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19件
ボトルネック(新潮文庫)
著者 米澤穂信
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した……はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
ボトルネック(新潮文庫)
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ボトルネック
2009/11/01 12:23
自分の存在がボトルネックだと知ったら
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
異相世界への平行移動という設定はよくあるのですが
本作品では、人間の存在意義を問います。
それを高校1年の幼く繊細な精神をグラグラと揺らします。
もうひとつの世界では、流産だった姉サキが生まれ、
子どもはふたり、と両親は決めており、
サキの前に兄がいるため、
嵯峨野リョウは生まれませんでした。
そして、リョウの世界の、不仲の両親、母親の虐待、
交通事故で意識のない兄などはなく、
明るくサバサバしたサキによって、
もうひとつの世界は小さなイイコトが発生しています。
この現実をつきつけられたリョウのショックは大きく、
さらに彼は二年前に東尋坊で死んだノゾミが生きていて、
一気に別の彼女の側面を見ることになります。
自分の存在意義など考えるまでもないですし、
そんなことを考え始めれば、誰もが不安になるはずです。
その不安をこの小説は突きつけてきます。
生きにくさや不運などをすべて受け入れて
生きてきたはずのリョウは
その生き方そのものを否定されます。
実は「ボトルネック」となっていたのは
自分自身だと気づきます。
現実を変えようとしなかった消極さを
ごまかして生きていただけでした。
米澤穂信はまた、作品を発表するごとに
古典的な小説手法を踏襲するのですが
この作品ではリドルストーリーに挑戦しています。
これが成功しているかどうかはわかりませんが
ただ前向きに変化するリョウよりも、
このようなラストが似合うのかもしれません。
ボトルネック
2019/02/16 17:30
異空間の世界に入り込む
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤穂信の初期の作品である。これを読んで米澤の発想は面白いと思った。自分が生まれていなかった世界にワープするなどは、あまりにSF的で詰まらないと思わせるものだ。しかし、そこを我慢すると後は興味深い世界が味わえる。ワープの仕方などはあまりにステレオタイプでやれやれと思う。問題はその後である。
自分が生まれなかった世界に忽然と現れる自分。そういう世界にワープしたとは思わず、帰宅したが誰もいないはずの自宅には、見知らぬ若い女性がいた。お互いにお前は誰だと驚きと自己防衛で喚きあう。この辺りから読者は引き込まれてしまう。これから何が起こるのか? 相手の若い女性は一体何者なのか? という疑問である。
タイムマシンとは異なるが、異空間と言えば異空間である。タイムマシンであれば、時間の経過とともに様子が分かってくるのだが、話が合うこともあれば、合わないこともある。全く異空間でどのように生きていけばよいのか苦悩する主人公である。
この2つの別の空間では実在する人物も同じである。同じというのは名前や年恰好が同じということで、当然主人公から見ればすでに顔見知りだと思う。ところが、相手は自分が誰だかわかっていないように思われた。ますます、理解しがたい世界に映るだろう。
この小説もミステリーというのだろうか? まことに不思議な世界を見たような気がした。続編も読みたいところであるが、やめた方がよさそうだ。
2024/10/09 10:11
不思議な世界
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分が生まれた世界と生まれなかった世界が描かれている。 生まれた世界には戻りたくないかなというラストが印象的だった