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華岡青洲の妻(新潮文庫)
著者 有吉佐和子 (著)
世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功し、漢方から蘭医学への過渡期に新時代を開いた紀州の外科医華岡青洲。その不朽の業績の陰には、麻酔剤「通仙散」を完成させるために進んで自らを人体実験に捧げた妻と母とがあった――美談の裏にくりひろげられる、青洲の愛を争う二人の女の激越な葛藤を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮彫りにした女流文学賞受賞の力作。
華岡青洲の妻(新潮文庫)
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華岡青洲の妻 改版
2024/01/19 07:17
昭和の名作は令和に読んでも面白い
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「広辞苑」は言葉の意味だけでなく、人名辞典としても使うことができる。
有吉佐和子さんの名作『華岡青洲の妻』の主人公でもある「華岡青洲」について、
「広辞苑」ではこう説明されている。
「江戸後期の外科医。紀伊の人。古医方を学び、後に漢・蘭医方を折衷し、
外科学の改善に功があった。麻酔剤を案出し、日本で初の麻酔手術に成功。」
有吉さんの作品では、説明の後半箇所、「麻酔剤を案出」のために青洲の実験に協力した
母親於継(おつぎ)と妻加恵(かえ)の壮絶なまでの葛藤を描いている。
この作品は1966年に発表され、有吉さんはこの作品によって第6回女流文学賞を受賞。
本もベストセラーとなり、映画だけでなくドラマや舞台でも毎年のように上演されていく。
作品が発表されてから半世紀以上経った今読んでも、面白い。
その気品と知性の豊かさで評判であった於継は、幼い加恵にとっても憧れだった。
成人した加恵をある時於継自ら、息子雲平(のちの青洲)の嫁にもらえないかと訪ねてくる。
憧れの於継とともに暮らせる、その喜びに加恵の心は打ち震える。
ところが、雲平が修行先から戻ってくると、於継の態度は一変する。
ここから、姑と嫁との壮絶な戦いが始まる。
青洲の麻酔剤の実験に自ら名乗り出る姑、嫁も負けじと自分をもと訴える。
そんな二人の戦いを静かに見ていたものもいる。青洲の妹である。
結婚もせず年をとった彼女は死病に冒されながらも、最後に言い放つ。
「嫁にも姑にもならないで、仕合せであった」と。
姑と嫁の確執は今でも存在する。
有吉さんの作品は、そのことを俗ではなく、文学として冷静に見つめている。
まさに昭和の名作だろう。
華岡青洲の妻 改版
2023/10/01 11:40
人の描き方に引き込まれた
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろろろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧しい医家の美しく聡い於継に幼い頃から憧れ、於継に望まれて嫁ぎ、心満たされる日々。
夫が遊学から帰ってくるとそれは一変し徐々に憎しみの感情へ。
直接的な言葉も嫌がらせもない。むしろ相手を互いにいたわり合い、負の感情を腹に沈める。美しい和歌山ことばがかえって憎しみを一層際立たせるような。
姑の視点、嫁の視点によって、見え方は違ってくるので、何度読んでも発見がありそう。
文章が流麗で、言葉の選び方も素晴らしい。
いつまでも残る名作だと感じた。
2017/10/27 08:22
日本が世界に誇る外科医家族の物語
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
姑嫁の確執ということで知られているが、世界ではじめて全身麻酔による外科医手術を手がけた医者の物語であり、動物実験、人体実験の描写はおそろしい気がした。それにしても昔は早世する人が多かったと感じた。紀州弁ははじめて読んだが、今でも地元ではそのような話し方をするのだろうか。