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赫眼(あかまなこ)
著者 三津田信三 (著)
目を奪う美貌と、小学生とは思えぬ色香(いろか)。転校生の目童(まどう)たかりは、謎めいた美少女だった。学校を休んだ彼女に届け物をしに、少年が訪れた家の奥――そこには、あまりにも禍々(まがまが)しい何かが横たわっていた……。(表題作)合わせ鏡が作り出す無限に続く映像世界。その魔力に取り憑かれた男を襲う怪異とは?(「合わせ鏡の地獄」) 書下ろし掌編(しょうへん)を含む、悪夢のような傑作12編。
赫眼(あかまなこ)
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赫眼
2010/06/07 20:41
たしかに怖い本です。それをよくあらわしているのが、カバー画。私は気付かなかったけど、三津田本といえばこの人だったんですね、村田修・・・
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、ご無沙汰していた三津田信三の作品です。なんていうか、長女が怖がるんです、三津田の話。ついこの間も大学生になった妹に「三津田信三は怖いよ」って教えていました。我が家では、私が読んだ本を夫が読み、次に長女、次女と回し読みをするのが決まりごとになっていますが、なにせ皆それぞれ読みたい本、やらなければいけない仕事や勉強を抱えているので、その本の流れはテキトーに変更されています。
家族全員が読む本、私と夫だけが読む本、私と長女だけ、私と次女だけ、長女と次女だけが読むなど組み合わせはたくさんあります。家族全員が読むの可能性が高いのは今のところ村上春樹と宮部みゆき、筒井康隆、角田光代、桜庭一樹、海堂尊、小野不由美くらいなもので、たとえば藤沢周平と船戸与一、林真理子は私と夫、中村航と京極夏彦、西澤保彦、三浦しをん、嶽本野ばら、J・アーヴィングは私と夫と長女、西尾維新と椎名誠、東海林さだお、S・キングは私と夫と次女みたいになっています。
で三津田信三は私、長女以上の広がりを見せず、なおかつ今は長女が逃げるので自然と足が遠のいていたわけです。ではなぜこの本に手を出したのか。それが村田修のカバーイラストの力です。ともかく上手い。上手さという点だけでみれば、近年まれにみる、といっていい。しかも、キモイ。まさにこの小説にふさわしいといえるでしょう。カバーデザインは斉藤秀弥、カバー印刷が慶昌堂印刷。
で、です。村田修について改めて興味を持ちました。このうまさ、年齢くらいは押さえておきたい。ということでネット検索、なになに、作家自身のHPが開設されたらしい。でそちらを訪問したところ驚愕の事実が・・・。1972年広島生まれ。蟹座。O型。和光大学卒。とまあ、ここまではいいです。問題は次の言葉「小説家・津原泰水の実弟。」げ、私が高く評価している作家の実弟、しかも今までも三津田本のカバーを手掛けていた、気付かなかった・・・
閑話休題。カバー後の内容紹介は
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目を奪う美貌と、小学生とは思えぬ色香。転校
生の目童たかりは、謎めいた美少女だった。学
校を休んだ彼女に届け物をしに、少年が訪れた
家の奥――そこには、あまりにも禍々しい何か
が横たわっていた(表題作)。合わせ鏡が作り
出す無限に続く映像世界。その魔力に取り憑か
れた男を襲う怪異とは(「合わせ鏡の地獄」)。
書下ろし掌編を含む、悪夢のような傑作十二編。
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となっています。目次に従って全編初出と簡単な内容紹介をすれば
・赫眼(『伯爵の血族 紅ノ章』2007年4月):目を奪う美貌と、小学生とは思えぬ色香。転校生の目童たかりは、謎めいた美少女だった。学校を休んだ彼女に届け物をしに訪れた家で少年が見たものは・・・
・怪奇写真作家(「ミステリ・マガジン」2008年8月):女性に紹介されたのは、編集者好みの怪異な写真を撮っているという男。その家を訪ねていくと・・・
・怪談奇談・四題 1 旧家の祟り(書き下ろし):旧家を壊さずに利用しながら保存する、そうして生き延びた家で見かけた不思議な老婆・・・
・見下ろす家(『オバケヤシキ』2005年8月):絶対に一緒に行くと言い張る弟を連れて小学生たちが忍び込んだのは、崖の上から町の人々を見下ろしているような新築の洋風住宅・・・
