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私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―(新潮選書)
著者 諸富徹 (著)
市民にとって納税は義務なのか、権利なのか? また、国家にとって租税は財源調達手段なのか、それとも政策遂行手段なのか? 17世紀の市民革命から21世紀のEU金融取引税まで、ジョン・ロックからケインズそしてジェームズ・トービンまで――世界の税制とその経済思想の流れを辿り、「税」の本質を多角的に解き明かす。
私たちはなぜ税金を納めるのか―租税の経済思想史―(新潮選書)
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私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史
2016/04/20 09:27
パナマ文書で明らかになったグローバルタックスの必要性
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タックスヘイブンや金融の不透明さにかかわる問題がジャーナリストによって取り上げられてはいる。しかしパナマ文書が明らかにしたように、政治・金融エリートたちが行う資産隠しが問題となっている。パナマ文書の教訓に耳を傾け、金融の不透明さに立ち向かうために、本書はとても参考になる。
私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史
2015/03/24 11:13
租税の理念と原理を理解するための基本書
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:相如 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本で増税問題、特に消費税の増税の問題に対する関心は、一般的にかなり高いと言えるが、その議論の質については、関心の高さに見合ったものとはとても言えない状況にある。一方では、増税を回避すると財政破綻まで一直線であるかのような議論があるかと思えば、他方では増税で経済が瞬く間に崩壊するかのような議論がある。まさに時の人であるピケティが来日した時に、対談した日本の政治家やエコノミストたちが、格差や再分配の問題そっちのけで、消費増税問題に異常な執着を示していることに閉口していたことは記憶に新しい。
本書は、そうした日本の税をめぐる健全とは言い難い言論状況に抗する形で、なぜ国民は税を負担しなければならないのかという、根本的な問題に敢えて立ち戻ろうとするものである。本書の著者は税制を専門とする財政学者であるが、これまで財政学の本と言うと、経済統計や租税制度に関する細かな記述が続き、素人にとって読み進めるのが困難な本が多かった。しかし本書はそうした類書とは異なり、そもそも税を負担する理念や原理は何であるのかという誰もが理解可能な問題意識を出発点に、所得税を中心とする近代的な租税制度が成立していく歴史的プロセスに即して明らかにするものである。
所得税制度の発祥地であるイギリスは、ロックなどの社会契約論に由来する、国家に対して私有財産権などの資本主義的な合理性の保障を求める「権利」としての租税が、後発国家であるドイツでは、ヘーゲルの有機的国家観に代表される、国家の経済に対する規制的な役割を強調する「義務」としての租税が、アメリカでは共和党・民主党の二大政党の政策論争を背景に、社会政策を実現する手段として租税が位置付けられ、特に世界恐慌後にローズヴェルトは累進課税や法人税などを富の集中を解消する手段として採用していった。
そして最後に、1970年代以降の金融自由化とグローバル化によって、所得税のフラット化と逆進的な消費税への依存が高まるととともに、度重なる通貨危機を抑制する手段として、トービン税の可能性(および限界)について解説を行っている。その他にも、租税における財源調達手段と政策手段との間の矛盾や、課税における居住地原則と源泉地原則の違いなど、租税の基本的な原理の問題についてわかりやすく説明されている。
本書を読むと、いかに私たちが税に関する基本的な原理を何も知らないまま、目の前の増税の是非という視野の狭い問題ばかりに拘泥し、中途半端な知識で無責任な「政策提言」を弄んでいるのかを反省せざるを得ないだろう。例えば消費税の逆進性を批判する人は多いが、ではグローバル化という制約の中で、それに代わる社会保障の安定財源が何であるのかを、真剣かつ丁寧に考えている人がどれだけいるか、非常に疑わしい。
本書を通じて理解されるのは、税制は一握りの政治家や経済学者、財務官僚などの天才的発想あるいは陰謀などによってではなく、様々な政治的な文脈や社会的な制約を受ける中で作られていることことである。それゆえ、あるべき税制や税負担の配分のあり方については、あらかじめ正しい結論というものは有り得ず、その議論を常に民主的に開いていくことが必要になる。そういう当たり前の認識から、税の問題が語られていくようになることを望みたい。
私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史
2018/06/04 13:37
税金の機能史
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
税金がどのように発生し、どういう社会状態からできたのかを最初に簡潔に述べてある。そして、税金の支払いに対し一定の主張を行う。その後、現在までにおける税制についてその歴史をたどりながら、税金のあり方について考察している。
本書ではグローバル化時代の税制についても考察しており、財政破綻がささやかれている今日の日本においては学ぶところは多い。ただし、あくまでも税制概論と言ったところである。読みやすく経済の知識もあまり持ち合わせていない人でも理解できる。税金を考える上での最低限の知識が詰まっている本だと思われる。