あの有名な旅行広告シリーズをクローズアップした1冊です。
2024/12/29 22:06
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
JR東海が長年繰り広げている旅行キャンペーン「そうだ 京都、行こう。」の広告シリーズ。当書はもはや有名なキャッチフレーズの広告について、なぜ始まったか、なぜこれだけ長期間続いているのかなど、著者が詳しく調べ上げた1冊です。
有名な広告を作り上げる大変さや、京都が全国でも類い稀なる観光地であることの裏付けなどが分かります。巻末には、歴代のテレビCMナレーションやポスターのキャッチコピーが時系列表にまとめて掲載されています。あまりにもこれまで築き上げた広告が多くて、この表だけでかなりの紙幅が割かれています。
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「そうだ 京都、行こう。」このJR東日本の広告に影響を受け、新幹線に乗り京都旅行をしたことがあります。本書は、30年にわたり続くこの広告に着目し「良い広告とは何か」が述べられる。私にとっても「見たいものを見せてくれる」広告だったのだなと実感した。巻末の広告(キャッチコピー)を見ながら懐かしく思った。また行きたいな、京都。
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奇跡の都市京都 奇跡の広告
京都と旅行・東海道新幹線:
天皇陵 醍醐寺 国有林 景観保存 修学旅行と高齢者の街
京都の描き方:
音楽と京都の組み合わせ ビジュアル作り 広告表現 部分の和≠全体
見たいものを見せてくれる:
1993年開始 比叡山 本願寺 嵐山・渡月橋 伏見稲荷大社 オーバーツーリズム
比叡山延暦寺は自然との調和を見せてくれる ほか)
広告企画:
設計図 京都市観入客数 観光観の変化 通底するコンセプト
良い広告:
行為としての旅 二次創作・聖地巡礼 3次元の旅 見たかったことを見せる
キャンペーンの開始背景と目的:
1993年(平成5年)に、民営化を果たしたJR東海が「日本を代表する企業」へと変貌するために企画された。
舞台として、遷都1200年の節目を迎えた「京都」が選ばれた。
当初の目的は東海道新幹線の利用促進であったが、より広範な企業イメージの向上も意図されていた。
京都という都市の特異性:
「奇蹟の都市」と表現され、平安京遷都以来1000年以上もの歴史が現代にまで連続している点が強調されている。
歴史的な遺産(京都御所、蛤御門など)と現代の都市機能(地下鉄など)が共存する「脈史の舞台」としての魅力。
自然(東山、嵐山など)と歴史的建造物(金閣寺、銀閣寺など)の調和が景観美を形成している。
千年以上続く天皇陵の存在が、「千年の都」としての歴史を物語る。
「京 都 は 「 奇 蹟 」 の 都 市 で あ る 。」
長期にわたる企業スローガンの重要性:
ミツカンの「やがて、いのちに変わるもの。」、資生堂の「一瞬も 一生も美しく」、リクルートの「まだ、ここにない、出会い。」などの例を挙げ、長年変わらない企業スローガンは経営者のメッセージであり、人々の記憶に残り、重要なことをうまく伝える稀有な成功事例であると指摘。
頻繁に変わるものよりも、定着したメッセージの強さを強調。
「そうだ 京都、行こう。」広告の独自性と設計図:
タレントやキャラクターの活用、企業スローガンの利用といった一般的な広告手法とは異なるアプローチ。
京都全体のイメージを捉え、時代ごとに人々が「見たいものを見せてくれている」点が成功の要因。
単なる観光地の紹介ではなく、京都が持つ歴史、文化、自然、そして人々の感情に訴えかける広告表現。
ポスター、テレビCM、ウェブサイトなど、多様なメディアを活用した展開。
過去のポスターやテレビCMが公式ウェブサイトやYouTubeチャンネルで公開されており、アーカイブとしての価値も持つ。
「『 そ う だ 京 都 、 行 こ う 。 』 は 1 9 9 3 ( 平 成 5 ) 年 か ら 現 在 ま で 3 0 年 以 上 続 く 、 東 湘 道 新 幹 線 の 利 用 促 進 を 意 図 し た J R 東 海 の キ ャ ン ペ ー ン で あ る 。」
広告表現の変遷と時代との呼応:
各年代の社会情勢や人々の旅行観の変化に合わせて、広告のテーマや表現が変化してきた。
バブル崩壊後の社会の「びっくり」感や、平成の円高による海外旅行ブーム、その後の国内旅行への回帰など���時代背景が広告に影響を与えている。
環境問題への関心の高まりや、SNS時代の情報発信の変化なども考慮されている可能性が示唆されている。
