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昔はどの町にも、駅前や一等地にあった本屋さん。そんな町の本屋さんの苦境については、多くの人々が話題にはするが実態を綿密に調査してきたわけではないだろう。「ネットやスマホの普及で本を読まなくなった」「最近の若者は本や雑誌を買わない」といった、確からしい言説に回収されてしまう問題に対して、真の課題を突き詰めた内容となっている。
そもそも町の本屋さんと呼ばれる、新刊本を中心とした個人や零細営業の書店は、1980年代から減少傾向にある。専業としての書店から文具雑貨やレンタルビデオといった多角化を経て2000年代まで生き残り、その後は大手や鉄道系と呼ばれる系列に統廃合されていった流れがある。そして小売業としての書店は、書籍の定価販売という法律の枠組みに縛られて価格決定権はなく、取次から見計らい・委託販売のような一方的な条件で書籍流通の仕組みに組み込まれる下請け構造にあり、ビジネスとしての選択肢がそもそも存在しない。
結果として出版不況においてヒット作の配本は限定され、雑誌やコミックの売れ筋はコンビニに侵食され、町の本屋さんの生き残りはかなり厳しくなっている現状がある。零細事業者の書店が組合をつくって対抗しようとしても、様々な法律や判例によって個別撃破されて出版社や取次に比べて弱い立場になり続けている歴史があるのだ。まさしく潰れるべくして潰れている町の本屋さんの現状を知る上ではかなり参考になるとともに、あまり希望は持てない状況なのだと知ることができる。
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確かに昔近所にあった町の本屋はなくなっている。
本書は出版業界の歴史や商慣行について解説しどうしてつぶれるような状況になっていったのかを書いている。
思っていた以上にデータや過去の資料の話がでてきて重厚。
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戦後から変わらず「末端」にいるのが本屋
「本を読む人が減っている」
「デジタル化が進んでいる」
「本を買うなら早いAmazon」
確かにそれはそうだが、表面的な話だけではなく、これまでの本屋の戦いが事細かに書かれている作品。
例えば、お金の話。本屋は平均15%〜22%の粗利が一般的であるが、本は値下げできず、欲しい本が必要数入ってくるとも限らない。
出版社→取次→本屋→顧客 が通常であり、配送料等も本屋が負担する。しかも金額は変更する権限がなく、人件費や燃料費が上がったとてうまく工面していくしかない。(出版社は消費者の本離れを懸念し値上げに腰が低い)
こんな状況を生き抜きてきた本屋に対し、前述した表面的な目下課題を挙げるのはお門違い。そんなレベルの話ではなかった。
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町の本屋は消えつつあるという歴史と事実を探る、改善の一つの手がかりになるであろう良書である。
本著が述べている通り、小さな本屋が生き残るためには、出版業界の流通の仕組みの制度が硬直していることが原因の一つと捉えている。確かに、本屋は古書店の比べて自由に価格を決めることはできない。だからこそ、どの本屋においても価格は一定であるということを知る必要があり、それらに多くの要因によって全体的なコストが上がり小さな書店ほど負担が大きくなっているのだという。
私は思う、それらは「町の本屋」だけで起こる現象ではなく、大型書店でも閉店や店舗を集約しているところも見受けられる。時代という曖昧な言葉で一括りするほど、書店経営は難しいものだと痛感させられる。
だが、都市部、地方においても「町の本屋」という形は減少はするだろうが、無くならないだろう。新しく立ち上げる人や、様々業態を組み合わせた現代的な本屋が現れてきているからだ。
書店・出版業界も今、まさに新しい時代・環境・コンセプト、既存の街・町の本屋から変革し適応している状態が進んでいる進行形なのだと私は思う。
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出版業界にいる身としては容赦なくえぐられてます。ネット書店のあたりがとくに興味深かったです。値下げはダメ、ポイントカードもダメと聞いてきたが、今Amazonめちゃくちゃポイント還元してるが? というあたりとかわかりやすかったです。
ところで前書きで「ややこしい、わからないところは読み飛ばしていい」「先に各章のまとめと終章読んでから読むと全体の見通しが良くなる」と書かれていたり、最初に用語集があったり、読むための丁寧なアドバイスや心遣いがすごく良いと思いました。
