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ふったらどしゃぶり~When it rains, it pours~ 完全版
著者 著:一穂ミチ , イラスト:竹美家らら
同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕。一顕の会社の同期で、同居中の幼馴染み・和章に叶わぬ恋心を抱く整。ある日一顕が自身に送ったつもりのメールが手違いで整に届く。そこから、互いの正体を知らぬまま悩みを打ち明け合う奇妙な交流が始まった。好きだから抱き合いたい、抱いてほしい――共有した秘密はやがて心の容量を超えてあふれ出し……? 報われない愛と性に翻弄されるふたりの究極の恋愛小説復活!!
メロウレイン ふったらどしゃぶり
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ふったらどしゃぶり 完全版
2022/05/14 06:49
どしゃぶり
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やじやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレあり
旧版未読です。
恋人と同棲しているけれどセックスレス状態の一顕
幼馴染と同居しているが求めても与えてもらえない整
1通の間違いメールからお互いに同僚と知らないまま交流を深めていく
その交流はだんだん自分の中で消化しきれない誰にも言えない悩みを打ち明けていくようになっていく。
それは、実の存在となって。
パートナーとのセックスレスというかなりセンシティブな題材を扱っていて
かなりリアルなので色々刺さる話ではある。
結婚前と後のセックスレスではまた意味も価値も違うだろうけれど
どちらにしろ「相手」との価値観のすりあわせなしにその状況になるのは
問題がある。(あるいは同意)
「セックス」はやっぱりするしないを含めてお互いに納得してないと
いけないのだろうなぁって思う。
先輩への発言から見ても
かおりはその状態で満足だったのだろうけれど、
一顕は生殺し状態なんですよね。
そこを鑑みないで結婚して子供を作るとか夢を語るのですよね。
子供を作るときだけとか・・・残酷すぎる
一顕がそれを納得していれば問題ないのですけれどね。
かおりの先輩の恐ろしい一顕に対する言動も・・・
一顕のいうとおりちょっとはかおりの言動のせいなのですよね。
ああ、一顕の苦しみをかおりはやっぱりわかってないんだっていうのも
この時わかってしまったし。
かおりの先輩の怖さはひとしおでしたけれどね。
一顕が出て行ってしまった時に追いかけられなかった時点で
かおりの有責が大きいと思うのです。
(まあ一顕が無理矢理致して良いってことではありませんけれど)
なのに、最後の態度はちょっと酷いなぁって感じでした
(まあ、そうでもしないと思い切れなかったのかもしれませんけれど)
価値観の一致というのは恋人同士ならやっぱりセックスも含めてだと思うのですよね。
ただかおりの考え方を全否定する気はないのです
その価値観が一致する人となら問題ないかと思うのです。
相手がいることですから。
整と和章はきちんと正面から向き合って
すべてを打ち明けあっていたら相思相愛になれたのだけれど
そうなれなかったのが切ない
和章は和章の理由もあるのですけれどね。
だから彼の手からこぼれ落ちてしまったのだろうと。
そんなお互いの相手と合わされない二人が出会って
悩みを吐露したり、意見したりとすりあわせていって最終的に
「この身体がいらないなんて、ぜいたくなやつがいるんだなあ、ってさ」
という整の言葉がしみじみと染みていきます。
一顕がそれに涙が出る思いをしたのは理解と許容された思いだったのだろうと。
二人がそれぞれ一人になって
だけれどもがっつり二人でとならないでも
お互い不器用に「好き」な確かめあう
二人を好ましく思わせてくれます
2021/07/09 13:25
整との約束を守ろうとする和章の不器用な実直さ
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M★ - この投稿者のレビュー一覧を見る
たった一人愛した人、整との約束を守ろうとする和章の不器用な実直さが、
全編でも今作でも書かれていて辛かった。
整との約束
「自分を幸せにすること」=他の人を愛して幸せになって
を、実直に整と別れた後、守ろうとする和章の不器用な生き方が気の毒。
「一は数えに入らない Einmal ist keinmal」を心の中で何度も繰り返す和章。
一度の失敗が数のうちに入らないなら、整を無理やり抱いたことは数に入らない、とか、・・生き甲斐とやりたい事を探して彷徨う和章。
和章にとって、整は、生き甲斐、生きる意味のすべてだった。
ただ一人愛した人、整の喪失跡を埋めるものが他に見つけられない。
大学の恩師の著書整理の仕事を引き受けて、教授の孫と知り合う。
教授の孫、柊を親密になっていく和章。
和章が整とやり直す展開にしない著者。
和章と柊の二人が親密になっていく様子を読み、
もうこれで整が戻る場所は、完全に無くなってしまったんだ、と悲しくなってしまった。
人生の行き違いすれ違いって、こんもんなんですね。甘くないファンタジー。
深い傷であっても、時間が経てば癒すことができるって、著者や言いたいのかも。
これから和章がデザインするものは、整ではなく、柊のイメージで創作されるんだと思う。
生きるということは、変化変容を重ねることだから仕方ない。
メロウレイン ふったらどしゃぶり
2022/06/05 04:52
どしゃぶりのその後に
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やじやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレあり
ふったらどしゃぶりの一顕と整のその後譚
肉体的関係が先に来てしまった二人の
恋のあれこれが描かれている。
ちりばめられた恋の光跡を拾うような作品群です。
本編その後の短編やSS(同人誌、ペーパー、小冊子、ブログ掲載)を
まとめてある1冊
読むことが出来なかった特典たちもこうしてまとめてもらえるのが
本当に嬉しい
「恋をする/恋をした」が人気があるのはわかる
結婚式の二次会で一顕と一緒に幹事をする女子の気持ちと
それを感じる整の気持ちが伝わってくる。
これは恋する気持ちが本当に伝わってくる作品です。
一顕の実家での母とのやりとりがリアルだなぁって思ったり
(一顕の決してかおりを下げない一貫した態度は感服します)
お葬式の秘書課の女性の話はリアルで怖いなぁって思ったり
二人の恋を追いながらそれぞれの色々思うことができる作品たちです。
ナイトガーデンでは書かれなかった先生のお悔やみに行った際の整が
和章の存在を感じるところは切なかったです。
もう交わることができない二人ですが、
こうしてかすかに相手の存在を感じはするのだろうなぁと切なく思いました
(シャンパングラスの話、「long long hello」に作っている過程が載っているので
それも合せて読むと和章と整の交差が見られます)
一顕と整がこれからどうなっていくのかなぁって思いながら読んだ掌編たちです
中年になってもお祭りに寄付して名前並べて貼ってもらって、
縁日で一緒に買い食いしていて欲しいなぁって思ってます。
同じようにちりばめられた時間がある和章と柊の物語も読みたいなぁって思います。