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【収録作品】第一話 雪女のジレンマ/第二話 よく考えると怖くないでもない話/第三話 死者の不確かな伝言/第四話 的を得ないで的を射よう/第五話 雪女を斬る
最初と最後は雪女のロマンス。雪女も相手の人間もなかなか純情。第二話は九郎の体質を利用したアルバイト。第三話は、琴子の高校時代の友人が六花にその頃の逸話を語る形。「ダイイングメッセージ」論。第四話は「拾った」弓矢の所有権を巡る猿の争いの裁定。さくさく気軽に読めていい。
アニメの印象が強いため、そのキャラの口調で脳内再生しながら読んだ。
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虚構推理シリーズ、今回は雪女との関わりを軸にした短編集…かな。曲がりなりにもというか、相変わらずの距離感で九郎と琴子が仲良く過ごしている様子は見ていて飽きない。そして、今回軸になつている雪女が琴子をおひいさまと慕う様子は微笑ましかった。
あやかしにより明らかにされた真実を、生きていくために前を向くためにうまく人間に伝えて、「うまくまとめる」のは相変わらず流石。琴子の言動が多少(?)ぶっ飛んでいても受け入れられ、愛されるのはそういう真っ直ぐなところというか、優しさによる物なのかと思うのは考え過ぎかもしれないが、そうあるといい。
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収録されているエピソードの1話から4話までは漫画にて感想を述べたような気がしないでもないので、ここでは本巻が初出となる『雪女を斬る』を中心に感想
てっきりタイトルから『雪女のジレンマ』の続編かと思いきや、突然江戸時代の剣客物語が展開されたものだから驚かされたよ
まあ、読み込んでいくときっちり『雪女のジレンマ』と関係あるエピソードになっていたのだけど
これまで琴子が事件の推理において虚構を必要としていたのは偏に妖と人の世の調和を保つため。人が妖に手を出そうとしていればそれを制し、妖が人に迷惑をかけそうであればそれを罰する。どちらにせよ琴子の基本スタンスは「妖なんて居ない」というものだった。例え居る事を明かすとしてもそれは既に妖の世界にズブズブに関わっている者に対してのみ
依頼人である白倉静也はかなり特殊な人物だね。一見すれば普通の人間。けれど、その実態は人にも妖にもなれる人物。だから静也に対して提示する解答も普段と異なるものとなる
普段は妖が関わる真実を隠し、合理的な虚構を提示して事件に関わる者から妖を隠していた。でも、妖になりうる静也に対してその遣り方は正しくない。だからこのエピソードにおいて琴子は真実や虚構以外のものも必要としているわけだね
事件は剣道家の罪状ということで懐かしの『ソードマスターの犯罪』を思い出してしまう部分も有ったのだけど、あれとはかなり話の筋は異なるもの
そもそも秘剣を会得した人物が「雪女を斬った」と吹聴している時点で怪しさ抜群。あまりに荒唐無稽だから、現代人がその光景を語るだけでは足りず、その当時を知る者に拠る回想も必要となる
それにより半兵衛の体験した物語が怪異譚ではなく恋愛譚であるのだと理解できるようになっているね。また本巻に同録されている『雪女のジレンマ』とのリンクも感じられるようになっている
それこそが真相に至る道であり、白倉静也を納得させるもう一つの要素を補完させる構図になっているね
人の世に生きる静也に対して、妖を否定する虚構だけでなく、妖を肯定する真実も語った琴子はいつもと異なるスタンスを見せる
琴子が最も重視しているのは相手を納得させ、それ以上の追求を辞めさせること。だからどうとでも受け取れる虚構と真実を同時に語り、その上で静也が恨みの果てに生まれた血を引いているわけではないと示す必要があったのだろうね
あの雪女を見る事で静也は自分が幸福の果てに居る存在だと知れた。それは何よりも静也を納得させる一手となったのだと判る解決編は素敵だったな
あと、話の内容とはそこまで関連しているわけではないんだけど、昌幸と雪女がきちんと幸せを掴めそうであった点には少し安心してしまったよ
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城平京『虚構推理短編集 岩永琴子の純真』読了。
