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【モンゴメリ生誕150周年! 魅力を知り尽くした訳者による大人のための「赤毛のアン論」】アンの少女時代から銃後の母となる50代まで。世界中で愛される大河小説『赤毛のアン』全8巻の魅力を存分に伝える待望の一冊。
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ただの少女文学にはあらず、人生で何度読んでもそのときそのときの味わいがある赤毛のアンのシリーズ。カナダの歴史や政治、キリスト教やケルトやスコットランド民族などの詳細な注釈付で文春文庫からアン・ブックス全訳を刊行した松本侑子がシリーズの魅力をあらためて8つの観点から解説。
この本の刊行に合わせるかのように、来年Eテレで「赤毛のアン」の新しいアニメ放送が始まるという発表があった。高畑勲の世界名作劇場をEテレで再放送したのももう十年ぐらい前かしら? あれは自分も小学生のときに夢中で見たし再放送は次女がとても気に入っていたけど⋯
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この本を読むには、原作の小説を読んでいることがマストかなと思います。
また、カナダの歴史に関心があるとか。
アニメを観てとても好きな作品だったので読みましたが、アニメに関する部分はとても興味深く読めたんだけど、それ以外はあまり興味が持てなかったです。
ただ、これを機に原作小説を読んでみようかなと思いました。
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『赤毛のアン』について、その訳本を書いた人が分析した一冊。
これまで『赤毛のアン』がアンの幼少期を描いたアニメの影響が強いことは知っていたが、決して児童書ではなく大人向けの本であり、深い内容であることがよくわかった。
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一の扉:エピグラフと献辞
各巻の冒頭に置かれたエピグラフ(引用句)が、その巻のテーマや内容を暗示していることを指摘。
第一巻『赤毛のアン』のエピグラフ「人生のささやかにして甘美なものはすべて、その道に撒かれている」を紹介。
第四巻『風柳荘のアン』の献辞「あらゆることろにいるアンの友だちへ」が、世界中に読者がいることを示唆していると解説。
二の扉:英文学
『アン』シリーズには多くの英文学の引用が見られることを指摘し、作品の文学的深みを解説。
第一巻の章題からの引用例として、「虚栄と悩み (Vanity and Vexation Spirit)」が旧約聖書「コヘレトの言葉」から、「不運な百合の乙女」がテニスンの詩「ランスロットとエレーン」から、「死という命の刈りとり人」がロングフェローの詩『刈りとり人と花々』から取られていることを具体的に解説。
モンゴメリの文体の特徴として、一文あたりの単語数が多く、修飾語が豊かであることを指摘し、翻訳の際の注意点を述べる。
アンの心理描写における月光や白い枕のイメージが、象徴的な意味合いを持っていると分析。
「暗い夜の窓辺、月光のまばゆいばかりの輝きの中で (in a great sheen of moonshine) 、ひざまずいて祈りを捧げるアンの姿は、なんと神々しく、読み手の心にうかんでくるでしょう。月光の赫々たる輝きは、これから進学するアンの夢のまばゆさも表しています。」
「その祈りを終えて、アンが白い枕の上で (on her white pillow) 見る夢。これも、ただ枕が白い、というだけでなく、十五歳の乙女の夢の清らかさ、純白さも伝えているのです。」
