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5件
バリ山行
著者 松永K三蔵
第171回芥川賞受賞作。
古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。
「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」(本文より抜粋)
会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。
バリ山行
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2024/11/28 16:34
これは「オモロイ純文」でした
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第171回芥川賞受賞作。(2024年)
あまり聞きなれない言葉、「バリ山行(さんこう)」がタイトルになっているが、登山好きであればムムッと立ち上がるのかもしれない。
「山行」は登山用語で、「山の中を通っていくこと」という意味。では、「バリ」は、これは小説の中で説明がある。
「バリエーションルート」の略で、「通常の登山道でない道を行く」こと。
つまり、この小説は登山小説としても面白い。
作者の松永K三蔵さんが芥川賞受賞後「オモロイ純文」を書いていきたいと話していたのが印象に残った。「純文学ってオモロイやん」と思ってもらえる、そんな運動をしていきたいと。
その言葉通り、受賞作である『バリ山行』はとてもオモロかった。
誰であったか、いい小説は前へ前へと進んでいくと論じていたが、この作品がオモロイのはまさにその点だろう。
登山小説でもあるから、前へ進んでいくのは当然で、つまりはオモロイ小説の題材が最初から出来上がっていることになる。しかも、その登山が決まりきったルートではなく、藪や蔦、岩や崖、峡谷などのある「通常の登山道」ではないのだから、面白さは倍増される。
さらに主人公である波多が働く会社の先輩社員である妻鹿(めが)という男のキャクターがいい。
この男こそ「バリ山行」を波多に導く重要人物で、彼のキャラクターが際立てっていることで、物語をさらに面白くさせているといっていい。
そういう諸々からいって、この小説は「オモロイ純文」だった。
2024/10/03 14:49
私には登山の趣味はないけど読まずにいられない
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ
第171回芥川賞受賞作品、バリ山行のバリとは登山におけるバリエーションルートの略、通常の登山道ではない道を行く、熟練者ルートのことと登場人物の一人、槙さんが説明してくれた。私には登山の趣味はないのでバリの何が楽しいのかは理解できない、妻鹿さんが休日のたびに訪れているバリの世界は彼を快楽に導きのか、苦行へと導くのかも
2024/07/26 22:25
40代サラリーマンの悲哀を読んでしまった
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はぐらうり - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞受賞作。山小説はいくつか読んでいるけれど、登山小説は『ホワイトアウト』以外に読んでないかも。かなり久しい。
あまりメタファーとかを考えなくても、考察をしなくてもわかる純文学で、珍しいが心地よい。ルートを外れてしまったんだよね、おそらく。
山登りはしないものの、自分の人生と照らし合わせてしまって、40代サラリーマンて厳しいよね、と身につまされる思いがした。