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たとへば君 四十年の恋歌
乳癌で逝った妻、そのすべてを見届けた夫――2010年8月、乳癌のため64歳で亡くなった歌人の河野裕子さん。没後、歌集が異例の増刷を重ね、新聞でもたびたび特集が組まれるなどの反響が続いている。河野さんは夫の永田和宏さんと、出会いの頃から何百首もの相聞歌を作ってきた。大学での出会いから、結婚、子育て、発病、再発、そして死まで、先立つ妻と交わした愛の歌。「一日に何度も笑ふ笑ひ声と笑ひ顔を君に残すため」(河野裕子)遺された夫、和宏さんの巻末エッセイに涙が止まらない。
たとへば君 四十年の恋歌
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たとへば君 四十年の恋歌
2017/04/29 05:48
うたに抱かれて
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人がその姿かたち、性格とさまざまであるように、家族のありようもさまざまだ。
昭和と呼ばれた時代の家族像と平成のそれでも違うだろう。
それでも、家族は生活のひとつの単位ではある。
そのもとになるのが夫婦だろう。
大学の時の出会いから伴侶のガン死まで四十年にわたる夫婦が残してきたもの。
それは夥しい数の歌であった。
特異ではあるが、それもまたひとつの夫婦像、家族像なのだ。
本書は、2010年8月に乳がんで亡くなった歌人河野(かわの)裕子とその夫である同じく歌人永田和宏の、その出会いから別れまでの長い期間に互いに詠み合った相聞歌ともいえる短歌の数々と、二人のその時々のエッセイを抜粋して出来上がっている。
タイトルにもなっている「たとへば君」は、まさに二人の出会いの頃に河野が詠んだこんな歌からとられている。
「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてくれぬか」。
そういう若い愛を詠んだ歌を好きな読者もあるだろうが、やはり私は河野の短歌の代名詞ともいえる、家族を詠ったそれの方が好きだ。
「たつたこれだけの家族であるよ子を二人あひだにおきて山道のぼる」。
この歌のあとに、「これからも私は、たったこれだけの家族にかかずらわって歌を作ってゆく」、河野のこんな文章を添えて、エッセイも残している。
それでいて、河野は療養中何度も狂気のふちを歩くことになる。
家族はそんな妻をそんな母を受け入れるしかない。
そういう凄惨な事実を家族という殻で包み込むのもまた、家族なのだ。
河野はそれさえもすべてわかって、この世を旅立ったにちがいない。
たとへば君 四十年の恋歌
2018/05/05 23:29
少しずつ少しずつ
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
歌人夫婦の河野裕子・永田和宏の本で、乳がんが再発して逝った妻の遺した短歌と随筆を、夫が自らの歌と文章(科学者らしい冷静な文章)も交えながら編んだ本です。
少しずつ少しずつ読むのがぴったりの本。だって、何ページも読むと、切なくてたまらなくなるから。
タイトルは河野の若き日の代表作である、
たとえば君 ガサッと落ち葉すくふやうに 私をさらつて行つてはくれぬか
から採ったものですが、若き日に「たとえば君」とよびかけられた永田が、逝ってしまった河野に「たとえば君」とよびかけ返している返歌のようにも思えます。
たとへば君 四十年の恋歌
2015/08/23 20:48
何度も読み返したい歌集です。
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mars - この投稿者のレビュー一覧を見る
夫婦2人の出会いから死別までの作品が載せられています。途中奥様ががんを患います。それからの歌がますます鮮烈です。文語のもつリズム感と相まって、夫婦それぞれの想いがよく伝わってきます。