章題だけでなく、作中の会話にも英文学の引用が見られる例として、ポーの詩「大鴉」からの引用「『これだけで、それ以上は何もない』」を取り上げ、ギルバートへのアンの複雑な感情を読み解く。
「『これだけで、それ以上は何もなかった』は、アメリカの詩人、作家のエドガー・アラン・ポー(一八〇九~四九)の詩『大鴉』(一八四五)の引用です。」
モンゴメリの美しい文体とその効果について解説。
三の扉:プリンス・エドワード島とカナダ
『アン』シリーズの舞台であるプリンス・エドワード島の地理的特徴や、アヴォンリー村のイメージが、シェイクスピアの故郷ストラトフォード・アポン・エイヴォンとの関連性を持つ可能性を示唆。
「そこでアヴォンリーとは、シェイクスピアに代表される英文学、ケルト、緑の田園牧歌世界であり、『アン』はそこに川のように豊かに流れる物語という意味だと考えています。」
作中に登場する地名「フォー・ウィンズ」が、モンゴメリの創作ではなく、実際に存在した湾の名前であったことを、古地図の発見に基づいて解説。
「ところが二〇一三年に、島で十九世紀の古地図を調べると、現在のニュー・ロンドン湾のところに、フォー・ウィンズ湾と書いてあったのです。」
「炉辺荘(イングレスサイド)」という家名が、英語ではなくスコットランド語で「炉辺」を意味することを紹介し、その言葉に込められた温かい家庭のイメージを解説。
「原題『イングレスサイドのアン』は『炉辺荘という屋号の家のアン』という意味です。イングレスサイドという言葉には、電灯のない時代に、ほの暗い夜の部屋を照らす炉火の明かり、音をたてて燃えてゆれる炎の暖かさ、そのまわりに集う家族の団欒の楽しさと安らぎの意もふくまれています。」
『アン』シリーズを通して、アヴォンリーという場所が重要な意味を持つ円環構造になっていると指摘。
四の扉:ケルトと「アーサー王伝説」
『アン』シリーズの登場人物には、スコットランド系やアイルランド系のケルト民族が多く見られることを指摘。
カスバート家のルーツがスコットランドであり、信仰が長老派教会であることを解説。
「グリーン・ゲイブルズのカスバート家は、マシューの母がスコットランドから白いスコッチローズを持ってカナダに渡って来たと書かれています(第三七章)。一家の信仰は、スコットランドの宗教改革によって誕生したプロテスタントの長老派教会です(第二五章)。そこからカスバート家はスコットランド系です。」
アン自身もノヴァ・スコシア(「新しいスコットランド」を意味する)生まれであり、スコットランドの伝統的な装いを身につけていることに言及。
ババリー夫人がアイルランドのアルスター・コートという外套を着ていることや、バリー家の信仰も長老派教会であることなど、登場人物の民族的背景が細かく描写されていることを解説。
作中にアイルランドの諺が登場することを紹介し、当時のアイルランドの歴史的背景(ジャガイモ飢饉など)との関連性を示唆。
「『風柳荘』では[クリスマスに雪があれば墓場は肥えない]ためにホワイト・クリスマスになって喜びます(二年目第六章)。この諺の意味は『冬に雪が積もれば、翌年は豊作になり餓死者が出ない』というものです。アイルランドは十九世紀半ばに主食ジャガイモの疫病などから約百万人もの人々が死亡した大飢饉を経験しています。」
『アンの愛の絆』におけるスコットランドの歴史や誇りの気配、寮生活での多文化的な交流を描写。
スコットランドの食文化(オートミール、ブレッドソース、ダルス)や音楽(ホーソパイプ、バグパイプ)が作中に登場することを解説。
『アン』シリーズには、「アーサー王伝説」が頻繁に登場し、アンや登場人物たちがそれを愛読していることを指摘。
「アン・シリーズは、主にスコットランド系とアイルランド系のケルト民族の物語であり、中世ケルト民族の『アーサー王伝説』がたびたび登場しています。」
