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安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ
著者 尾中香尚里
コロナ禍の今、日本は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以来の国家的危機に直面している。この歴史的な国難に対して、当時首相であった安倍晋三と菅直人はどのように対処したのだろうか。危機に際して国民に何を語り、国民をどう守るかは政治家の最優先事項であり、時の政府の姿勢は、国民に対する本音を浮き彫りにする。安倍元首相は常々、民主党政権を「悪夢」と呼んでいたが、はたして安倍政権は菅直人政権をこんなに非難できるほど優れていたのか。そこで、両者の「危機の認識力」「国民への言葉」「権力の使い方」「補償」など個々の対応を徹底比較し、危機における、あるべきリーダーシップを考察。最後に安倍政権を引き継いだ菅(すが)政権のコロナ対応も評価する。10年前の記憶・記録を掘り起こすことで、今の自民党政権の“実態”が明らかになる!
安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ
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安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ
2023/03/27 22:17
責任取った 菅直人首相 責任取れず 安倍首相
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
COVID-19(新型コロナウイルス)への対応がうまく行かなかったからか、潰瘍性大腸炎の再発ゆえか(筆者(=清高)は疑わしいうえに、そうである証明が不十分なことに加え、本書pp.274-277のような非難やむなしと思う)、安倍晋三は内閣総理大臣を辞任した。一方、新型コロナウイルス対策は「『歴史的緊急事態』」(p.300)とされたが、その文言で(筆者が)思い出すのは、東日本大震災である。東日本大震災に関する情報は、安倍が流したデマもあれば、当時の民主党政権に批判的なものが多かったが、当時民主党政権を取材した尾中香尚里にとっては、正しい情報が伝わっていないと判断している。そこで本書は、「『歴史的緊急事態』」である、菅直人政権の東日本大震災の対応と、安倍政権の新型コロナウイルスの対応を比較し、政治的な責任の取り方を追求する。
2.評価
(1)筆者の記憶では『週刊エコノミスト』で取り上げられており、菅政権に甘いという趣旨のレビューを見たが、尾中のプロフィールの限りでは仕方がないと思う。筆者の想像になるが、取材対象が民主党等の野党である場合が多く、民主党等の野党批判者よりより正確に物事をとらえる、または情が移るということがあるからである(筆者の見立てでは、本書の場合、前者のイメージが優勢)。
(2)それにも関わらず、本書は5点とする。浜岡原子力発電所の停止要請においては、当時の菅政権は法的根拠があいまいなまま行われていたことが書かれているが、それがあっても菅政権は現行法の枠組みに則った解決を模索し、加えて政治的責任を取っている様が描かれている。一方、安倍政権は「法的根拠のない『要請』」(p.84)を乱発したことに加えて、政治の責任になる「『補償』」(一例:p.200)には及び腰であるし、国家の危機管理としてはあり得ない(理由はp.271にある)健康問題を明らかにしてからの辞任という、政治的な責任をとろうとしない様が対比されており、読者に新たな視点をもたらす本と思われるからである。
安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ
2021/11/29 13:12
比較するのは難しいが
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
10年前の東日本大震災の記憶は薄れてきている。現下のコロナ禍はいまだ進行形だ。災害の形態は異なるが、危機管理面から国のトップの首相のリーダーシップについて時系列で整理しながら、当時の首相を比較論考している。
10年前の災害では福島原発事故が最大懸案の一つともいえる。当時の菅首相の行動について議論が一悶着あったが、背景には東京電力の対応や原子力保安院など原発ムラを仕切る面々との葛藤があったという。当時野党だった自民党は批判したが、安倍・管議員の発言はデマ情報であったり、議事録の未作成などは今になって自らに還ってくるものもあった。
コロナ対応では後手後手の失策続きとも言えるようだ。確かにこのようなパンデミックは日本では経験値が乏しく、誰がやっても難しい問題だ。しかし、世界中の他の国のリーダーの言動や対策と比較すれば違いがわかる。安倍元首相は結局体調不良を理由に辞任したのだが、ほどなく政治活動を復活している。どう見ても投げ出したとしかみえない。しかも2度目だ。危機に際して判断力・決断力が足りず、混乱の中、体調不良を理由に逃亡する。リーダーとして危機管理能力を疑われると判断してもよいのだろう。せめて、時々刻々変化する状況をしっかりと説明し、対策結果の如何を問わず、国民に納得してもらうよう説明する姿勢があればよかった。
本書では2つの危機について時系列に整理されよく振り返ることができる。旧民主党政権を悪夢と標榜して止まなかった安倍首相だが、もし10年前に同議員が政権を担っていたら、福島原発事故はどうなっていただろうか。さらに悲惨な結果しか想定できない。
著者は述べている。『政治権力は行使したいが、政治の責任は取りたくない。安倍晋三、管義偉政権にもそんな思惑が透けて見える。だからこそ2人の首相は、政治の責任によって塗炭の苦しみの中にある国民を平気で放置して、自分だけはさっさと政権を投げ出すことができたのだ。』
また、安倍元首相の辞任後2ヶ月半後のインタビューの内容にふれて、
『具体的な判断の根拠を語れず、小池知事のような他者は批判し、自分のことは「まあ」よくやった」的に肯定するだけの言葉の羅列。筆者はかすかな不安を抱いた。・・・・10年後、安倍晋三という政治家は、コロナ対応についてどれだけの言葉を残せるだろうか。もしかしたら、もう何も覚えていないのかもしれない。あるいは「「頑張った」自分の美しい記憶」しか残っていないのかもしれない。』
悲しいが、同感する。
安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ
2021/11/18 11:46
安倍晋三政権と菅直人政権を同じ舞台で比較&菅直人政権擁護の内容
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
安倍晋三政権の新型コロナ政策と、かつての菅直人政権の福島原発事故政策の悪いところを、元新聞記者の著者が辛辣に指摘した1冊です。
時系列的に約10年の差がある両政権を、同じ章で取り上げるという独自の文面で比較している点は、読み進めて目からうろこが落ちるように視点が広がりました。
一方で、どちらかというと安倍晋三政権より菅直人政権の批判が少なく、著者は菅直人政権擁護派だな、という印象が強かったです。
紙幅が300頁を超え、値段も税込みで1,000円を超える新書ですが、読む価値は十分にあります。