し付けて、見返りはなしで、寧ろ助けてもらった後も「ヒーロー然とした」言葉や振る舞いを求める。誰がそんなヤツ等を守りたいと思うのか。ヒーローの悲痛な心の叫びに、浅はかな自分自身を顧みるキッカケとなる作品。
色んなものを天秤にかけ、自分を追い詰める。未だ嘗て見た事のないヒーロー像と、覚束ない心裡の表現がとても美しかった。
「愛の大嘘吐き」
愛に限らず大嘘吐きだらけの世界への、献鹿狸太朗からの果し状。
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こんなにも正義の味方、みんなのヒーローという存在が可哀想と思う日が来るなんて思わなかった。
でも言われてみれば確かに、「ヒーロー」なんて世間が押し付けている幻想で、一般人が二足のわらじでやる仕事ではないよな…と思う。
なんの相談もなく、無償で、命懸けで、大勢の人の命を守る使命を与えられるなんて、私なら耐えられない。
この本を読んでしまったら、ヒーローものを普通の目で見られなくなってしまうなぁ。
衝撃的な一作でした…。
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好きになるにも 嫌いになる覚悟が必要なのだ
それはとても難しいことで 私にはまだないし
出来れば 嫌いになりたくないから
好きにもなれない 愛なんてもってのほか
買われる前から カバーの下のスーパアイで
私のことも見えていたのだろう
生まれてこなければよかったなんて
そんなこと もう ずっと前から分かりきっている
生まれた後に分かったって後の祭りなのだ
全てを嫌いになる覚悟を持つことでしか
愛はできないのだ
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ヒーローになった者にしか分からない苦悩。
漫画や映画で出てくるヒーローが人類を救ってくれることに対して何も疑問を抱かない一般人への警告…とまではいかないけれど、もうちょっとヒーローの気持ちを考えたらどうなのかと言われているような感じがした。でもヒーローの気持ちなんて一般人には一生分からない。分からないことを知っているからこそ、ヒーロー(この物語では上原至という大学生)は、せめてそっとしておいてくれと願うのだ。そんな至の気持ちは悉く無視され、一般人は傍若無人にヒーローへ助けを求める。
何と苦い話なんだろう。読者で傍観者な私は、至の正体をしつこく追及する人々に苛立ちを覚え、満身創痍になりながら人々を救う至に感謝した。
しかし、私がこの物語の中で生活する一般人だったら、やはり至の正体は気になると思う。多分、彼が本当は悪の組織(政府)と手を組んで人々の印象操作をしているとまでは思わないかもしれないが、あまりにも強い力を持った至がいつ手のひら返して人々を攻撃してこないか心配にはなると思う。よって、一方的に至の正体を知りたがる人々を蔑むことはできない。
至が「みんなを嫌いマン」になってもしょうがない。嫌いな奴らを救うなんて、やっぱりヒーローは因果な職業だ。
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1行目からお下品をぶっかましてくるのがいいです。
この文章を延々と読めるだけで嬉しい!!
スーパー能力で敵と戦うも一般人たちの送る感謝では全く釣り合いがとれなくなってきて、苦悩していく様が可哀想すぎる。
しまいには死者が出て、責任だけを求められ続ける。
一般人たちをこき下ろすワードが山のように出てニヤニヤ出来ること間違いなし。
戦闘シーンは意外にグロくて、耐性ないと気持ちが悪いかもしれない。
地ごくと赤泥棒は超えてないけど面白い!
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スーパーヒーロー、力を手にしてしまったものが抱える苦悩と葛藤の日々。そして、圧倒的孤独。前作地ごくが良かったので新作も即購入。相変わらずの陰鬱な世界観と膿とも掃き溜めとも言える言葉は健在であった。が、今作のテーマとして能力者の苦悩に対し、さほど興味をそそられず。ウルトラスーパーデラックスマンを思い出すが、実際はリアルパーマン?
