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名探偵夢水清志郎事件ノート
夢水清志郎は名探偵。表札にも名刺にも、ちゃんとそう書いてある。だけど、ものわすれの名人で、自分がごはんを食べたかどうかさえわすれちゃう。おまけに、ものぐさでマイペース。こんな名(迷)探偵が、つぎつぎに子どもを消してしまう怪人「伯爵」事件に挑戦すれば、たちまち謎は解決……するわけはない。笑いがいっぱいの謎解きミステリー。
卒業~開かずの教室を開けるとき~ 名探偵夢水清志郎事件ノート
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機巧館のかぞえ唄
2006/06/28 19:48
小学校の先生をやめて、はやみずが満を持して送る一冊。メタミステリ、人間消失、そして大飯喰い、どれをとっても面白い
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「老推理作家の平井龍太郎の自宅である機巧館で開かれた記念パーティ。屋敷から作家が消えた。招かれていた探偵 夢水清志郎は」推理小説。はやみねファンには怒られるかもしれませんが、彼の仕事の中で唯一、楽しんでいるシリーズです。
こんかいは夢水ものの第六作だそうです。前作のあとがきで「今度はがちがちの本格」と宣言しただけあって、かなり高度な叙述推理、というかメタミステリといえるでしょう。これを本当に理解できる小学生がいるんでしょうか、他人事ながら気になります。
話はかなり複雑で、全体は三部構成というのはいつものとおり。といっても第一部「怪談」と三部「さよなら天使」は独立した作品で、前者は岩崎亜衣、真衣、美衣の三つ子姉妹の個性と、彼女達が語る話の謎でもない謎を強引に解き明かしていく夢水の探偵術がユーモラスな作品です。後者は、村田四郎の挿絵に出てくる赤ん坊がとても可愛らしい好編。これだけでも、読む価値はあった、そう思います。
そして中心となるのが第二部「夢の中の失楽」、話自体が二部に分かれ、さらに三章づつに別れいぇいます。前半は、推理小説界の老大家が三姉妹やレーチ、そして夢水を招いた機巧館でのパーティの様子と、老作家の別れの言葉とも言える作品執筆宣言などが中心で、相変わらず夢水の食べっぷりが見事です。
後半が、消えた老作家と殺人事件。それにタイトルが絡んで、とても小学生を対象にしたとは思えない本格的なメタミステリになっています。ここでも三姉妹と夢水のやり取りが楽しいのですが、犯人消失のところもかなりいけるものとなっています。レーチの眠る姿も可愛いのですが、それがどこかは読んでのお楽しみ。ともかくタイトルの意味が良く分かります。
あとがきに、かなり苦労したとありますが、その理由が振るっています。解説は同じく推理作家の辻真先。これだけでも青い鳥文庫として異色といえるでしょう。少し持ち上げ過ぎの気がしないでもないのですが、再読に耐えうる、というか再読しなければ本当のところが分からないといっても良い傑作です。
これだけ安定した作品を書き続け、子供たちに愛されるシリーズを作り出したのですから、小学校の先生を辞めて、作家生活に入ってしまった、というのもわかりますが、では彼にとって教員とはなんであったのか、単なる飯の種であったのか、と皮肉のひとつもいいたくなります。うーん、新しい門出を祝いたいのですが、我ながら人間が小さい・・・
ギヤマン壺の謎
2006/02/28 23:03
この「六地蔵事件」、私は傑作だと思うんですよ。夢水シリーズは、はやみねにとってだけではなく、日本の児童ミステリの水準を大きく変えた、そう思いますが、とくに今回は、お見事
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「19世紀のエディンバラで起きた路地裏での追跡劇。消えうせた犯人の謎を解いたのが、日出る国からきたという夢水清志郎左右衛門。かれが出島に現れて」推理小説。
おなじみ夢水清志郎シリーズの外伝、大江戸編です。
出島にある南京錠が掛けられた15番蔵から、ギヤマンの壷が消えた。左門の旦那に連れられた麗一は、宗之進に執拗に質問を繰り返すが、犯人らしい人間は浮かび上がって来ない。宗之進が思い出したのが、最近出島に現れた黒眼鏡姿の、物忘れの激しい年齢不詳の男「ギヤマン壷の謎」。
江戸に向う清志郎左右衛門が、道中をともにしたのが才谷梅太郎。2人が拾ったお金で木坂の宿。途中で地蔵が倒れているのを並べなおした二人が、宿を出て再び旅を始めたときに見たのは、昨日綺麗に並べた6つの地蔵が、全くちがう場所に綺麗に並んでいる光景だった「六地蔵事件」。
ほかにも、竹光で真剣と渡り合うことの出来る心優しい武士 中村巧之介と新撰組との出会いや、江戸に到着した清志郎左右衛門が亜衣、真衣、美衣と会い、見世物小屋に現れる大入道の謎をとく話など、実に盛りだくさんです。
個人的には、平和を錦の御旗にすれば、どんなことでも絶対に正しいという巧之介の考え方なは、必ずしも好きではありませんが、小学生以上が読書対象であれば、それもやむをえないかな、なんて思います。
どの話も小味な印象ですが、すっきりした謎解きはいかにも心地よいものです。やはり登場人物がいいと、話し全体も楽しくなるという好例でしょう。時代ものに始めて挑んだというぎこちなさと、新しい設定に喜ぶ作者の初心な気持ちが爽やかで、好ましい佳品といえるでしょう。江戸時代の長屋の図面もついていて、話の理解に大変役立ちます。
子供の本だから、ではなくて大人の本にも図版や絵をつけることは必要だ、とつくづく思いました。
2021/07/20 12:43
面白い!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
名探偵夢水清志郎シリーズの1作目です。江戸川乱歩を彷彿させる洒落た児童向け本格ミステリでした。4人の子供とプラス1名がいなくなる連続消失事件。しかも衆人環視の中でだったり、不可能状況の中でだったりと謎多き時間。この事件に挑むのは、自称名探偵の夢水清志郎と岩崎亜衣、真衣、美衣の三つ子。キャラの魅力もさることながら、事件の内容が本格ミステリそのもので、さらにトリックも解決も鮮やかでした。大人向けの本格ミステリとしても内容的には十分通用するものだと思います。トリックは画期的というより、既存のものの応用という面が強いですが、子供たちがこの本を読んでミステリ好きになるという意味ではちょうど良い作品なのではないかと思います。ワクワク、ドキドキも味わえて、最後は幸せに終わるというまさに理想的なミステリだったと思います。