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5件
ガリヴァー旅行記
子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない.だが,おとなの目で原作を読むとき,そこにはおのずと別の世界が現出する.他をえぐり自らをえぐるスウィフト(一六六七―一七四五)の筆鋒は,ほとんど諷刺の枠をつき破り,ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない.
ガリヴァー旅行記
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ガリヴァー旅行記
2021/02/21 01:35
大人向け童話
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
結局小人の国リリパット程度のさわり程度しか内容を知らなかった。ガリヴァーはさらに巨人の国、空に浮かぶラピュタとその属国、最後に知性ある馬フウイヌムと忌まわしいヤフーの国と様々な世界を、少しだが日本さえも訪れている。最初の2篇はガリヴァーが巨人になったり、次には逆に小人になったり、視点が揺さぶられおもしろい。後半2篇は大分雰囲気がちがう。異様な風俗、寄想が詰め込まれておかしいところもあるが風刺が極彩色で凄い。フウイヌムという知性を持った馬の高い徳に感化され余生を彼等と過ごしたいと望む反面、亜人間「ヤフー」への生理的な嫌悪が次第に人間への嫌悪に変わっていく。風刺の果てに人間そのものへの底知れぬ呪詛に染まっていくので、ようやく帰国したガリヴァーは再会した家族に対してももはや心を開けなくなってしまう。重い読後感。子ども向けとは思えないが、では大人向けだろうか。スウィフトの風刺は異常さを感じさせるし底が知れない。
ガリヴァー旅行記
2019/01/13 22:15
ここまで深い作品とは知らなかった
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
こどものころ、小人の国や巨人の国へ旅したガリヴァーのことは絵本で読んだ記憶があるのだが、覚えいるのは小人たちに全身を括りつけられたガリヴァーの絵だけで彼がどのようにその国から脱出したのか、巨人の国へ行ってからどうなったのかといったことはまるで記憶にない。実はこの本は大人向けに書かれた本なのだ、ということは多くの人が案内してくれていることは知っていたのだが、ここまで風刺の効いている(というか効きすぎている)本だとはしらなかった。清廉な馬たちの国・フウイヌムでガリヴァーが悟った人間(ヤフー)の醜くさ、愚かさに対する嫌悪感は当時の大英帝国への批判でもあるし、今日の米中への痛烈な批判になりえる
ガリヴァー旅行記
2014/08/18 23:30
奇想と思想、ひねりと明晰
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この有名な、古典的な物語を、私はちゃんと読んだことがなかった。
英語でも小説を読むのだが、英語はもちろん日本語でも読んだことがなくて、
しいて読んだといえば、子供向けダイジェスト版の小人国リリパットの範囲だけ、
つまり四部作の第一部だけだった。
他にもそういう人が多いのではないか、
というより、ほとんどみんなそうではないか。
四部作であるというのも、そうは知られてないかもしれない。
しかし、ひとたびまだ続きがあるとわかり、しかもその内容を聞くと、
みんな驚いてしまうだろう。
何しろ第三部では、あのジブリの映画の題にもなっているラピュタに行くのだし
(当然ながら内容はまるで違う)
最後に行く国では、インターネットでお馴染みの「ヤフー」が登場する。
もちろんスウィフトの話が先で、ネットの方はそれを借りた命名である。
こうした奇妙な設定、冒険のバリエーションが楽しめるとはいえ、
全体にストーリー性よりも、そこに示された考え方を味わうべき作品だろう。
だから(特に英語では)必ずしも読みやすくはないと思う。
内容を丹念に辿らないとついて行けず、その内容にアクションがさほどないから
筋を取りにくい場合も多いのではないか。
ただそこに展開される奇想の妙味や、そこにこめられた風刺を味わうのが好きな読者なら、
相当インパクトがあるはずだ。
詳細な描写に、よくぞここまで考えたものだと唸らされる。
最後はけっこう驚く成り行きで、なかなかに辛いものもあるのだが。
英語で読む場合について書いておくと、
何しろ昔の英文だから、単語が難しかったり、一文一文が長かったりするということはある。
しかしそのわりに、たとえば19世紀イギリス小説などに比べても、意外に読みやすいのではないか。
風刺文学で、内容は大変にひねってあるのだが、書かれている文章自体はスッキリしている。
文は長くてもきちんと区切ってあるし、区切りごとの意味はとても論理的でたどりやすいと思う。
作家自身の頭脳がいかに明晰だったかというのがよくわかる気がする。