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少女七竈と七人の可愛そうな大人
著者 著者:桜庭 一樹
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竈は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈――誰もが七竈に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竈の間柄にも変化が――。雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
少女七竈と七人の可愛そうな大人
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少女七竈と七人の可愛そうな大人
2009/05/06 20:02
何とも言えぬ切ない余韻の残る恋愛小説であり、人が人を許す難しさも感じた一冊。
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
淫乱な母親から生まれた七竈。
父親が誰なのかわからないまま淫乱な母は七竈を産み、そしてその男を求める旅は子供が産まれてもなお続きいまだ旅人である。
旭川に田舎で七竈は小さいころからその産まれにより友達ができず、唯一の友は七竈と同じく鉄道を愛する美しい少年の雪風のみ。
雪風との穏やかな時間は望んでも望んでも決して続くものではなく、美しい少女と少年の切ない青春の時間は好むと好まざると終わりを迎えてしまう。
認めたくなくても認めざる終えない事実。
時間の流れは、なにより大事なはずだったものをすべて、容赦なく墓標にしてしまう(P252)
あまり感情を表に出せない七竈の心に痛みがすべてこの一行に込められる。
なんとも言えぬ切ない余韻が残るのである。
この小説というかこの作家には不思議な魅力がある。
タブーの世界なのに厭らしさが感じられないのだ。
そして風変わりな主人公達を愛おしく感じてしまうのである。
人が人を許すことは難しい。
きっと生きていれば誰もに「許せない誰か」がいる。
死んでも許せぬと思うくらい憎んでしまう「誰か」を痛む胸のうちに抱えて生きている。
時間の流れがそれを風化させるのか?それとも胸に巣食うのかは誰にもわからない。
「ほんのちょっと」その誰かを許せたら軽くなるのに難しい。
あらためてそう感じた一冊。
少女七竈と七人の可愛そうな大人
2016/11/13 02:20
素朴な文章と素朴じゃない七竈
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説は生まれながらの美少女「七竈」と唯一の親友「雪風」のさびしくも凛々しい青春物語です。
旭川を舞台としており物語の雰囲気は全体的に落ち着いています。また改行が多く、テンポよく読み進められました。
落ち着いた作風とは裏腹に七竈を取り巻く環境(特に母親)は穏やかではありません。終盤の母を許せない自分と葛藤するシーンと、雪風との別れのシーンが印象的です。
少女七竈と七人の可愛そうな大人
2016/02/27 09:05
不思議なある少女の魅力的な世界が描かれた作品です!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、『私の男』で直木賞を受賞し、一世を風靡した桜庭一樹氏の初期の作品です。主人公は「七竃(ななかまど)」という名の少女。少女はいんらんな母から生まれますが、とても美しく、かつ妖艶な雰囲気をまといながら成長していきます。ただ、趣味は鉄道模型で遊ぶこととという風変わりな少女です。この少女をめぐって周囲では様々なことが起こります。さて、どんなことが起こっていくのでしょうか。これは本書をぜひ手にとってお読みください。