絞め殺しの樹
あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ。
北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。
「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」
今まで疑問にも思わなかったことが、端的に口をついた。聞いてもどうしようもないことなのに、知りたいという欲が泡のように浮かんでしまった。
「乳癌だったの。発見が遅くて、切除しても間に合わなくてね。ミサエさん、ぎりぎりまで保健婦として仕事して、ぎりぎりまで、普段通りの生活を送りながらあれこれ片付けて、病院に入ってからはすぐ。あの人らしかった」(本文より)
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紙の本絞め殺しの樹
2022/07/31 19:54
呪縛から逃げろ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一部はミサエの子供時代から結婚して子を失うまで。
子供時代は吉岡家に引き取られ、使用人として過酷な時間を過ごし読むのが辛い。
根室に戻って保健師として活躍しやっと報われる人生が得られたと思ったが、結婚してからがまた大変。
特に道子との関係がきつい。
第二部は養子に出した雄介の出番。
吉岡家、小山田家に巻き込まれながら、北大に合格した雄介。
本当に卒業して吉岡家に戻るのか?
残念ながら直木賞は受賞出来なかったが、読み応えがあり、一気に読んだ。
紙の本絞め殺しの樹
2022/11/17 15:10
ヘビーとしか言いようのない作品
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
直木賞候補の話題作。気合いを入れて読まないと押し潰されてしまいそうな、ヘビーとしか言いようのない作品でした。舞台の根室はこの作品の後、平成になってから人口減少が激しく、雄介の「その後」に想いを馳せながら読み終えました。
紙の本絞め殺しの樹
2021/12/06 20:13
締め殺し
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
「締め殺しの樹」といういかにも重そうな題名ですが、内容も重苦しく読んだ後に苦しくなるような本でした。悲しさややりきれなさ、理不尽さが胸に迫り、読み応えがあります。
紙の本絞め殺しの樹
2022/03/29 01:25
つらい……
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいて辛くなることや苦しくなるシーンが多すぎて……。今の日本の発展は、こういう辛苦をなめて生きた方々の上にあるのですね……。ちょっと……読み返す気には、ならないです