ケルト民族の象徴であるケルト十字と、長老派教会との関連性について、著者がカナダで実際に見た経験に基づいて解説。
「ケルト十字に興味をもったきっかけは、一九九〇年代に、アン・シリーズの翻訳調査のためにカナダへ行き、モンゴメリが通ったプリンスの長老教会や、モンゴメリが牧師夫人をつとめたオンタリオ州の長老派教会を訪れると、祭壇に、金色のケルト十字が飾られていたことです。」
「アーサー王伝説」の基礎知識として、ケルトの定義、ブリテン島へのゲルマン人の侵入、アーサー王の起源などを解説。
ジェフリー・オブ・モンマス、クレティアン・ド・トロワ、マロリー、スペンサー、テニスンといった、「アーサー王伝説」を文学作品として後世に伝えた代表的な作家たちを���介。
アンが引用するテニスンの詩句を通して、「アーサー王伝説」がアンの想像力を刺激し、現実と空想の世界を結びつけている様子を分析。
「とても幸せな気持ちです、ギルバート。打ち負かされ、面目を失って、グリーン・ゲイブルズへ帰省せずにすむのです。人生は素晴らしい!『ギャラハッドは夢を見ている町を通りけり』を。」
五の扉:キリスト教
『アン』シリーズが、牧師夫人であったモンゴメリによるキリスト教文学の一面を持つことを指摘。
「アン・シリーズは、牧師夫人によって書かれたキリスト教文学という一面もあります。」
マリラやアンといった主要人物が、イエスの愛を信じ、聖書の教えを生活の規範としていることを解説。
モンゴメリが育った環境(長老派教会の信仰が篤いキャベンディッシュ村、祖父母も長老派教会の信者)が、作品におけるキリスト教的要素に大きな影響を与えていると分析。
作中に登場する祈りの場面や、日曜礼拝、聖書に関する言及などを具体的に紹介。
『アン』シリーズには、聖書の言葉や聖書に登場する人物の名前が引用されている例を紹介(ヨアキム、ペテロなど)。
長老派教会の教義の特徴(予定説、説教の長さ、神学の厳しさ)が作中に反映されていることを解説。
「長老派教会の特徴の一つは、牧師のお説教が長いこと。『アン』では、初めて礼拝にいったアンがお説教が長かったとマリラに話します(第一一章)。」
『アン』の主題の一つが隣人愛の実践であることを指摘し、マシューの慈悲深い行動などを例に挙げる。
「『アン』の主題は、隣人愛の実践です。」
アンが「生きている使徒書簡を書いている」と語る場面を通して、モンゴメリが日常生活におけるキリスト教の実践を描こうとしていたと解説。
「『すっかりやめたわけではないわ……今は、生きている使徒書簡を書いているの』アンは、ジェムとその仲間たちを思い浮かべて言った。」
『アンの夢の家』における、キリスト教の天地創造説とダーウィンの進化論に関する議論を紹介し、当時の社会における宗教と科学の対立を描いていると分析。
クリスマスに関する描写が、シリーズを通して変化していることを指摘し、モンゴメリ自身の信仰の変化や晩年の心境が反映されている可能性を示唆。
「ところが『アン』の執筆から四半世紀すぎたモンゴメリ最晩年の一九三〇年代に書かれた第四巻『風柳荘』と第六巻『炉辺荘』には、フランス系の人々の変な英語も、差別的な描写もありません。逆に『炉辺荘』では、アンの娘ナンが、友達と習ったフランス語を話しています(第三〇章)。」
六の扉:プリンス・エドワード島の歴史
『アン』シリーズには、プリンス・エドワード島とカナダの歴史が織り込まれていることを指摘し、その背景を解説。
「アン・シリーズには、プリンス・エドワード島とカナダの歴史も描かれています。」
カナダの先住民族(ミクマク族)の存在や、彼らによる島の名前「アベグウェイト」について解説。
「私が初めて島を訪れた一九九一年には、現地で先住民族の文化を見る機会はありませんでしたが、二十一世紀のカナダでは、先住民族の復権が社会に広く共有されています。グリーン・ゲ��ブルズでは、最新のモンゴメリ研究にもとづいて展示が刷新されたとき、アンの時代に島に暮らしたミクマク族の写真が追加されました。ミクマク族による島の名前『アベグウェイト Abe唸weit』という言葉があるモンゴメリ日記の写真も展示されています。」
