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切手・消印・葉書・封筒から明らかになる満州事変から敗戦にいたる昭和の歴史
2005/01/06 21:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
満州事変から敗戦にいたる15年間の歴史は、既に多くの本で語り尽くされている。よほど新しい視点からでないと、この間の歴史について、一般向けの新書を刊行する意味がないように思われるが、ここに斬新な視点で書かれた新書が登場した。本書は、タイトルからも分かるように、切手・消印・葉書・封筒などの郵便物から激動の時代が語られている。今まで、このような視点から近現代史が描かれた例はあまり無く、それだけに興味深い内容となっている。
著者は、これらの郵便物の写真を多数掲載することで、あまり知られていない事実を次々と明らかにしている。
例を挙げると、1932年に関東軍によって満州国が建国され、満州国の切手が発行されると、満州国そのものの存在を認めない中国は、その切手の有効性を認めず、切手を黒く塗り潰したうえに、配達先からその切手料金を不足分として徴収したという。
日本国内の例では、太平洋戦争から敗戦にいたるまでの30銭の通常切手の変遷が紹介されている。当初は、オフセット印刷で精巧に刷られていたが、戦局の悪化にともなって、品質が目に見えて落ちているのが掲載写真から覗える。最後には、目打ち(ミシン目)さえ無くなっており、物資が欠乏し当時の人々が耐乏生活を強いられていたことが切手一つからでも分かる。
著者は、切手ばかりではなく、切手の消印からも戦争の推移を辿っている。
例えば、戦争末期、アメリカ軍の空襲は、日本の占領地にも行なわれており、
日本占領下の上海の郵便局では、防空の文字が入った爆弾型の消印が使われていたことが紹介されている。空襲というと、日本本土のみと思いがちだが、日本占領下にあったアジア各地も大きな被害を受けたことが指摘されている。切手の消印一つからでも当時の激しい戦局が浮かび上って来る。
本書は、この他にも、1938年にソ満国境の張鼓峰で日本と戦禍を交え勝利したソ連が発行した戦勝記念絵葉書、ソ連がシベリアに抑留した日本人捕虜に支給した家族宛ての専用往復葉書なども紹介されている。掲載された絵葉書の写真からは歴史の生々しさが伝わって来る。
本書は、新書にしては、異例とも思える126枚の写真を載せていて、明快な文章と相俟って非常に説得力がある。貴重な資料をこれほど多く集めたものと感心する。ユニークな昭和史の本として、広く推薦したい。
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