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"魔法少女とチョコレート"というボカロ曲を思い出しました。あとワンパンマン。
突拍子もない設定については何ら説明のない、所謂セカイ系派生ぽいんだけど、素晴らしい語彙力とサブカルミックス、抜群の解像度、痛々しいまでの人間(現代日本人)への諦観、研ぎ澄まされた感受性で書かれた文章が作品を"単なるセカイ系"で片付けさせない。
著者の登場で文学は新しい時代に入ったと感じる。次世代を牽引する才能だと思う。
「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集」みたいな感じで、文学そのものというよりは既存文学の二次創作というか、二次元を更に二次元化したみたいな作品は最近割とあるけれど(Twitter文学みたいな)、人類にとって普遍的なテーマ(愛)を扱いながら、それを直接的な言葉で、でも婉曲に語る手法がすごく時代にあってる気がする。
それにしても至が可哀想すぎてずっと眉間に皺をよせて読みました。
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文章が凝っていて、慣れていないと読みにくさは感じるかもしれないけど、ストーリーには非常に引き込まれた。主人公のようなスーパーヒーローは現実世界に実際にいないのに、同じようなことが現実で起これば同じようなバカで浅い集団はきっと湧くんだろうな、と簡単に想像できてしまうのは何故だろう。スーパーヒーローの苦悩の描写だけで終わると思ってたら、最後にまさか。意味わからなくて怖い。
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地球のみんなを守るマンは誰からも守ってもらえない。だから懐疑的で投げやりな感情マンになり、心と体が乖離する。気にしいだし、嫌われることを恐れてる。だから防衛本能が刺激されてみんなを嫌いマンに至る。
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天才・献鹿狸太朗が描く、『大日本人』の先の先の先の先の先の先の先。これが読みたかったし、案の定読みたくもない奈落のような描写も読まされたし、たまらない。「救えない」を救うってこれほどまでにしんどいのか。でも頼って頼られて続けていくしかないので。
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ヒーローの持つ不条理や哀しみを享受し消費するだけの人々に対比させて、英雄譚ではなくヒーローの存在意義を描いている。最後の弟の存在も意味深だった。
漫画は読んだことがないけど、この変わった名前の作者の小説は非常に面白かったので漫画も読んでみたくなった。
表紙もさすがインパクトのある絵だ。
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孤独とか充実感とか承認欲求とか泣きたくなることとか虚しさとか、○○すれば楽になれるのに…とか、何者かに成りたいという願い。
なかなか言葉にし難い感情、内面の心の動きを表現した作品。
本を読み慣れている人向きかも。
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メディアと、一般大衆と、その標的と。
お立ち台に登らされた人間が、この現実でいかに苦しみ足掻くか、その様子をつぶさに描いている。
庇護対象の一般民衆に手を焼き、辟易としているヒーローからの視点は新しくて、導入から一気に物語に引き込まれた。
読み進めていくうちにただ面白がって覗いていた彼の苦しみがこちらへ肉迫してきて、近頃の報道の有り様とも重なり、苦い気持ちが込み上げてくる。
それは彼が大衆へ抱く嫌悪感への共感と、同時にその大衆の一部である己の罪悪感からくるものだ。
そんなふうにシリアスに読んでも面白いし、単にシュールなコメディとして読んでも面白い。
戦闘での負傷の描写は鮮烈で、好みは分かれるかもしれない。
後半からラストにかけては主人公が哀れで、全くいい気持ちはしないのに、不思議と読後の満足度は高い。何日経っても、あの表紙が頭から離れない。
いっそ自分が悪いと思えばまだ救われる。
そんな哀しい言葉あるだろうか。
腐れた世界の中で、せめて自分に助けを求める声だけでも、ちゃんと聞くことができるモブでありたい。
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鬱ワンパンマンです。
麻布競馬場さんがTwitterで紹介しているのがきっかけで読みました。
彼の作品と同じく、人間のイヤ〜なところをこれでもかとドカ盛りしてあります。
自分にもそのイヤ〜なところがしっかり宿っているどころか、それしかない人間だわ…という辛い気づきがたくさんありました、、、、
以下、刺さりすぎて1番しんどかった1文です。
「できもしないことを誇らしく夢想しながら(Twitterの)タイムラインを追って身にならない九十分を消費していた。じつは、この九十分が山路舞由の人生の全てを表していることを、舞由自身はいつまでも気づかないのだ。」