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夜間飛行
著者 サン=テグジュペリ (著) , 二木麻里 (訳)
20世紀初頭の郵便飛行に携わる者は、「自分達が歴史を作る」という信念と誇りを持っていた! 南米大陸で、夜間郵便飛行という新事業に挑んだ男たち。ある夜、パタゴニア便を激しい嵐が襲う。生死の狭間で懸命に飛び続けるパイロットと、地上で司令に当たる冷徹にして不屈の社長の運命は――命を賭して任務を遂行しようとする者の孤高の姿と美しい風景を、自身も飛行士だった作家が詩情豊かに描く航空小説の傑作。
夜間飛行
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夜間飛行
2011/09/24 21:43
現場の強さがあるとしたら、そこには「現場のリーダーシップ」が必ずあるはずである
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「夜間飛行」の新訳が出た。旧訳の本書が実に面白かったので、直ぐに購入した。旧訳は詩人の堀口大學であり、言葉は綺麗ながらも現在から見ると古い。新訳の方が今の僕らには読みやすいと思った。
本書を再読して、改めて、この作品の主人公リヴィエールの造形に感じ入った。僕も主人公と同じく中年であり、組織でいくばくかの部下を抱えて働いている。その立場に立って見ると、主人公の見せるリーダーシップの難しさということが分かる。
僕の仕事は、部下に死の危険を強いるようなものではない。一方、夜間飛行を強いる主人公の仕事は部下の命を危険にさらす厳しいものだ。その厳しさの中から、主人公の並はずれた自制心と、自他共に律する厳格さが産まれてきたのであろう。著者のサン=テグジュペリ自身がパイロットであり、最後は地中海で撃墜された程の危険な任務についていたこともあり、本書に描かれる業務の危険性には非常に説得力がある。その上での主人公の造形だ。
ここからはいささか想像力をたくましくしたい。
福島第一原発では3月以来、既に半年もの間、非常に危険な部署で多くの人が今なお懸命な作業を続けておられる。死の危険に晒されながらも、作業を進める姿には世界からも称賛の声が寄せられている。その中で、どのようなリーダーシップが発揮されてきているのだろうかということだ。聞くところでは、本社からの指示を無視して、注水を続けたリーダーもいらしたという。指示を無視した点の是非は議論の余地は十分あるわけだが、そこにはいくばくかのリーダーシップ論もあるような気がしている。
日本の強みは本社ではなく現場だと言われることは多い。そんな現場の強さがあるとしたら、そこには「現場のリーダーシップ」が必ずあるはずである。リーダーシップというと、どちらかというと日本人はそれに欠けていると言われがちかもしれないが、おそらくそれは間違っているはずだ。そうでないと現場の強さが説明つかない。
リヴィエールの見せる現場でのリーダーシップもその一つの例である。僕自身も現在はいわば現場勤務であるだけに、余計に本書に引き込まれるのかもしれない。
夜間飛行
2020/02/16 11:24
上空と地上のドラマ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
果敢に任務に挑みながら、帰ることのなかったファビアンには胸が痛みます。不測の事態にも屈することのない、リヴィエールの強い意思も伝わってきました。