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17件
乳と卵
著者 川上未映子
2008年の第138回芥川賞受賞作! 娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は豊胸手術を受けることに取りつかれている。緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。夏の三日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。日本文学の風景を一夜にして変えてしまった傑作。
乳と卵
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乳と卵
2010/09/25 08:47
服は脱げても体は脱げない
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
体とはまことに困難なものです。
ここで体というのは、心と対峙するものとしていいたいわけで、風邪をひいて熱がでたらどんなに心が急いていてもやはり休むしかない、そのようなものとしてとらえてみたい。
しかも、それが男の体、女の体ということにでもなれば、どんなに社会的な性差を云々したとしても、やはり男には女の体のことがわからず、女には男の体のいったい何がわかるといえるでしょう。
理解はできるでしょう。ただ、理解と実際はちがいます。女の生理痛はどのような痛みなのか。男の射精はどのような快感なのか。
体はまことに困難です。
平成19年度下半期の第138回芥川賞受賞作、川上未映子さんの『乳と卵』を読むと、細やかな体についての表現がメタファーとして理解できたとしても、なかなか男性読者には実感できないのではないかと思いました。その分、女性読者には猛烈に体ごと納得される作品ではないでしょうか。
ひと夏の三日間のできごと、登場人物は女性三人、といってもそのうちの緑子はまだ初潮をむかえていない少女です。
饒舌な文体は暑苦しいほどですが、夏の暑さと三人のうだるような関係にうまく合っています。川上さんの言葉使いのうまさだと思います。
緑子の母である巻子は豊胸手術をもくろんで、妹の住む東京に緑子を連れてやってきます。巻子と緑子の親子のあいだには会話がありません。ペン書きのメモで会話をしています。大人になろうとする少女の不安をこのような形にした、川上さんのたくらみといっていいでしょう。
結局、この小説は少女から女性になる過程をえがいています。
最後の母との和解も、おとなの体の受容だと感じました。なま卵のぬめり感も、ひょっとしたら、女性読者なら充分納得できるものかもしれません。
芥川賞受賞後のインタビューで川上未映子さんはこんなことを話しています。「男、女にかかわらず体はどうしても変えられないということは不思議な感じがします」
そんな川上さんですが、ある時期自身のキャッチコピーとしてこんな言葉をもっていたそうです。
「服は脱げても体は脱げない」。なるほど。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
乳と卵
2010/10/04 12:26
すごい小説
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K・I - この投稿者のレビュー一覧を見る
10月2日に専修大学で行われた川上未映子さんの講演会に行った。
専修大学は母校なので、ひさしぶりに行って懐かしかった。
町の風景はほとんど何も変わっていなかった。
講演会は2部構成になっていて、
第1部が川上さんの基調講演、第2部が専修大学の文学部の先生2人を交えたシンポジウムという形だった。
川上未映子さんが以前神奈川県の書店でサイン会をしたとき、
僕は行き、詩集にサインをしてもらった。
それから、あれよあれよという間に、芥川賞をとり、『ヘヴン』を刊行していろいろな賞を受賞された。
文学界に載った短編は読んだのだが、彼女の小説はこれまで実はきちんと読んでいなかった。
なぜだろう。
今回講演会に行き、シンポジウムでも『乳と卵』が話題になっていたので、さっそく買って読んでみた。
芥川賞受賞作。
いや、でもこれは本当にすごい小説ですよ。
語り手の「わたし」、姉の巻子、巻子の娘の緑子、その3人が出てくるわけですが、
巻子は豊胸手術を受ける、ということに取りつかれていて、
緑子は言葉を発せず、筆談でやりとりをする。
実はサインしてもらった詩集を読んで、
「ちょっと僕が読みたいものと違うかな」と思ったことが、川上未映子さんの小説をちゃんと読んでこなかった理由でもあったりして。
でも『乳と卵』は詩集で描かれていたモチーフが関西弁の語りによって、
ぐいぐいと読ませて、まあ、これはすごい、すごい、と読み終わった後、呆然。
ちなみに、講演会で川上未映子さんが言っていたのは、
作家にとって、大事なのは「独自の視点」だということです。
川上さんのそのままの言葉ではないのですが、僕はそういうことを彼女は言いたかったのだろうと理解しました。
文体について聞かれたときも、文体よりもまず物の見方そのものだ、というようなことをおっしゃっていました。
とても刺激になるいい講演会でした。
で、で、僕は川上さんの小説をこれからちゃんと読んでおこう、とbk1の「あとで買う」にチェックしておいたのですよ。
これから彼女の書いた小説をちゃんと追っていこう、と思っています。
乳と卵
2020/06/01 18:50
難しい
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『乳と卵』女性特有の話でしょうか。
私には難しい内容です。