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5件
告白
著者 町田 康 著
人はなぜ人を殺すのか――。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。
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告白
2010/09/22 02:06
「文筆の荒法師」が描く怒涛の840ページ!朝日新聞 ゼロ年代の50冊第3位
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸末期に河内に生まれた城戸熊太郎は子どもの頃からあふれるような思考と口に出す言葉とが合一することのないことに思い悩みながら育った。長じて博打に興じるばかりの生活を送るようになるが、明治26年、妻お縫が男と通じたことをきっかけに、舎弟の弥五郎とともにその男の一族郎党10人を次々と殺害するに至る。「河内十人斬り」に歌われた史実をもとに描く840ページの大長編小説。町田康に付された「文筆の荒法師」という修飾語がまさにふさわしい、俊敏で諧謔味あふれた魔術的な文章が大変魅力的な作品です。
定まった仕事も持たず、放埒な生活におぼれる熊太郎ですが、彼の内に秘めた河内弁による思弁の流れを見ると、彼が私たちとは縁遠い単なるヤクザ者の一人ではなく、明治前期に立ち現れた悩める近代日本の精神であるように思えるのです。ですからこの小説は平成に書かれたものとはいえ、明治文学を読むかのような錯覚を覚えます。
一方で、岩室の中で起こる森の小鬼とその兄・葛木ドールとの一件は熊太郎の精神と行動を生涯にわたって縛る大事件なのですが、人間の理知が届かね奇怪きわまりない描かれ方をしていて、あたかもガルシア=マルケスが描く南米の呪術的小説世界に紛れ込んだかのようで、大いに惑乱させられます。
さて、熊太郎は大量殺人に手を染めるための思考を巡らせますが、実のところこの殺人の理由は理詰めで解きほぐせるような類いのものではないように思えます。熊太郎は事実、「ほんのちょっとの駒の狂い」(514頁)という言葉を使い、また「もっと早くに勝負を降りるべきだった」(838頁)という悔悟の念を抱きます。私はそこにこそ、ひょっとしたら第二、第三の熊太郎になりかねないかもしれない危うさをはらんだあなたや私が生きる上での知恵が秘められているように思えてなりません。
告白
2024/02/01 11:08
ずしりとくる河内弁
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の熊太郎やその舎弟弥五郎、そして登場人物のほとんどの人がかなりディープな河内弁で会話する、それがまず面白い(ただ、私が河内に近いところに住んでいるからその意味、アクセントはほぼ理解できるのが他地域の人はどうなのだろう)、そして主人公の熊太郎が面白い、初めは「ほんま、けったいな男やな」と嘲笑していたのだが、読み進めていくうちに理解できた、「これは私だ」と、本当は小心者なのに煽てられると調子にのって虚勢をはってしまう、すぐに空想の世界に入りこんでしまって現実を顧みない、といったところ(ということは私も取り返しのつかないとんでもないことをしでかしてしまってもおかしくないのだ)
告白
2020/08/05 09:45
谷崎潤一郎賞を受賞した「人はなぜ人を殺すのか?」という永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説です!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ミュージシャンでありながら、作家活動もされており、『くっすん大黒』(野間文芸新人賞)、『きれぎれ』(芥川賞)、『土間の四十八滝』(萩原朔太郎賞)、『権現の踊り子』(川端康成文学賞)などの傑作を発表してこられた町田康氏の作品です。同書は、河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフにして、永遠のテーマである「人はなぜ、人を殺すのか?」といったことに迫る著者渾身の長編小説です。同書は、谷崎潤一郎賞を受賞した傑作でもあります。ぜひ、一度、読んでみてください。。