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4件
いずれすべては海の中に
最新の義手が道路と?がった男の話(「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」)、世代間宇宙船の中で受け継がれる記憶と歴史と音楽(「風はさまよう」)、クジラを運転して旅をするという奇妙な仕事の終わりに待つ予想外の結末(「イッカク」)、並行世界のサラ・ピンスカーたちが集まるサラコンで起きた殺人事件をサラ・ピンスカーのひとりが解決するSFミステリ(「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」)など。
奇想の海に呑まれ、たゆたい、息を継ぎ、泳ぎ続ける。その果てに待つものは――。静かな筆致で描かれる、不思議で愛おしいフィリップ・K・ディック賞を受賞した異色短篇集。
アーシュラ・K・ル=グウィンや、ケリー・リンクの作風を受け継ぎながら、彼女自身の不屈の声が全面に響いている。
――〈カーカス・レビュー〉
幻想的な要素を含みながら、同時に、現実にある身近な喪失と痛みに根ざしたほろ苦い物語だ。この物語には、美しい繊細さがある。思索的(スペキュレイティヴ)な要素で読者の頭を殴ることはなく、物語の多くの側面を行間に残している。ピンスカーはサブテキストを非常に巧みに扱い、ページ上ではひとつの物語しか描かれていないが、読者にはふたつの完全な物語が提示されている。
――A・C・ワイズ(作家)
【短篇集として】
2020年度フィリップ・K・ディック賞受賞作
2020年度ローカス賞短篇集部門候補作
2020年度世界幻想文学大賞候補作
【収録作品一覧】
「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」(2015年度ネビュラ賞短篇部門候補作)
「そしてわれらは暗闇の中」
「記憶が戻る日(リメンバリー・デイ)」
「いずれすべては海の中に」(2017年度ネビュラ賞短篇部門候補作)
「彼女の低いハム音」
「死者との対話」
「時間流民のためのシュウェル・ホーム」
「深淵をあとに歓喜して」(2014年度シオドア・スタージョン賞短篇部門受賞作、ネビュラ賞中篇部門候補作)
「孤独な船乗りはだれ一人」
「風はさまよう」(2018年度ヒューゴー賞中篇部門候補作、ローカス賞中篇部門候補作、ネビュラ賞中篇部門候補作)
「オープン・ロードの聖母様」(2016年度ネビュラ賞中篇部門受賞作、ヒューゴー賞中篇部門候補作、シオドア・スタージョン短篇部門候補作)
「イッカク」(2020年度ローカス賞中篇部門候補作)
「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」(2016年度ヒューゴー賞ノヴェラ部門候補作、シオドア・スタージョン短篇部門候補作、ローカス賞ノヴェラ部門受賞作)
いずれすべては海の中に
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いずれすべては海の中に
2023/01/18 04:22
個人的オールタイムSFリストが書きかわった!?
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たこい - この投稿者のレビュー一覧を見る
いかにも現代らしいモチーフ、アイデアの処理の仕方が巧みで、ご本人もミュージシャンとのことで、音楽の要素もあちこちに散りばめられているところに好感。一読、音楽とSFの関係性から、かつてのサイバーパンクをちょっと連想した。
自分はサイバーパンクの運動そのものには興味が持てなかったが、ギブスンの短編集『クローム襲撃』は「明るくない未来」の片隅で生きる人間を手を変え品を変え描いた点でエポックメイキングな作品集だったと思っていた。この短編集にはそれ以来の衝撃を受けた。
あと、前半の収録作からはウィンダムが描いた終末感への変奏も感じられる気がする。個々の作品のアイデアと語り口のうまさ。なかなかないことだけど、自分の中のオールタイムベストを更新する候補になるくらいの短編集。繰り返しになるかもしれないが、ロックや音楽がモチーフの作品が多いのもポイント高し。
いずれすべては海の中に
2023/07/04 16:31
期待してなかったんだけど
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやあ、期待外れの面白さ!
読みだしたら止まらない。次の作品のページをめくる指がもどかしい。
その中でも、特に気に入った作品を2本。
「風はさまよう」
他の星を目指す世代型宇宙船の中で、地球の文化や芸術をアーカイブしたメモリがすべて失われてしまう。残されたものは、地球を知る世代の記憶のみ。そして、その記憶を受け継いで新たに記録していくことが乗員の仕事となった現在。
もしも、そんな状態に置かれたら、地球を知る術を失った若い世代はどんな風に育つのだろうか。世代間の分裂は。温故知新は不可能なのか。
いろんなことを考えさせられた一編である。
「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」
クリスティの名作のタイトルをもじった抱腹絶倒のミステリー。
考えてもみてください。その辺の平行宇宙から集まった二百人もの自分が集うパーティーの中、そのうちの一人が殺される。
犯人は間違いなく自分(たちの中の1人)。探偵役を引き受けた私は、少しずつ違っている犯人の内面に迫り、発見することができるのだろうか。
もうシュールすぎて読みながらニヤニヤが止まりませんでした。
いずれすべては海の中に
2022/07/13 19:54
SF短編集
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
道路と繋がるハイテク義手や集団幻覚など奇天烈な設定から、殺人事件や戦争、死者との対話、音楽と多岐にわたるSF短篇集。
背景を鮮明に描写するスタイルではないからわかり難い部分も多々あったけど、13編の中にいくつ気の合う話があるかを探すのもありかも