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だから殺せなかった
著者 一本木透(著)
【2022年1月スタート連続ドラマ化! 玉木宏主演 WOWOW 毎週日曜夜10時放送・配信(全5話)】「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に宛てて送られてきた一通の手紙。そこには、首都圏全域を震撼させる無差別連続殺人に関して、犯人しか知り得ないであろう凶行の様子が詳述されていた。送り主は自ら「ワクチン」と名乗って、ひとりの記者に対して紙上での公開討論を要求する。「おれの殺人を言葉で止めてみろ」連続殺人犯と記者の対話は、始まるや否や苛烈な報道の波に呑み込まれていく。果たして、犯人の真の目的は――劇場型犯罪と報道の行方を圧倒的なディテールで描出した第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。
だから殺せなかった
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だから殺せなかった
2020/02/24 04:49
「だから殺せなかった」、タイトルが素晴らしい。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
鮎川哲也賞受賞作だからといって読まなくなったのはいつからだろう。かつてはちゃんと読んでいたのに、賞に関係なくとも東京創元社からデビューする新人だというだけで読んでいたこともあるのに(その頃読んでた人たちは、今でも新作が出ると読んだりしているのに)。好みの作品が続いた時期か、自分の年齢か。
『ジェリーフィッシュは凍らない』を久々に読んだのが数年前で、それ以来かも。
これは“あの『屍人荘の殺人』と栄冠を争った”として第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞となった話題作だが、タイトルのインパクトがずっと頭に残っていて・・・。普段翻訳物中心に読んでいるせいか、日本人の書くものはやはり読みやすく、ほぼ一気読みだった。「新人離れした筆力」、確かに。
クオリティペーパーと呼ばれる大手新聞社に届いた手紙は、首都圏で起こっていた三つの殺人事件を自分の犯行だと、無差別連続殺人だと伝えるもので、新聞紙上での公開討論を要求してくる。指名された新聞記者は、これまでの連載で自分もまた過去に犯罪者の家族と関係があって報道と正義に対し割り切れない思いを告白していた。人間を駆除すべきウィルスだと断言する犯人は「おれの殺人を言葉で止めてみろ」と記者に挑戦状を叩きつける。 そして始まる報道合戦の行方は。
作者は新聞社関係の人なのかな?、と思わせるディテールは素晴らしい。
斜陽になってきている新聞という産業を描いているところもいい(ペンは剣よりも強し的な理念では通用しない部分)。
ミステリとしても大変フェアなのだが、枚数が少ない&登場人物が少ない故に途中でわかってしまう!、のが残念。せめて視点人物をもう一人増やしていたら、もしくは三人称視点なら、もっと盛り上がったかもしれない。しかしモノローグ形式だから最後まで畳みかけを続けられたのかもしれないし・・・。
面白かったのだけれど、「もっと面白くなったのに!」という感覚が拭えない、なんかもったいない感じが残って世界にのめり込めなかったのがほんとに残念だ・・・大きなテーマであるが故に、やはりもっと枚数が必要だった。
しかし装丁(裏表紙も)が内容(特に結末)とリンクしていて味わい深い。
作品として作り手に愛されている感じがする、それ故に読者も不足分を含めてこの作品を愛してしまう。
だから殺せなかった
2024/02/17 22:53
だから殺せなかった
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白くて一気に読み進めることができました。
なんとなく犯人はそうかな?と思いつつのラストにだから殺せなかったというタイトル名に、なるほどなと思いました。
だから殺せなかった
2023/02/27 00:01
満足度の高い社会派ミステリー
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
都内の連続殺人事件の犯人と、全国紙の記者との紙面上での論戦が繰り広げられる。ジャーナリズムと商業主義を巡る報道機関の葛藤、一連の犯行の裏側に垣間見える人間の醜悪さを「人間=ウイルス」と断じる犯人の論理等、一見食傷気味に思えるほど濃厚なのですが、全編通じて一本の筋が通っておりストレスなく読み進められる。かの「屍人荘の殺人」と第27回鮎川哲也賞を争ったのも納得の、非常に満足度の高い1冊でした。