- みんなの評価
7件
ボートの三人男
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
ボートの三人男 改版
2011/12/20 20:40
これぞ英国人の笑い。アメリカ人の作品にみる下品な大笑いはありませんが、皮肉に富んだ笑いならたくさんあります。まして訳者が丸谷才一で、解説が井上ひさし、おまけにカバー画が和田誠だなんて、豪華・・・
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
前々から、といっても2004年からですが、気になって仕方のない本がありました。それがこの『ボ-トの三人男』です。で、なぜ2004年かといえば、この年にコニー・ウィリス『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』が出て、私はそれをそこそこ楽しんだのですが、その本の紹介分のなかに
*
ジェローム・K・ジェロームのユーモア小説『ボートの三人男』にオマージュをささげつつ、SFと本格ミステリを絶妙に融合させ、ヒューゴー賞・ローカス賞のほか、クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したタイムトラベル・ユーモア小説。
*
という言葉があるからです。私は、古典や準古典といった作品よりは、あくまで現代小説というか現存作家が書いた小説をリアルタイムで楽しむことをモットーにしていますが、一応、アンテナだけは張っておいて、今こんな本が評判だとか、売れているという情報だけはつかんでいるつもりでした。ましてユーモア小説には目がない、というか、それだけで評価する部分があるわけです。
ところがです、本を読みだした高校時代以降、2004年までジェローム・K・ジェロームという人名も『ボートの三人男』という書名も一度として私の情報網に引っかかってこなかった。たとえば、この文庫も初版は1976年7月10日とある。しかも2007年で23刷も増刷しているわけで、この私が気づかないはずがない。でも、気づかなかったというか全く知りませんでした。
ですから、ウィリスの『犬は勘定に入れません』から想像するに、そんなには面白くないだろうと思い込んで、『ボートの三人男』にあたることを先延ばしにしてきたわけです。ただ、ネットで見ていると面白いのですが、『犬は勘定に入れません』から『ボートの三人男』へと流れる読者がとても多い。ま、SF読みでない私にとってウィリスと聞いてもピンときません。
でも、「本の雑誌」などでウィリス作品の評価は高いわけです。10年近く前に出た『航路』は絶賛に近かったし、『犬は勘定に入れません』の作品の姉妹編に当たるという『ドゥームズデイ・ブック』(未読)などは、SFファンならば無条件で飛びつくヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞という三賞を受賞しているわけです。だからウィリスということで『犬』に飛びつき、その元ネタ本ならきっと面白いに違いないと判断したと思うのです。
で、私も遅ればせながらの読書ということに相成りました。で、ともかくカバーが素敵です。もう色だけで楽しくなっていまうのですが、線にも味があります。誰の手になるのやらと確認すれば、池田満寿夫です。ちなみに、私が手にした本は1992年版。実は、この素晴らしいカバーも2010年の新装にともなって、和田誠に変わっっています。
池田の軽妙洒脱なスケッチもですが、和田のコミカルな絵の魅力もいい。ただし、池田によって描かれた人物は、イギリス人というよりはフランス人のような雰囲気もあって、そういう意味では和田のほうが小説にはあっているのかもしれないとは思いました。ただ、全体の色合い、とくにほんのりお酒で染まったような雰囲気は、池田に軍配かな、なんて思ったりもします。
で、面白かったです。イギリス特有のドタバタで、派手な騒ぎではありませんが、じっくり読むともう滅茶苦茶です。簡単そうな旅が、思い付きで大冒険になる。夜の散歩が、軽い一杯が、ジャングルの彷徨に、泥酔の果ての大混乱になります。それでいて、友情は損なわれません。私ならとっくに怒って絶交になるはずなのに、一夜明ければ次の計画に余念がありません。
歴史が生んだ国民性もあるでしょう。作品が書かれた当時の社会の豊かさもあるかもしれません。この余裕なくしてモンティ・パイソンもなければ、ミスター・ビーンもないかもしれない。フロストだって小説に登場していなかったかもしれません。映画にしたら(なっているのでしょうが)会場はクスクス、ケラケラ笑いが絶えないのではないでしょうか。
無論、子供にはピンとこない。でも、これを楽しんでいる親を間近に見て入れば、子供の社会の見方も変わってくるはず。でも、その英国での若者の暴動騒ぎを見れば、そんなことも言ってはいられません。もしかすると、あの暴動の背景には、英国人が『ボ-トの三人男』を読まなくなっている、あの楽しさの背景にあった心のゆとりをうしなっているということがあるのかもしれません。ここらは、現代英国でこの本がどう読まれているのか調査をしてほしいところではあります。
最後に、カバー後の案内を引用すれば
*
気鬱にとりつかれた三人の紳士が
犬をお供に、テムズ河をボートで
漕ぎだした。歴史を秘めた町や村、
城や森をたどりつつ、抱腹絶倒の
珍事続出、愉快で滑稽、皮肉で珍
妙な河の旅がつづく。イギリス独
特の深い味わいをもつ、代表的な
傑作ユーモア小説。
*
構成は全19章に、井上ひさしの解説がついたものです。
ボートの三人男 改版
2013/10/14 20:38
楽しかった!!
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんず86 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もう随所でクスリと笑いが出てしまう、っていう感じ。
お腹を抱えて大爆笑という雰囲気ではないが。こう上品なユーモア感覚…?
こういう笑いもけっこう好き。
最後の終わり方もたいそうよかった。大満足のため息が出ました。
犬のモンモランシーがまたよい味添えてるし。しっかりと人間さまといっしょになってましたね。三人+一匹って感じで、なくてはならない存在でした。
予想外に面白かったので、もっとたくさんの人にこの本を読んでもらいたい気持ちでいっぱいです。
ボートの三人男 改版
2020/07/27 10:24
世界で読み継がれているイギリス人ユーモア作家のジェローム・ジェローム氏の名作です!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イギリスの喜劇役者であり、新聞記者でもあった、ユーモア小説家として有名なジェローム・ジェローム氏の世界で読み継がれる名作です。同書の内容は、気鬱にとりつかれた三人の紳士が犬をお供に、テムズ河をボートで漕ぎ出すことから物語が始まります。歴史を秘めた町や村、城や森をたどり、愉快で滑稽、皮肉で珍妙な河の旅が続いていきます。数々のオマージュ作品を生み、いまだ世界で愛読されている英国ユーモア小説の古典とも言うべき作品です。ですこの機会に、ぜひ、読んでみられてゃ如何でしょうか!