「雪女のジレンマ」「死者の不確かな伝言」「雪女を斬る」に共通するダイイングメッセージについての処理のバリエーションは、虚構推理の独自性の強い設定をうまく盛り込んでおり面白い。しかし、中休みの二編は正直なくても一向に構わない内容か(漫画版ではそう感じなかったので、これは漫画のギャグ回みたいなイメージなのかも)。全体的には虚構のロジックが弱い印象。次作への準備という意味でも、前作で十分だった感はあり、精彩を欠く。ただし、漫画原作の弾を増やすことも考えれば、これを軽く仕上げて出してくるのはやはり安定した実力に裏打ちされているように思う。
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――
純真さは特に感じなかった。つまりいつもどおり。
漫画原作のため書き下ろし、というところになんだか、ビジネスライクな寂しさというか忙しなさみたいなものを感じてしまった。というのも小説としては書き急いでいるな、という部分がちらほらと見えているからで、しっかり練れば雪女にまつわるひとつの長編として、この季節にばっちりの名作になった気もするので残念だなぁ、と云う感想。
怪異の取扱いやスタンスに関しては安定で、虚構の組み方は流石、それぞれの短編の展開も(なんだな忙しないというところは除いて)良いのだけれど、半端に要素が積み重なるのでラストに向けてのまとまりがちょっと、惜しい。
漫画原作としては確かにこんな感じなんだろうなぁ、と思うんだけど…
アニメ化して映像になれば面白く見られるのもそうなんだろうけど…
なんだかなぁ。小説にせざるを得ない、という感じが無くて
七瀬以来、そのあたりの姿勢みたいのが虚構というメインファクタとの相性バッチリで好きだったので、やはり物足りなさが勝っている。
面白いよ?(笑 ☆2.7
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めちゃくちゃ短かったけど第二話「よく考えると怖くないでもない話」が好きだった。雪女で始まり雪女で終わる今巻。「雪女を斬る」は長いなーと思いながら読んでた。
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怪異が介在する真実と、皆が納得する虚構の推理のバランスは安定して面白い。『的を得ないで的を射よう』は、短いながらも琴子の魅力が存分に分かるストーリー。読んで字の如くの“おひいさま”っぷりが癖になる
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昨年10月に刊行されていた、虚構推理シリーズの短編集第2弾である。このシリーズ、ラノベっぽいカバーとは裏腹に中身はちっともライトではない。読み終えて思う。中身を誤解しそうな帯だなあ、これ。わざとか?
琴子と九郎のコンビと、九郎の従姉である六花(りっか)。主要キャストは以上。琴子を前面に出しつつ、九郎と六花にスポットを当ててもいる。最新長編『虚構推理 逆襲と敗北の日』を先に読んだが、刊行順に読んだ方がよかったかも。
第一話。雪女と交際している男性に、殺人容疑がかけられた。雪女にアリバイ証言をしてもらうわけにもいかず、琴子の出番に。厳しい口調はいつもながら、辛い経験をした男性へのエールも感じられる。んー、何だかこのシリーズらしくない?。
短い第二話。曰くつきの現場でアルバイトをする九郎。こういう現場では重宝されそう。何しろ九郎は…。真相は往々にしてそんなもんだよねえ。
第三話。琴子と高校の同級生だったという女性が、六花と出会った。これって偶然か? 彼女が語る、琴子がかつて手掛けたダイイング・メッセージの謎とは。うーむ、高校時代から容赦がないな。見透かされた男性が少々お気の毒…。
本作の一押し、第四話。琴子が妖怪に迫った、恐怖の踏み絵とは。この短さに、ある意味このシリーズのすべてがある。だめだ、苦笑が止まらねえ。
やや長い最後の第五話。また雪女? 現代に剣術を受け継ぐ青年が語った、開祖や弟子の伝説、そして悩みとは。琴子はまた納得できる理屈を捏ねるのだが、ほぼ剣豪の物語じゃないか。これはこれで、独立した話として読んでみたいぞ。さて、冷徹な現実解と、浪漫ある虚数解と、どちらがお好き?