島のフランス領からイギリス領への変遷、七年戦争、フランス系住民のアメリカへの移住、アメリカ独立戦争といった歴史的事件が、作品の背景となっていることを解説。
作中に登場するフランス系の人物たちの描写を通して、当時のイギリス系住民との関係性や文化の違いを描いていると分析。
「その頃アン・シリーズでは、フランス語にはない英語のthの発音ができない人々として台詞が書かれています。たとえば『これ this』を『dis』、『あれ that』を『dat』などです。またフランス系はカトリック教徒のせいか、プロテスタントの長老派教会信徒のモンゴメリは、どことなしに異端めいた人々として描写しています。」
アメリカ独立戦争後、イギリス王党派(ロイヤリスト)がプリンス・エドワード島を含むイギリス領カナダに移住してきた歴史を紹介。
1812年の米英戦争が、作品に間接的に影響を与えている可能性を示唆。
ヴィクトリア女王の即位と大英帝国の繁栄が、当時のカナダ社会に与えた影響について解説。
プリンス・エドワード島における電灯の導入(1885年)が、『アン』の描写と対比されることを指摘。
カナダ太平洋鉄道の建設が、カナダ連邦の成立と発展に貢献したことを解説し、『アン』シリーズにおける言及を紹介。
第一次世界大戦が、『アンの娘リラ』の中心的なテーマとなっていることを解説し、当時のカナダの状況やモンゴメリの戦争観に触れる。
「『リラ』では、カナダ国内でただちに志願兵の募集が始まり、ドイツ軍の侵略を阻止して平和を取り戻そうと、アンの長男ジェムなどの若者がみずから進んで入隊して、カーキの軍服を誇らしげに身につけます。一方、繊細な文学青年の次男ウォルターは、自分が敵のドイツ兵を殺すことも、自分が殺されることも想像できず、苦悩します。」
七の扉:カナダの政治
『アン』シリーズには、カナダの政治に関する描写が多く見られることを指摘し、その背景にはモンゴメリの祖父が国会議員であったことがあると推測。
「アン・シリーズにはカナダの政治についても描かれています。」
保守党と自由党という二大政党の対立、総選挙、政権交代、女性参政権といった政治的テーマが描かれていることを解説。
19世紀のカナダにおける保守党の政策(イギリスとの連携重視、王室への忠誠)と、自由党の政策(自治権拡大、アメリカとの関係重視)の違いを解説。
作中に登場するジョン・A・マクドナルド首相(保守党)の言及を通して、当時の政治状況を解説。
「これは一八九〇年に島を訪れたカナダ首相で保守党の党首、ジョン・A・マクドナルドです。」
保守党支持者と自由党支持者の民族的傾向について解説。
『アンの青春』における双子のデイヴィーによる騒動が、保守党と自由党の対立を象徴的に描いていると分析。
総選挙の熱狂や開票の様子が、活き活きと描写されていることを紹介。
「ニュースが入り、フラッグの店は屋根を持ちあげ���ばかりの大歓声と興奮にわきたちます。自由党が勝つまで髪を切らない、と宣言していたマーシャル・エリオットは長い髪を散髪し、胸まである髭もそり、別人のようになったため、アンは、彼に会って会話をしたものの最後まで誰だかわからず困惑します。」
女性参政権を求める運動が、当時の社会的な関心事であったことが、作中の会話から読み取れると指摘。
「もし、私たち女に選挙権があれば、すぐに改善されるだろう』と話します(第一八章)。」
第一次世界大戦中の1917年の総選挙で、限定的ながら女性に連邦議会選挙権が認められたこと、その後の完全な女性参政権獲得までの過程を解説。
『リラ』には、当時のカナダの首相(ローリエ、ボーデン)の実名が登場することを紹介。
