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3件
怪談・奇談
著者 著者:ラフカディオ・ハーン , 訳者:田代三千稔
その魂の底に清らかな情熱をたたえた庶民詩人は、日本の珍書奇籍をあさって、久しく塵にまみれていた陰惨な幽霊物語に新しい生命を注入した。壇ノ浦の合戦というロマンティックな歴史的悲劇を背景に、盲目の一琵琶法師のいたましいエピソードを浮き彫りにした絶品「耳なし芳一のはなし」等芸術味豊かな42編。
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怪談・奇談
2024/04/09 15:26
日本人の魂に刻まれた物語たち
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の怪談で避けては通れない小泉八雲。遅ればせながら手に取ったが、新訳とだけあって大変親しみやすい読み味だった。
思うに、ファンタジーは、その発祥の地の願望が託されている。人の身ではどうにもならないしがらみを超えて、人の身ではどうにもならない神秘の力は、ついぞ口にできなかった本音を代弁してくれるように思えてならない。死者の心残り、遺族の願い、あるいは神秘的な存在の生きる姿を通して抱くメッセージは千差万別であろうが、そこには現実に生きる私たちへの警告や訓戒が少なからず含まれている。
怪談・奇談
2011/08/24 15:53
怪奇現象を起こすほどの情念に覚える物の哀れ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラフカディオ・ハーンの怪談には、怪奇現象の恐ろしさよりも、そこに秘められた強い情念に印象が残る。そのため、作品を読み終えるたびに、夜気のようなひんやりとした涼しさを感じながらも、なぜか心が暖かくなる。それは、怪奇現象を通して、強い恨みや憎しみ、悲しみに触れたとき、その現象を起こすほどの情念に、物の哀れを覚えてしまうからだろう。
日本の怪奇物語を材にしたラフカディオ・ハーンの怪談だからこそ、感じられる余韻のように思う。
その余韻が強く残ったのが、夜な夜な蒲団から声が聞こえるという【鳥取の蒲団のはなし】
取り立てて怖くもなく、声の秘密も驚くほどでもない。それでも余韻が残るのは、そこに、強い恨みや悲しみではなく、幼い兄弟の互いに思いやる小さな愛情と、哀れな結末があるからだろう。
ハーンは、この話を結婚して間もない妻から聞いた。彼もこの話に物の哀れを覚えたのだろう。それから、日本の幽霊話を自分の創作の素材にし始めたそうだ(解説より)。シンプルながら悲しさに満ちたこの話が、ハーンの怪談の原点なのかもしれない。
ところで、ラフカディオ・ハーンの怪談は、ドラマ化されたものをテレビでは見ていたものの、原作を読むのは、これが始めて。恥ずかしながら、【耳なし芳一のはなし】では、始めて知ったことが色々あった。
・芳一は、『高貴なおかた』から声をかけられ、自分にも運が向いてきたと喜んでいたこと。
・平家の亡者は、耳しか見えない芳一を見つけ、口がないから返事がないのだ、と納得していたこと。
・亡者は、自分は出来るだけのことをしたと、主に知ってもらうために、芳一の耳を証拠に持ち帰ったこと。
・後に芳一は、莫大な金を送られて裕福になったこと。
芳一は、ただ琵琶を奏で源平の物語をうたう、という印象の人物だったのだが、それはテレビドラマの芳一だったようだ。芳一の世俗的な一面に新鮮さを覚えた。また、死んでなお、命令を全うした証とするために、芳一の耳を持ち帰る平家の亡者に、武士の哀れさが感じられた。
【収録作品】
〈怪談〉
耳なし芳一のはなし、おしどり、お貞のはなし、乳母ざくら、はかりごと、鏡と鐘、食人鬼(じきにんき)、むじな、ろくろ首、葬られた秘密、雪おんな、青柳のはなし、十六ざくら、安芸之助の夢、力ばか。
〈奇談〉
鳥取の蒲団のはなし、死人が帰って来たはなし、倩女(せいじょ)のはなし、振袖、因果ばなし、和解、普賢菩薩のはなし、衝立の乙女、死骸に乗る者、鮫人(こうじん)の感謝、約束、破約、閻魔の庁にて、果心居士のはなし、梅津忠兵衛のはなし、興義和尚のはなし、幽霊滝の伝説、茶碗の中、常識、生霊、死霊、おかめのはなし、蠅のはなし、雉子(きじ)のはなし、忠五郎のはなし、いつもあること、鏡の乙女。
2021/02/07 23:09
思い出の本
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供の頃に一生懸命、辞書をひきながら読みました。とても怖かったけれど、絵本みたいな偽物じゃなくて、本物の「大人の本」を読んでいる気がして。