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5件
猫と庄造と二人のおんな
著者 谷崎潤一郎 (著)
一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。人間の心に宿る“隷属”への希求を反時代的なヴィジョンとして語り続けた著者が、この作品では、その“隷属”が拒否され、人間が猫のために破滅してゆく姿をのびのびと捉え、ほとんど諷刺画に仕立て上げている。
猫と庄造と二人のおんな
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2024/10/04 16:04
文豪、昭和11年発表の中篇、さすがだニャア
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ
庄造という人がいいのだけが取り柄のような男と、妻・福子と前妻・品子の三角関係の話かと思って読み始める、ところが途中からさにあらず、二人の女より庄造の脳内ではリリーという猫の方が上位を占めていたのだ、となると四角関係も成立せず、庄造とリリーの関係に焼餅をやく二人の女という図式ができあがってしまうのである。猫を利用して男の気持ちをこちらに惹きつけようとする二人の女(私にはそんな値打ちのある男とはとても思えないのだが)、しかし二人の女よりもリリーの方が上手、さすがは10年生きている老猫だ。文豪の手にかかると猫の「ニャア」という泣き声だけでも可愛らしさがにじみ出てきそうに思えてくる、文豪、昭和11年発表の中篇、さすがだニャア
猫と庄造と二人のおんな
2021/06/08 20:31
猫と庄造と二人のおんな
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
男が美的性質を持つ女性に徹底的にかしずき、尽くし抜くという印象がある谷崎文学だが、この小説では猫のリリーを愛する怠け者の庄造という男に対し、庄造に身一つで追い出された元妻の品子が、庄造の新しい妻に手紙を出してリリーを引き取り、それに庄造がやきもきするという内容である。
結婚していた頃は、リリーを愛していたのは庄造だけで、品子はむしろリリーを毛嫌いしていたのだが、一緒に暮らす上で馴れてきたリリーを可愛がるようになる。この変化が詳しく記されているが、これは猫を飼っていた自分としても良く分かる。
大の大人がたかが猫にここまで喜怒哀楽を見せるのは滑稽かもしれないが、私には理解できる事が多かった。ひょっとしたら、これまで変態的だと感じていた谷崎文学も私の人生経験が足りないだけでわかる人にはわかるのかもしれない。
猫と庄造と二人のおんな
2020/10/20 20:32
猫と二人の女との対比が面白い。
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
猫が主人公かと思いきや、二人の女、いやいや主人公は結局庄造でしょう。ん?微妙です。読み手が読み手なりに解釈すれば良いと思います。
私自身が本書で面白いなぁと感じたのは猫に関する描写でした。まるで今目の前にリリー(本書に登場する猫の名前です)がいるかのようです。谷崎潤一郎の筆のなせる技ではないでしょうか。
また猫を通じて描かれる庄造、福子、品子・・。猫を通してしか分からない人間模様が絶妙です。