「本 書 で は 、 こ の キ ャ ン ペ ー ン が な ぜ こ こ ま で 長 く 続 く ほ ど 成 功 し、 多 く の 人 々 か ら 支 持 さ れ て い る の か を 同 キ ャ ン ペ ー ン の 広 告 か ら 解 明 し 、 我 々 に と っ て の 京 都 と 旅 行 、 良 い 広 告 に つ い て 考 え を 深 め る 。」
京都ブランドの創造と再構築:
広告は単に既存の京都の魅力を伝えるだけでなく、新たな視点や価値を付加することで、京都ブランドを再構築する役割を果たしている。
歴史的な出来事や人物(豊臣秀吉の醍醐の花見など)を引用することで、奥行きのある京都の魅力を表現。
普段注目されにくい場所や季節(高雄の紅葉、冬の寺院など)を取り上げることで、多様な京都の魅力を提示。
「『 そ う だ 京 都 、 行 こ う 。 』 が 単 な る 旅 行 の 販 売 促 進 広 告 で は な く 、 京 都 プ ラ ン ド を 利 用 し な が ら も 京 都 プ ラ ン ド を 作 る 広 告 で あ る こ と も 強 調 し た 。」
広告の受け手の心理と共感:
広告制作者は、広告の受け手がどのように感じるか、どう変わるかを常に考慮している。
アンケート調査などを通して、ターゲット層の意識や潜在的な価値観を明らかにしようと試みている。
「臨場感」や「そこで体験した上でしか言えない、感じたこと」をコピーに表現することで、人々の共感を呼ぶ。
近年の広告展開の特徴:
SNSやデジタルメディアの活用。
アニメや漫画など、現代のポップカルチャーとの連携による新たな層へのアプローチ。
特定のテーマや季節に焦点を当てた、よりパーソナルな体験を提案する広告。
(2012年の伏見稲荷大社の広告について) 「日常 生 活 の 中 の 時 間 は 、 い か に も 一 定 の ス ピ ー ド で 進 む こ と を 擬 わ な い で 成 り 立 っ て い る 。 し か し 、 そ の 時 間 か ら い っ た ん 抜 け て み れ ば 、 京 都 で は そ れ が 叶 う の で あ り 、 「 時 聞 の 可 塑 性 」 で あ る 。」
現代広告のあり方と「そうだ 京都、行こう。」の示唆:
現代の広告は一方的で押しつけがましいマス広告では届きにくくなっている。
広告主(Who)、目的(Why)、行ったこと(What)の三つの観点から捉える必要性。
グリコのネオン消灯の事例のように、社会状況への配慮が結果的に大きな広告効果を生むこともある。
「そうだ 京都、行こう。」は、形のない現代広告において、京都という場所を通して人々の心に響く普遍的な価値を提供していると言える。
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京都府に行こうのテレビCMの普遍性は、ブレないメッセージ性にある。
京都の歴史や鉄道旅、新幹線の開通、人々の生活様式が変わっても、変わらないことへの安心感は、また違うものかな
また、京都を舞台にした作品、特に大河ドラマはその筆頭とある。長い歴史を持つ京都だからこそ、歴史への影響は計り知れないと思う。
巻末のナレーションの歴史を見ると、記憶に残るものから、そうでないものまで。
それでも、ナレーターの長塚京三さんのあの声は、懐かしいですね。特に、これが好きでした。
「京都に今年もまた、初々しい花が咲きます
1200年変わることなく、この街を彩ってきた春の色です
平安京は、とてもモダンな町でした」
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京都の街の歴史とブランディングを通じ、時代ごとに「見たいものを見せてくれる」広告の意味を考えることができた。具体例が豊富で、自分が過ごした時代と重ね合わせて読めるのもよい。
JR東海のキャンペーンが始まったのが1993年。バブル崩壊があり、修学旅行と高齢者が旅行する街にも転換点かきていた。JR東海は個人顧客の新幹線利用を促したいという背景も合致したという。ふらっと京都に行ける感覚を生み出したわけだ。
さらには遡れば、明治期に東京に首都が移ってからの、京都にかかわる人々の奈良のようにはなるまじとの執念があった。東山などは国有地であり続けたことで、お寺の借景にもなっている。マンション開発しなくて本当によかった。
それに目をつけたコピーライター、マーケッターらが知恵を絞り、広告全体を通して、京都ブランドを表現する。日本人の記憶の中にあるイメージを補給して、街のブランドを補強し続けたという。見えないものを可視化してくれる広告の力を感じる。
160ページには電通出身の筆者の良い広告とは何かが書いてある。
受け手の自覚していない「見たかったことを見せること」を通じてものの見方の変化を与え、その人にとっても大事な意味に気づかせ、多くの人にとって見て良かったと思えるコミュニケーションである。そして、そのコミュニケーションを通じて、社会の意味と価値を打ち立てることにもなる。
なるほど。