十分に長編にアレンジできそうな第一、三、五話と、挿話的な短い第二、四話のバランスが、なかなか絶妙な短編集と言える。第二、四話では九郎がいい味を出しているし。恋愛要素に期待しすぎると、がっかりするかもしれない。
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以前読んで感想を書き留めていなかったので再読。
雪女の短編2作と短編3作。雪女(妹)の性格すごく好きだなあ。コミカライズでは雪女キリン雪女の順だったけど、雪女のエピソードが1冊にまとめられていたの、うれしい。
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「雪女のジレンマ」
裏切られてばかりの人生。
これだけ酷い目にあってきたというのに、人から距離を取るだけで心を壊さずに居れるのは凄い事なのでは。
警察も馬鹿ではないのだから、どれだけ疑わしくとも実際にその場に行くまでの経路などを辿れば彼が犯行に及ぶのは不可能だと分かるだろうな。
「よく考えると怖くないでもない話」
曰く付きの家の片付けを。
疑惑が浮上してはならない遺産を一から探すとなると、相当な時間が必要だったろうし労力も半端なかったろうな。
誰にも手を付けて欲しくないから流した噂なのだろうが、全てが終わった後で業者が引き受けてくれなくなるなど想像出来なかったのだろうか。
「死者の不確かな伝言」
偶然が重なってできた事。
一言でいうと不運でしかないが、今回に関しては被害者と加害者どちらに向けても言えそうな言葉である気がするな。
日頃から言い続けてたとしたら本人の耳にも入り違うと訂正されることはなかったのか気になるが、一人で自身の力を過信していた事に変わりはないな。
「的を得ないで的を射よう」
真実を聞くために試した。
始めから全ての出来事に気付いていたからこそ、心身的に苦しい思いをするであろう勝負を持ちかけたのだろうか。
本人たちの口から直接聞きたかったのかもしれないが、勝負という名目の事柄と同時に罰を与えるようなことを提案するなんて恐ろしすぎやしないか。
「雪女を斬る」
辻褄合わせに語る昔話は。
確信はついていなくとも、自身の中で何かしら答えが浮かびかけていたからこそ今回の件を尋ねったのかもな。
存在を否定しているにも関わらず完璧な筋書きを語られては、心のどこかで本当にあったのかもしれないと錯覚してしまうのではないだろうか。
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'22年8月24日、Amazon audibleで、聴き終えました。
どの作品も、楽しんで聴きました。「雪女」の2篇など、なかなか力が入っていて、感心しましたが…僕的には一番面白かったのは、「よく考えると怖くないでもない話」です。笑ってしまいました。
シリーズ5作目は、8月下旬にaudibleにアップされるそうなので…楽しみに待ちます!
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ほぼ雪女が主役。
彼女のおかげで岩永琴子が凄く知恵の神らしくなっている。
相変わらず下品だけど。
そこもまた可愛い。
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アリバイ証人は雪女!?
虚構推理シリーズの短編集。 メインとして雪女関連の話が二編、琴子高校時代の話が一編。
いつものように真相は予め妖怪から聞いているのだが、態々虚構を作り披露する。 なぜ虚構を伝えなければいけないのか、そこには知恵の神として人間と妖の調和の為の優しさがある。 今回は九朗先輩はほぼお休み、雪女が怯えますので。
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第五話の自害の理由があまりにも好きで、読み返す度に唸ってる。『名探偵に薔薇を』の時もあった、ミステリの合間に挟まる密やかで苛烈な恋慕が本当に良い。
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とある男に殺人の疑い。
そのアリバイを知るのは雪女だけでした。
けれど人外の彼女はその証明は出来ません。
想いと存在ががんじがらめになって身動きが取れないような相談事。
糸口とロジック、そしてエモはひとしおです。傑作。