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妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ
著者 橋迫瑞穂
フェミニズムの「落とし物」がここにある――。今世紀に入り、日本社会で大きく膨れ上がった「スピリチュアル市場」。特に近年は「子宮系」「胎内記憶」「自然なお産」に代表されるような妊娠・出産をめぐるコンテンツによって、女性とスピリチュアリティとの関係性はより強固なものとなっていった。しかし、こうしたスピリチュアリティは容易に保守的な家族観と結びつき、ナショナリズムとも親和性が高い。本書は、この社会において「母」たる女性が抱く不安とスピリチュアリティとの危うい関係について、その構造を解明する。
【森岡正博氏、推薦!】
「子宮系、胎内記憶、自然なお産。女性たちのスピリチュアルで切実な思いを分析した画期的な本だ。」
妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ
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妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ
2022/08/20 02:13
けっして読みやすい本とは言えないけれど
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルクハイト - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネット上にある、スピ系(特に子宮系)を非難する記事やブログを読んでました。しかし、読み続けるうちに、(いくらその教祖や信者が滑稽な存在であるにせよ)あまりの口汚さや罵倒ぶりに辟易としていました。
そんなときに橋迫先生の本とツイートに出会いました。
占いやスピリチュアリティ、あるいは反ワクチンなどにはまってしまう人たちを見下したり、馬鹿にしたりすることなく(それでいて決して賛同しているわけではない)冷静に論じている姿勢に、視点の鋭さだけでなく、真の優しさと生真面目さを感じます。
この本を論じたとあるブログをきっかけに、何かとうとう裁判まで起こされてしまったようですが、各種文献や論文を読み込んで文章を書き上げる研究者と、テキトーな取材、調査でコタツ記事を粗製濫造するwebライターとその編集者では、そもそも住む世界が違い、話が噛み合わないのでしょう。
批判封じ込めが目的としか思えない、スラップ訴訟まがいの裁判には屈しないでほしい、と一人のファンとして願っています。
妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ
2021/09/05 22:38
これほどのスピリチュアル事例があるとは
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに惹かれて購読しました。
妊娠・出産に関して、これほどたくさんのスピリチュアルの事例があることを知れたのは、勉強になりました。
知っているスピリチュアルもありましたが、中には名前だけ知っていたものが、まさか胎教に関連するものだったのか!という事例が、私にはありました。
そして、妊娠・出産について、世の女性が不安で、これほどスピリチュアルにすがることも学べたことが、男の私には当書を購読して良かったと思っています。
妊娠・出産をめぐるスピリチュアリティ
2021/11/05 19:40
社会が母親に強いる重圧
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
妊娠・出産は、どんなに努力してもどんな策を練っても、思い通りにいくものではない。それだけに、妊娠も出産も、神秘的であり、スピリチュアルなものと結びつきやすいのも何となく分かる。
社会学者の著者は、近年拡大している「スピリチュアル市場」について、妊娠・出産に関するものを分析していて興味深い。
こうしたスピ系のコンテンツは、「非科学的」と断罪することもできる。しかし著者は「それを批判的な観点に限定した形で取り上げることはしない」と最初に書いている。それは「時に女性たちを「無知な存在」とみなしてジャッジするような権力関係を発生させる可能性をはらんでいるからである」という。
さまざまなコンテンツが紹介されているが、読んでいると、日頃スピ系でない人(科学的で論理的な人)も、胎内記憶や胎教、自然なお産や母乳育児などを入り口に、スピリチュアルな世界に引かれていく理由(過程)が理解できる。これらは女性の身体に価値を見出し、肯定している。
世間の母親に対する視線は厳しく、「母として」あるべき姿を求められるなど、重圧は大きい。母になれば、自らの進退も大きく変化し、キャリアにも影響する。子どもを「いい子」に育てることへの責任も、母親の方にずっしりとのしかかっている。
母であることに新たな価値を見出し、母であることを肯定しなければ(肯定してもらわなければ)、生きていけない。
そんな社会を逆照射しているのだと思う。
文章自体は読みやすくはないが、類書はない。いろいろな発見があった。「フェミニズムが取りこぼしてきたもの」という指摘にも納得だ。