貨幣で東洋史を語る1冊です。
2025/04/22 22:04
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
貨幣、特に銅銭をテーマにして東洋史、特に日本と中国をメインに、だいたい西暦1000年以降の歴史を振り返っていく内容の1冊です。
銅銭が各時代の人々にどう扱われ、どんな社会が確立していたのかを知ることができます。貨幣をテーマに歴史を語る新書は稀と思われるので、当書を購読しました。
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中世東アジアにおける銅銭流通の特質と変遷
銅銭の普遍性と自律性
国家の強力な保証がなくとも銅銭が広範囲に流通
滅亡した王朝(北宋など)の年号を持つ銭貨が後代でも主要決済手段として使用
銅銭が国家の威信の象徴ではなく実用的な商品として認識されていた
「撰銭」の慣行
15世紀以降、東アジア各地で銅銭を選別して使用する習慣が広がる
古銭は品位が高く量目も安定しているため新銭より高い価値を持つと認識
市場における貨幣品質への意識の高まりと政府による貨幣管理の限界を示す
銅銭の供給と需要
中国王朝の財政難による額面価値の高い貨幣発行は市場原理により失敗
日本は当初中国からの渡来銭に依存
室町時代後期以降の鉱山開発で安価な銅が入手可能になり私鋳銭が大量流通
15世紀は中国史上まれに見る官製通貨の供給不足期間
地域経済と銅銭
中国北部と南部で社会経済構造の違いから小額通貨へのニーズが異なる
日本では地域によって米や布などの物品貨幣も使われるが銅銭が次第に浸透
明代の貨幣政策と銀の台頭
明朝初期の紙幣推進・銅銭使用禁止政策は市場に受け入れられず失敗
北方防衛のため軍への給与を銀で支払うようになり銀取引が増加
銀の台頭が東アジアの貨幣システムに大きな変化をもたらす
東アジアの広域的貨幣ネットワーク
日本の私鋳銭は国内だけでなく東南アジアにも輸出(「日本鉛銭」)
倭寇の活動が銅銭の流通と模鋳銭の拡散に影響を与えた可能性
国家の枠を超えた広域的な貨幣流通ネットワークの形成
近世への移行
織田信長・豊臣秀吉時代の撰銭令にみる貨幣質の管理重視
江戸幕府成立による貨幣統一と日本独自の貨幣システム確立
それ以前は中国銭や私鋳銭が日本経済を支える重要な役割を果たした
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日本の中世において通貨としての役割を果たした中国からの渡来銭について東アジアという広域から包括的に分析・考察した一冊です。
<こんな方にオススメ>
(1)日本の中世における通貨事情や貨幣システムに興味がある
(2)通貨を軸とした経済システムに興味がある
(3)中世における国際貿易や国際経済について知りたい
[概要]
中世東アジアに普遍的に通貨として利用された中国銭(とその私鋳銭)の流通事情とそこから敷衍された通貨論がメインテーマとなっているのではないでしょうか。
全体は六章構成となっています。大まかに言いますと4つに分けることができると思われます。
まず、第1章では日本に渡来銭が流通する以前の通貨事情が説明されています。
次に、第2章から第4章までで渡来銭の日本においてどのように浸透しそして変化していったかが解説されています。
さらに、第5章では渡来銭が日本において寛永通宝の登場とともに退場していくプロセスが述べられています。
最後に、渡来銭が担った中世東アジアにおける役割とそこから導き出される「通貨論」ともいうべき経済と政治の相克的な構造が考察されています。
各章では日本国内の事情はもちろん、中国本土における銅銭事情や周辺の東アジア諸国における通貨事情も併せて説明されております。
[ポイント]
(1)日本の中世における銅銭を軸とした通貨事情の解説
中世日本において貨幣経済が発展していくなかで自国通貨ではない中国からの渡来銭がなぜ通貨として機能しどのように流通したのかが通史的に解説されています。
(2)中国を中心とした東アジアに視野を広げた貨幣システムの分析
中国発行の銅銭が日本以外でも東アジアで通貨としての役割を果たした構造、そしてそもそも中国において銅銭がどのように運用されていたのか(また運用されなかったのか)とその影響が分析されています。
※そのほか詳細は別途、ブログ「note」内に掲載しております。よかったら併せてご覧ください。
https://note.com/rekishi_info/n/n505fe591277c
(2025/04/28 上町嵩広)
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20250501-0520 日本を含めた東アジア一帯では、かつて歴代中国王朝が鋳造した銅銭が原子貨幣として日々の取引を担っていた。歴史上きわめてユニークな銅銭の歴史を紐解き、貨幣システムの在り方について考察している。
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https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01437516