アメリカ版とカナダ版で、『アンの青春』における感謝祭の時期の描写が異なる例を紹介し、出版社の違いによる影響を指摘。
『アン』シリーズにおける政治描写は、家庭生活の安らぎと楽しみを描く一方で、社会的な視点も提供しており、モンゴメリ文学の多面的な魅力を示していると結論づける。
八の扉:翻訳とモンゴメリ学会
著者が『赤毛のアン』を初めて読んだ時の感動や、翻訳を志したきっかけを述懐。
村岡花子訳の魅力と、自身が新たな全訳に取り組むことになった経緯を説明。
翻訳作業における苦労や喜び、プリンス・エドワード島への取材旅行の重要性を語る。
「一九九一年夏に初めてカナダを訪れたときは、憧れの『アンの島』に来た感激はもちろん、翻訳者として『ああ、モンゴメリが英語で書いていたあれは、これだったのか!』と、見るものすべてに目から鱗が落ちる新発見の連続でした。」
初期の翻訳活動に対する周囲の偏見や誤解を紹介し、モンゴメリ文学の正当な評価を求める思いを吐露。
「『そんなくだらない子どもの本を訳してる暇があったら、早く自分の小説を書きなさい!』と本気で叱咤激励され、さらにアン・シリーズの翻訳『アン』『青春』『愛情』の三冊を出した後の二〇〇〇年には別の男性編集者からまことに残念そうな口ぶりで『松本さんは、作家としての才能とキャリアを台なしにしましたね。少女小説なんかの翻訳に、三十代を費やして……』と言われたのです。」
翻訳作業を通して、モンゴメリの小説技巧の巧みさ(対比による人物の変化の表現など)を再認識した経験を語る。
2019年から2023年にかけて、『アン』シリーズ全八巻の新訳に取り組んだ過程を説明。
北米におけるモンゴメリ研究の変遷と、モンゴメリ学会の設立について解説。
自身がモンゴメリ学会で初めて発表した経験(『アン』の初の全訳と引用出典調査について)を振り返り、学会での交流や学びについて語る。
二度目の学会発表に向けての準備や、学会での発表作品の傾向などを紹介。
モンゴメリの長編小説全二十冊のリストを提示し、その文学的意義を強調。
本書が、著者自身のZoom講座の内容を基に構成されたことを説明。
モンゴメリ作品との出会いから現在までの、自身の研究と翻訳の軌跡を総括し、モンゴメリ文学への尽きぬ愛と情熱を表明する。
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村岡花子訳赤毛のアンシリーズは、私が夢中になって読んだ、まさに青春の本です。
今回、この本を読んで、モンゴメリが、非常に深い思索のもとに、このシリーズを書き進めたことを初めて知り、驚嘆しました。特に、愛読者への「献辞」に込められた意図に、唸らずにはいられませんでした。
この本を読んで、著者の全訳でアンシリーズを再読すると、昔読んだときとは違った味わいやより物語に対する深い理解を得らえるだろうと思いました。
モンゴメリには、アンシリーズ以外にも、魅力的な物語があり、どれも私にとって忘れられない一冊です。
こちらも、是非、著者の全訳と解説が読みたいと思いました。
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赤毛のアンは美しいアニメーションで知り、その後翻訳された文庫を手に取った。自身の成長と分かちがたく結びついているような気がする本でもある。
全訳という偉業を成し遂げた著者による解説は、初めて知ることばかりで、とても楽しかった。私の豊かな読書生活はこのような方たちによってもたらされていると感じた。
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モンゴメリ著「赤毛のアン」への論文です。
奥深い赤毛のアンシリーズの引用や献辞、カナダ史や、民俗学を掘り下げた一冊です。
アンシリーズを全編読み直したくなる一冊!