・怪談奇談・四題 2 原因(書き下ろし):有能なライターが、本来なら半年で書きあがる本に二年もかけてしまったのは、彼を取り巻く状況が・・・
・よなかのでんわ(『闇電話』2006年5月):夜中に友人からかかってきた電話は、あの山に彼が今、いるというものだった。山にある墓地に行ってそのまま帰ってこない作家もいるというあの場所に・・・
・灰蛾男の恐怖(「ジャーロ」35号2009年春号):客がいるのかもよく分からない古い旅館。そこの露天風呂で彼に声をかけてきた老人は、むかし、自分が紙芝居をやっていたと言い・・・
・怪談奇談・四題 3 愛犬の死(書き下ろし):子供ができない夫婦が決めたのは犬を飼うこと。実家にいたポメラニアンを借りてきては可愛がっていたが・・・
・後ろ小路の町家(『京都宵』2008年9月):知人に聞いた話だけれど、これだけは小説にしないでほしいと頼まれた話が気になって仕方がない。その知人が亡くなって彼のもとに手紙が・・・
・怪談奇談・四題 4 喫茶店の客(書き下ろし):喫茶店で本を読んでいたとき、近くに座っていた若い男女の女性のほうが、突然おかしなことを口走り出し・・・
・合わせ鏡の地獄(『未来妖怪』2008年7月):合わせ鏡が作り出す無限に続く映像世界。ホテルに泊まった男が洗面所で聞かされたのは、その魔力に取り憑かれた男を襲う怪異・・・
・死を以て貴しと為す(『幻想探偵』2009年2月):神保町に探偵事務所を構える弦矢俊一郎は、人の死相を解釈し、その原因を突き止め阻止すること。事務所を訪れた男がもつおぞましさは・・・
解説 日下三蔵
となります。どれも甲乙つけ難い出来です。どれが好きとも言い難い、だって全てホラーで、しかもベクトルの方向が基本的に同じなんですから。ま、美少女が登場する表題作「赫眼」がかろうじて少し上、といえそうだし、案外ソフトな感じの「見下ろす家」も好みではあります。それと「灰蛾男の恐怖」ですか。なんだかB級映画『蝿男の恐怖』を思わせるタイトルで損していますが、この和風テイストは嫌いじゃありません。
でも、これだって無理してつけた順番なわけで、基本的にはハイレベル。それを解説で日下は
*
映像と違って、活字で人を怖がらせるのは、非常にハードルが高いのである。その点で本書は、なみいる歴代の恐怖小説集の中でもトップクラスに位置する一冊といえるだろう。
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と書いています、まさに同感なり。
2019/08/03 23:26
これぞホラー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
心霊でもあり、偶然でもあり、精神世界でもあるが不合理そのもの。
どうとでも解釈できるのに、しかしどの解釈も的外れでしかない、因果もその後の判然としない。
それこそ、ホラーや奇談としか呼びようのない、これぞホラーと呼ぶにふさわしい短編ばかりである。
それぞれの挿話はコンパクトだが、行間の緊張感・切迫感はすさまじい。文章は各々のペースで読めるから余計に増幅してくるのである。
各章からその後につながるお話も多い。もっとも断片的な重なりを見せるだけで、たどり着く先は異なるのだが。
『赫眼』がお気に召したら『ついてくるもの』『凶宅』を、
『怪奇写真作家』『旧家の祟り』『見下ろす家』がお気に召したら『わざと忌み家を建てて棲む』を、
『原因』がお気に召したら『怪談のテープ起こし』を、
『よなかのでんわ』『合わせ鏡の地獄』がお気に召したら『七人の鬼ごっこ』を、
『灰蛾男の恐怖』がお気に召したら『魔邸』を、
『後ろ小路の町家』がお気に召したら『蛇棺葬』と『百蛇堂〈怪談作家の語る話〉』を、
『喫茶店の客』がお気に召したら『どこの家にも怖いものはいる』を、
ざっと思いついた順に書き連ねてみたが、いかがだろうか。
読了後になにが起きても責は負いかねるが。
2018/01/16 21:34
安定した怖さ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じん - この投稿者のレビュー一覧を見る
三津田先生の作品を読んだ後は必ず、家の中の物音が気になったり、何か得体の知れないものが訪ねてきてしまうのではないかという不安に駆られます。
赫眼も同じ安定した怖さでした。少女の不気味な描写、少女の家の描写など、とにかく家とか場所の描写が怖いです。病みつきになります。今後も三津田先生の作品をどんど読んでいきたいと思います。