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イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男
著者 佐藤 次高
マムルーク朝のバイバルスとともに、イスラーム史上の英雄と称されるアイユーブ朝のサラディン。アラブと十字軍の50年以上にわたる覇権争いに終止符を打ち、十字軍から聖地エルサレムを奪回した「イスラーム世界の英雄」として知られる彼は、同時代のアラビア語史料や伝説に「アラブ騎士道の達人」「慈悲深い高潔な人物」と謳われ、ヨーロッパでも智者、果敢な騎士、寛大な性格の人物と評されました。アラブ側は異教徒と勇敢に戦った英雄として、ヨーロッパ側はアラブ騎士道の体現者として、サラディンを描きつづけています。そのような伝説に彩られた人物の実像とはどのようなものだったのでしょうか。本書は、サラディンが、どのような政治・経済・社会状況にあって、どのように考え、どのように行動したかを明らかにします。さらに、伝説と事実を峻別したうえで、架空の伝説も人々の願望の表れとしてとりあげ、「人間としてのサラディン像」をあざやかに描き出す、「英雄」の実像に迫った本格的伝記です。
〔原本/1996年、講談社選書メチエ〕
【本書の内容】
プロローグ――サラディンの生きた時代
第一章 修行時代
1 誕生
2 カリフ権力の衰退と十字軍の侵攻
3 少年サラディン
4 ヌール・アッディーンとの出会い
5 エジプト遠征
第二章 エジプトの若きスルタン
1 アイユーブ朝の創設
2 バイナル・カスラインの戦い
3 サラディンの補佐役たち
4 イエメン征服の謎
5 シリアへの進出
6 新体制の確立
第三章 カイロからエルサレムへ
1 エジプト経済の繁栄
2 聖戦(ジハード)へ向けて
3 エルサレム奪回
4 アッカーをめぐる攻防
5 サラディンの死
エピローグ――サラディン以後
イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男
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イスラームの「英雄」サラディン 十字軍と戦った男
2020/03/26 13:14
イスラム世界の英雄とされるサラディンの本格的な評伝です!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、12世紀から13世紀にかけてエジプト、シリア、イエメンなどの地域を支配下に治めたスンナ派のイスラーム王朝であるアイユーブ朝の創始者サラディンについて書かれた評伝です。彼は、現イラク北部のティクリート出身で、アルメニアのクルド人一族の出自ですが、エジプトとシリアを支配下に置き、エルサレム王国を1187年に破り、さらに第3回十字軍を破ったことから、イスラム世界の英雄とされている人物です。同書では、この英雄の生涯を分かり易く解説します。内容構成は、「サラディンの生きた時代」、「修行時代」、「エジプトの若きスルタン」、「カイロからエルサレムへ」、「サラディン以後」といった時系列に記述されており、非常に読み易くなっています。
2024/05/09 20:44
等身大のサラディン
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
サラディンといえば聖地を奪回したイスラムの英雄、敵の十字軍からも評価される人格といった逸話が有名だが同時代資料からどう読み解けるか実際のサラディンについてよくわかる本。後世の美化されたような完全無欠なわけではないがそこも含めて魅力的な人物と感じた。
2025/03/01 09:52
ヨーロッパ側からではない視点
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
アラブが見た十字軍_アミン マアルーフも読んだことがあるが、ヨーロッパ側からではない視点で描きだされた作品である。塩野七生の十字軍物語をもう一度読みながら、この作品を読んでみた。筆力に関しては、歴史学者と小説作家との違いを見せつけられた思いがした。もっともこれは脚色が許されている小説作家と、正確性が生命線の歴史学者とを、読みやすさ 面白さの視点で比較するのは不公正であろう。