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3件
いい子のあくび
著者 高瀬隼子
芥川賞受賞第一作。
公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人を除けてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?「割りに合わなさ」を訴える女性を描いた表題作(「いい子のあくび」)。
郷里の友人が結婚することになったので式に出て欲しいという。祝福したい気持ちは本当だけど、わたしは結婚式が嫌いだ。バージンロードを父親の腕に手を添えて歩き、その先に待つ新郎に引き渡される新婦の姿を見て「物」みたいだと思ったから。「じんしんばいばい」と感じたから。友人には欠席の真意を伝えられずにいて……結婚の形式、幸せとは何かを問う(「末永い幸せ」)ほか、
社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たちへ贈る全3話。
いい子のあくび
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いい子のあくび
2023/08/02 17:44
いい子もつらいんだ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
他人(ひと)の気持ちなどわかるはずがない。
何故なら、自分の気持ちでさえわからないのだから。
だから、他人(ひと)とどのように接していいのかわからない。
そんなこと素直に言える訳ないのだが、
そんな感情をすっと書けてしまうから、高瀬隼子(じゅんこ)という作家は
読者を引き付ける。
高瀬さんの作品を読んで、うなづいている読者は多いのではないだろうか。
この『いい子のあくび』には、表題作である中編「いい子のあくび」のほか、
短編「お供え」「末永い幸せ」の2篇が収録されている。
表題作「いい子のあくび」は、高瀬さんが『犬のかたちをしているもの』で
2019年にすばる文学賞を受賞後第1作として発表された作品。
つまりは芥川賞を受賞した『おいしいごはんが食べられますように』より前の作品にあたる。
高瀬さんがあるインタビューで、
「むかつきながら書いていた」と述べているが、
そういった作者の感性がストレートに出た傑作だと思う。
主人公は子供の頃より「いい子」として育った直子。
会社員として働き出しても、彼女は「いい子」であり続ける。
しかし、その一方で内面では下品な言葉を発す、時にそれをノートに書きとめたりしている。
直子はスマホを見ながら歩いてくる人間が許せない。
「いい子」の彼女はそんな人間が来たらよけるが、
もう一人の彼女はそんな人間がいたらよけずにそのままあたる。
悪いのは、スマホに夢中に顔を上げない人間ではないか。
そういう「むかつき」は彼女の周りにあふれている。
「いい子」はそんな「むかつき」を隠そうとするが、
直子の「いい子」という仮面はついにやぶれてしまう。
高瀬隼子さんが描く世界は表題作だけでなく、
他の短編もまた多くの共感を呼ぶだろう。
私も、実は、そうなんだと。
いい子のあくび
2024/04/26 16:50
いい子だってやさぐれる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
真面目でそこそこの容姿で働く直子。教諭の恋人がいて、職場での受けもよくて、友だち付き合いもあって充実しているかのようだが、心の中では呪詛の声をあげている。
いい子だって人間、聖人君子ではない。でもいつもと違って、ながらスマホを避けなかったら……。癪に障るが慣れないことは難しい。
いい子のあくび
2024/04/29 19:48
この負の感情は、人の中でどんなふうに形成されていくのだろう。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
少なくともSNSの影響は計り知れない。「いい子のあくび」とはうまく言ったものだ。仕事の時に私もしたことあるよ。でもそういう、ちょっとした気遣い、我慢、人に言うまでもないことを溜め込んで、全く関係のないところで言葉にしないで体でぶつかっていったら、びっくりする。ぶつかったるって思っていい。思っていいけど、それを実行する前にできることがあるよ、言葉とか合図とか、他人じゃなくて、その人に思ったことはその人に伝えないと、後悔することになる。

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