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高畑勲版アニメを見て、原作にも手を出しく思い、どの翻訳で着手するが考えているところ。
翻訳受容史的には村岡花子訳、アニメによれば神山妙子訳だが、最新で最も網羅的な松本侑子をベースに読みつつ、他の訳も参考にしようと思っている。
折よい親書を読んでみた。
原作を読むにあたっては、アンの心情に没入するのも面白そうだし、歴史や文化を深掘りするのも面白そうで、つまりは美味しそう。
おそらく本書の内容は文春文庫版の訳注にあるのだろうが、いいまとめだと思う。
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モンゴメリ生誕150周年! 魅力を知り尽くした訳者による大人のための「赤毛のアン論」
モンゴメリ生誕150年記念出版!
世界でこよなく愛され、大人の文学として再評価されるアン・ シリーズ。
少女時代の『赤毛のアン』から、アンの息子三人が第一次大戦に出征する第八巻『アンの娘リラ』までの五十年をこえるアンの人生と、カナダの激動の時代を描いた大河小説。その魅力を、昨年完結した日本初の全文訳『赤毛のアン』シリーズ(文春文庫)を手がけ、話題を呼んだ著者が、八つの観点から解説する最新の「赤毛のアン論」。
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◎目次
はじめに
一の扉 エピグラフと献辞
二の扉 英文学
三の扉 スコットランド民族
四の扉 ケルトと「アーサー王伝説」
五の扉 キリスト教
六の扉 プリンス・エドワード島の歴史
七の扉 カナダの政治
八の扉 翻訳とモンゴメリ学会
おわりに
主要参考文献
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保守党と自由党の二大政党が対立するカナダで保守党支持のマシューとマリラに育てられたアンは、女性に初めて投票が認められる画期的な歴史に直面する。アンはその時代をどう見つめたのか? 知られざる政治文学としての一側面。
また、シェイクスピア劇などの英文学を小説中に多数引用したモンゴメリの凝った仕掛け、アン・シリーズ各巻に登場する「アーサー王伝説」と円卓の騎士のロマンの輝き、ケルト文化とキリスト教の融合としての物語の魅力、愛すべき登場人物たちの民族、シリーズに描かれるカナダの歴史などを丁寧に謎ときしながら、『赤毛のアン』シリーズをこれから読む人には充実した手引きとして、再読する人には驚きと感動に満ちた一冊。
プリンス・エドワード島などの写真・図版・地図80点収載の決定版!
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文春文庫のアンシリーズ副読本に最適
アンシリーズを読んでて引っかかるところに、あの人は◯◯家だから、△△党の人間はこれだから、というような人をカテゴライズする物言いだったのだけど、当時のプリンスエドワード島の領土の変遷・住民たちのバックボーンが詳しく解説されててなんとなく腹落ちした
これだけ色んな人がひと処に居住していればそんな発言にも繋がるだろうなぁ
原文と翻訳が併記されてる箇所もあり、よくぞこの原文の持ってる雰囲気を日本語に美しく落とし込んだなぁと感心しきり
モンゴメリのアンシリーズ以外の著作の全文訳も期待してしまう
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赤毛のアンは村岡花子訳に限る。というか、やはり最初に読んだ、あの感動、世界がキラキラ見えたあの気持ちは、やはり村岡花子訳の文章だったから、他の訳者のアンを読むのが怖い、という気持ちが強かった。
松本侑子さんが長年、アンにたずさわっているのは知っていた。だが、前述の気持ちがあり、赤毛のアンは読まずにいた。でも、赤毛のアン論であれば、と思って手にした。
今まで疑問に思っていたことがよく分かり、松本さんの調べ方は徹底しているなぁ、なんて思っていた。それが最後の最後で、村岡花子訳が抄訳だったと分かり、愕然とした。ショックだった。そうなった経緯も丁寧に描かれていて、なるほどと思い、ショックは薄れるが逆に本当の赤毛のアンを読みたい!という気持ちになった。知らない所がたくさん出てくるであろう、赤毛のアン。今から読むのが楽しみだけど、読みたい本は常にたくさんある。困ったものだ!