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書店でふと気になったものなんだけど、実は著者、”若者の読書離れ”の新書をものしたその方でした。同署では、実は読書への親和性は過去から現在にかけ、少なくとも落ちていないというものだったけど、本書も、一般に信じられている本屋減少の原因を、改めて問い直すものとなっている。ネット隆盛の時代だからとか、それこそ読書離れが進んでいるからとか、いかにもな理由が語られるけど、実はそれらはあまり関係がない、と。それ以前から、そもそもの商売形態として、書店は成り立っていない。他業種ではあり得ない薄利を、雑誌の隆盛やら、他業種との兼業やらでなんとかやり繰りしてきた歴史が明かされる。で、そのあたりでカバーしきれなくなった昨今、廃業が目立ちまくる状況まで事態は悪化。にしても、これはホント、街の本屋さんが無くなってしまうな…。簡単な問題じゃないけど、売り上げのうち、せめてもう少し書店に落ちる割合を上げないと。当然、それは価格に転嫁されざるを得ないんだろうけど、その事情が分かれば、喜んで飲む条件なんだけどな。
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地元にある大規模に展開していない中小規模の本屋を対象に、明治期から歴史的な経緯をふまえながら、いかに本屋がこれまでに、つぶれてきたかを解説する図書。「つぶれる」という表現は、著者があえて強く表現するために使われている。各章の最後にまとめがあるので、さっと読むこともできる。
終章で簡単にまとめられているが、答えとしては、「雑誌と書籍の一体型流通」、「取次寡占」、「再販契約」のなかで成長してきたものの、現在、書店の変革には足かせとなっており、「書籍単体でも儲かる」、「仕入れと資金繰りでの主導権を握る」、「客単価の設定も自ら行う」ことが必要、と結論されている。
やはり驚きとしては、著作物の再販制が認められた理由はあいまい、というところ。読んでいて、確かにあまり明確に議論された感じはない。再販制度は文化水準の維持や多様な出版物のアクセスができるようになる、と大学のテキストで読んだが、1990年代すでに明確な理由もなく、現在の出版社ー取次ー書店の関係では、同じような本ばかり並んでいる、と指摘されており、考え込んでしまった。
さて、経済産業省が書店活性化のために動き出しているけど、関係者は多くややこしそう…どうなるのか…
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まだ半分も読んでないけど、本の販売についてマージンや価格設定、仕入れ量など知ることができてとても興味深いです。
ベストセラーはたくさん売れるから、本屋さんはたくさん仕入れて、たくさん売って利益だせる!
と思ったけどいろんな条件があって簡単にはいかないんですね。
世の中の、本屋さんを残そう!
本自体はたしかに好きだけど、それよりも本屋さんに行くのことのほうが好きです!
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素晴らしい本! 戦後の町の書店の歴史を、簡潔にわかりやすくまとめた本。長く書店業界に身を置いた身としては、知っていたり、聞いたことがあったり、または実際に体験して憤ったりしたことが多いのだけど、テーマ毎に時系列で整理されていて、とてもわかりやすい。今後の町の書店をめぐる議論はこの本をベースに進めればいい。間違った言説が巷を賑わしているけど、この本にある事実から始めた方がいい。そうでなければ、戦後ずっと続けてきた不毛の議論をまた続けることになる。経産省の「書店振興プロジェクトチーム」もそうならなければいいけど。残念ながら、そうなりつつある気がするけど。
スマホの普及、本を読まなくなった、amazonが上陸したことが町の本屋を潰したわけではない。書籍・雑誌の売り上げがピークに向かって伸びていた1980年代にはすでに毎年1000店以上の町の本屋が潰れていたという。町の本屋は潰れないように「抗争」を仕掛けたが、出版社、取次、公取にことごとく破れ去ってしまった。「出版社、取次、公取が町の本屋を潰した」のである。
いま、出版社や取次が町の本屋がなくなっていくのは「問題」だと言っているとしたら、それは本心からのものではないことを長く業界に身を置いた僕は知っている。出版社は自社の本がどこで売れてもいいわけで、取次は面倒な中小書店へは本を運びたくない、というのが本音だろう。今でもそれは変わっていない。
ただ、著者はamazonがたった1社で、たった数年で書店が仕掛けた「抗争」で得ようとしていたことを得てしまったことも報告する。正味の改善、新刊の確保、注文品の物流、返品率の減少・・・・。つまり、日本の書店は「力」が足りなかった。
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町の本屋の歴史、取次や出版社や他の小売店との関係等々について解説されている。
町の本屋は不遇な中で頑張っているなあと思った。