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歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
著者 武井彩佳 著
ナチによるユダヤ人虐殺といった史実について、意図的に歴史を書き替える歴史修正主義。フランスでは反ユダヤ主義の表現、ドイツではナチ擁護として広まる。1980年代以降は、ホロコースト否定論が世界各地で噴出。独仏では法規制、英米ではアーヴィング裁判を始め司法で争われ、近年は共産主義の評価をめぐり、東欧諸国で拡大する。本書は、100年以上に及ぶ欧米の歴史修正主義の実態を追い、歴史とは何かを問う。
歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
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歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
2022/01/04 20:32
欧米の歴史修正主義
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史とは何か、というところから、なぜ歴史修正主義が生まれるのか、どんな議論があったのか、
を欧州(特にホロコースト否定論)を軸に解説してある。
映画にもなった「アーヴィング裁判」などにも紙幅を割いてあり、興味深かった。
印象に残ったのは、こうした裁判が明らかにしたのは、意図的に資料を読み替え、自らの政治信条に都合の良い歴史を書く人間を論破し、社会から悪しき言論を除去するには、膨大な時間、労力、資金が必要であるという事実―という部分。
そして、こうした歴史の否定や歴史修正主義は、その出来事を経験した当人を確実に傷つける=歴史の当事者に対する攻撃だというもっともな指摘。
さらに、歴史修正主義を生み出す社会の側の問題にも疑問を投げ掛けている。
「まず私たちの知的怠慢が批判されるべきではないか」と。
遠く感じるホロコーストなどの話が中心ながら、非常に興味深く、ぐいぐいと読ませる。
資料的価値も高いと思う。
ただ読み進めていて、では日本はどうだろう・・・と聞いてみたくなる。(一部に触れてはあるものの)
筆者の専門とは違うのかもしれないが、 日本の歴史修正主義/歴史否定論者などについても論じてもらえたら、
より歴史修正主義を生み出す社会の側の問題について、自分の問題として考えられるように思った。
歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
2022/08/18 17:24
表現の自由論、否定論を受容する社会とは何か
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主にホロコースト否定論の歴史を辿りながら、修正主義・否定論の何が問題なのか、法規制の何が問題なのかに迫った著者渾身の良書。ドイツを中心に、英仏も含め、歴史修正主義について包括的に解説されています。法規制についても論じられているので、表現の自由の観点からも参考になります。否定論を受容する社会とは何か考える上でも必読。ホロコースト否定論は、映画でその論争を垣間見たが、本書で全容を把握することができた。なぜ、歴史修正主義が跋扈するのか、それにどうシステムとして対峙するのか、大変参考になった。ウクライナ情勢であらためて目を向けられている東欧やロシアにおける「歴史戦」の実態、その目的や今後のゆくえについて考えてみたい。
歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
2022/03/05 20:59
あやしい言論人が日本にはたくさんいるような
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
家の窓の一つから、遠方に赤い屋根が見それはえたとする。窓枠を通して見える赤い家の姿は、もちろんその全体像ではない。それは特定の方向と角度から捉えられた立面図に過ぎず、赤いのは実は正面だけかも知れないと歴史学者なら考えるであろうが、歴史修正主義者は「赤い建物が見えた、したがってそれは赤い家だろう」と結論付ける。自身の考えと矛盾する事実は単純に無視すると作者はそう言う、なるほど。ホロコーストという過ちを繰り返さないために、欧州ではホロコーストなどなかったという言説を規制するために否定禁止法が制定された。そして、翻って日本では、あろうことか「ホロコーストはなかった」という論文がある雑誌に掲載され海外からの批判を受け廃刊に追い込まれたが、きっと右翼政治家たちと繋がっているのだろう、その雑誌の編集長は彼らへのゴマすり記事を満載した雑誌の編集長として、いまだに出版業界で生き残っている