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ゴリラ裁判の日
著者 須藤 古都離
カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。手話を使って人間と「会話」もできる。カメルーンで、オスゴリラと恋もし、破れる。厳しい自然の掟に巻き込まれ、大切な人も失う。運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。政治的なかけひきがいろいろあったようだが、ローズは意に介さない。動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。順風満帆のはずだった――。
その夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの? 人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの? だめだ、どうしても許せない! ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む! アメリカで激しい議論をまきおこした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。第64回メフィスト賞満場一致の受賞作。
ゴリラ裁判の日
05/08まで通常1,826円
税込 1,278 円 11ptワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
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2023/03/15 00:27
ゴリラと喜怒哀楽
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
保護区のジャングルで生まれ、研究者から学んだ「手話」で人とコミュニケーションをとる、ゴリラのローズ。アメリカの動物園で起きた実際の事件から着想を得た、「人間の定義」と「命の選択」を、豊かな感受性を持つゴリラの視点から描いた至高のエンターテインメント。
手話を駆使して夫の仇を討つべく裁判に挑むゴリラを描いた、コミカルなSF作品。ナックルウォーカーという名前など、細やかなユーモアに図らずも何度も笑わされた。そんな序盤の印象から、ジャングルでの開放的なゴリラの群れでの暮らしへ移ると、文字通り景色が一変した。無邪気なローズのゴリラ本来の気質と、人間から多くを吸収した事で生じた違和感とのジレンマを、目映いばかりの美しさで表していて、青春物語のような魅力も詰まっていた。
手話をするゴリラをも凌ぐ個性的なキャラ達は、作品の舞台でもあるアメリカ的な独特なセンスが反映されていて、とてもしっくりハマって心地好かった。
物語が進むにつれて、人かゴリラかの単純な問題ではなく、各々が持つメンタリティへと踏み込んでいく奥の深さには驚きの連続。人種や銃などの問題を違和感なく組み込んでいるのも巧いと思った。
ローズが人間らしい感情を見せる度に作中でも驚かれていたけれど、果たして思い遣りなどの感情は「人間らしい」のか。動物は伝える手段が少なく、私達人間が理解出来ていないだけで、感情だけで言ったら彼らの方が豊かなのではないか、と人間の傲りを痛感させられた。
アメリカの柔軟な考えが導く先の「線引き」を考えると、もし三回目の裁判があったら、また覆るのかもしれないと漠然と考えた。沢山笑えて温かい気持ちになる作品だったけど、後味は苦いものも残りました。
人を選ばずオススメ出来る作品です!
ゴリラ裁判の日
2024/04/29 19:47
これは大変だ。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は、こんなにも多くのものを生み出してきた。その度に、生み出すものやその効果について様々なものを定義してきた。なのに、ふと動物レベルまで立ち返ってみると、「人間」を定義できていないことをゴリラに手話を学習させたことによって証明してしまった。なんか、いろんな危機感を感じる本だった。もっと素直に、忖度なく生きていけないだろうか。
ゴリラ裁判の日
2023/11/28 15:32
人と獣を分かつもの
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物園のゴリラの飼育ゾーンに幼児が落ちた。雄のゴリラがその幼児を掴んだ為、ゴリラは射殺された。そのゴリラの妻の一人だったローズは人語を理解し、自らもまた手話で言葉を伝えることのできる知性に恵まれたゴリラだった。
不当に夫を射殺されたローズは動物園を訴える。
人と獣を分かつものは何か?
感情豊かで知性あるローズの存在に、周りの人間たちが逆に人とは、人権とはと考えされられる。
裁判には陪審員たちが並ぶ。ガチガチの信仰心の持ち主や銃規制反対派がいる。弁護士は全員一致で動物園の有罪を導き出すのに、どのような弁舌を用いるのか? 結構なロジックである。