- みんなの評価
4件
平場の月
著者 朝倉かすみ
須藤が死んだと聞かされたのは、小学校中学校と同窓の安西からだ。須藤と同じパート先だったウミちゃんから聞いたのだという。青砥は離婚して戻った地元で、再会したときのことを思い出す。検査で行った病院の売店に彼女はいた。中学時代、「太い」感じのする女子だった。50年生き、二人は再会し、これからの人生にお互いが存在することを感じていた。第32回山本周五郎賞受賞の大人のリアルな恋愛小説。
平場の月
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
平場の月
2021/12/29 16:25
あの頃なんと切ない恋をしていたものか
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第32回山本周五郎賞を受賞した本作は、2018年の刊行以来、「もう若くはない、大人の恋愛小説」と多くの読者の支持を得てきた。
50歳の、中学生の同級生だった男と女が35年ぶりに偶然再会し、恋愛感情を醸し出す時間を描いたこの作品は、ミステリー小説によくある先に犯人がわかっている倒叙形式になっている。
つまり、再会した二人であるが、その前に読者はヒロインである須藤葉子が亡くなるのを知るところから始まる。
なぜ、須藤(この作品では名前ではなく苗字で語られていく。その表現が50歳でありながら、どことなく中学生の幼さを残した恋愛のような感覚をうまく表現している)は死んだのか、その相手である青砥はどんな男性だったのか、二人の心の交差に読者は引き込まれていく。
さらに書くと、須藤は大腸がんに冒されて死んでいくが、これは夫婦の闘病物語でもないし、恋人たちのそれでもない。
いうなれば、中学生の時に想い人でありながらもすれちがった恋人未満の物語といっていい。
それもまた、まるで子供たちの恋愛に似ている。
「大人の恋愛小説」であっても、そのぎこちなさは青春小説に近い。
タイトルの「平場」であるが、著者の朝倉かすみさんはあるインタビューで「世の中のほとんどの人は、舞台の上ではなく平らな場所、平場で生きているわけですけど、そういう人たちの物語」と語っているが、つまりはこの作品は私たちの物語でもあるといえる。
もっとも、須藤が見上げた月はあまりに悲しく、美しすぎるが。
平場の月
2023/06/02 18:44
「ちょうどよくしあわせ」とは
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
大人の恋愛小説として話題になった一冊だが、いわゆる「恋愛小説」と呼ばれるものとは趣を異にする。
物語は、主人公が好きだった人が亡くなったことを知る場面から始まる。
なぜ亡くなったのか、二人はどういう関係だったのか。時をさかのぼって、明かされていく。中学時代の同級生で、距離が近くなっても苗字で呼び合う主人公ふたりの関係がリアル。50歳。ひと通りいろいろ人生経験を積み、体調にも変化が現れるお年ごろだろう。
人と人が引かれ合うという普遍的な現象の中で、闘病の様子やそれに寄り添う様子もまた自然に描かれていて、平場の延長線上で、人間の「生」について考えさせる。
平易な文体ながら、著者のちょっとした表現が巧みで、心惹かれた。
平場の月
2023/03/28 12:45
生きづらさ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナムナム - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分で自分を生きづらくしていると分かっていながらも、
潔くないと思えば意固地を通してしまう。
一切合切を含めて、自分らしく生きた人生ということか。