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15件
終わらざる夏
著者 浅田次郎 (著)
1945年、夏。すでに沖縄は陥落し、本土決戦用の大規模な動員計画に、国民は疲弊していた。東京の出版社に勤める翻訳書編集者・片岡直哉は、45歳の兵役年限直前に赤紙を受け取る。何も分からぬまま、同じく召集された医師の菊池、歴戦の軍曹・鬼熊と、片岡は北の地へと向かった。――終戦直後の“知られざる戦い”を舞台に「戦争」の理不尽を描く歴史的大作、待望の文庫化。第64回毎日出版文化賞受賞作。
終わらざる夏 下
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終わらざる夏 上
2016/11/16 09:37
題名の“終わらざる夏”は、終戦処理が本当に終わったのか、戦後の復興は正しく行われたのかという、問いの様に思われてならない。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
終戦後にソ連の侵攻を受けた占守島(シュムシュ島)を主要なテーマにしているが、著者の意図は、絶望的な戦争遂行への一般市民感情(特に実際に徴兵される人間の家族感情)、戦争が終わった後に戦死公報を受け取ることになる人々の悲しみ、更には終戦直前に突然参戦して満州方面で暴虐の限りを尽くしたソ連の行為などを一国民の目から記録しておくことにあったのではと思う。確かに、軍国主義路線に国民もこぞって加担して戦争に突き進んだ責任は国民全員にあることは否定できないが、家族を失う悲しみは全ての人に共通のものであり、生きて帰りたいと思うのは一部の職業軍人以外の全ての人の思いであろう。一部には、空想的な美談じみた脚色もあるが、多くの人々の普遍的な願いを戦争の理不尽さが鮮明に表れてきた終戦前後を舞台に綴った傑作であることに疑問はない。なお、題名の“終わらざる夏”は、終戦処理が本当に終わったのか、戦後の復興は正しく行われたのかという、問いの様に思われてならない。
終わらざる夏 上
2016/05/14 22:51
すごい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しぶたこにゃーすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすがの浅田次郎さんとしか言えません。
北海道に縁があるので、この時代のことを詳しく知りたくて読みはじめました。色々な葛藤・感情・風景が入交り情景が目に浮かぶほど鮮明に心に響きました。老若男女読んで欲しい作品です。
終わらざる夏 下
2014/10/27 10:51
戦争末期の北方領土で、何があったのか
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
今日に至るまで、一向に解決を見ぬいわゆる「北方領土」問題。かの四島は有史以来、日本以外の国の領土になった事は一度もない事はご存知でしょうか。さらには日露戦争や賢明なる外交(樺太との交換条約等)の結果、四島からはるか北、カムチャッカ半島直前の占守島(シュムシュ島)まで、千島列島は全て日本の領土に納められた。しかし大戦末期、その地域全てをソ連に実効支配下に置かれてしまい、今日に至っているのです。では一体あのときあの地域で、何が起きたのだろうか。それをこの下巻では、物語の中で詳しく語っています。
こういう非常に大事な「史実」を、わざわざ勉強しようとは中々思えないもの。しかし物語として読ませてもらえるというのは、とても有難い事だと思う。参考書を読んだだけでは、そこで起きた事実が語られるだけで記号のようになってしまう。しかし物語仕立てにして幾種かの感情と共にその史実に触れられれば、さらに良く記憶に残るし、また忘れる事もないでしょう。
一言でまとめてしまえば、とても「悲しい」物語です。でもそれが、「史実」なのです。日本が連合国に降伏をした後、一方的に日露和親条約を放棄して宣戦布告をし、北の領土に乗り込んでくるなんて。そしてまた悲しい戦争を起こして両国兵士を何千人も殺してまで、領地を争わさせるなんて。そこで圧勝した日本軍、それでも敗戦国に「勝ち」はあり得ない。やがて降伏した日本軍兵士全てをシベリアに送り、拷問の日々を送らせるなんて。そんなバカな事が、あっていいわけないのに。でも戦争では、まま起こりえる。「あっちゃいけない」事が、まま起こりえる。だから、戦争はしちゃいけない。そう痛感出来る一冊。だから老若男女を問わずに、ぜひ読んでもらいたい作品です。