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6件
歴史とは何か
歴史とは現在と過去との対話である。現在に生きる私たちは、過去を主体的にとらえることなしに未来への展望をたてることはできない。複雑な諸要素がからみ合って動いていく現代では、過去を見る新しい眼が切実に求められている。歴史的事実とは、法則とは、個人の役割は、など、歴史における主要な問題について明快に論じる。
歴史とは何か
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歴史とは何か 改版
2018/05/19 16:04
歴史哲学の手軽な名著
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史研究で有名なカーの歴史がどのように作られていくのかという講演を書籍化したものである。歴史は個人の勝手な解釈や絶対的に決まった資料の発見によってできたものではない。歴史も、一つの学問であり、それゆえ特定の資料から特定の個人が解釈した歴史が、学問的に認められるかどうかで歴というものが作り上げられていく。本書には記載されていないが、例えるなら、邪馬台国の○○説の話と似たようなことで、学術的に整合的な解釈が資料から得られ、それから九州説の方が正しいと議論されて批判をされて決められていく。しかし、その決まった歴史も暫定的なものあるいは仮説である。「歴史とは何か」という哲学的な問いを歴史の成立過程から切り込んだ名作である。
歴史とは何か 改版
2022/04/10 16:00
歴史(学)に関心があれば、やはり一度は読むべき古典的一書かと
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
大学時代からの課題であった本書の完読を、ようやく完遂。歴史ないしは歴史学に関わる重要基本論点の一切が盛り込まれたと思しき、やはりの名著でした。バランスのとれた、時として皮肉というかユーモアを交えた語り口も上質。(但し、訳文は正直古く、かなり読みづらい印象も。そろそろ改訳してもいいのではと感じます。)多くのブックガイドなどで「読むべき一冊」とされてきたのも、宜(うべ)なるかなです。
「われわれが読んでいる歴史は、確かに事実に基づいてはいるけれども、厳密に言うと、決して事実ではなく、むしろ、広く認められている幾つかの判断である」(14頁、同じく87~8頁、バラクルー教授の言葉)。
「歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話なのであります」(40頁)。
「歴史家とその事実との間の相互作用という相互的過程-これは前に現在と過去との対話と呼んだものですが-は抽象的な孤立した個人と個人との対話ではなく、今日の社会と昨日の社会との間の対話なのです」(78頁)。
「過去の光に照らして現在を学ぶというのは、また、現在の光に照らして過去を学ぶということも意味しています」(97頁)。
「歴史は、歴史的意味という点から見た選択の過程なのです」(155頁)。
「歴史における解釈はいつでも価値判断と結びついているものであり、因果関係は解釈と結びついているものであります」(158頁)。
「歴史における客観性・・・というのは、事実の客観性ではなく、単に関係の客観性、つまり、事実と解釈との間の、過去と現在と未来との間の関係の客観性なのです」(178頁)。
「スミスの「見えざる手」に当るものをヘーゲルに求めれば、個人を働かせて、個人の意識していない意図を実現させる、あの有名な「理性の奸計」であります」(204頁)。
それにしても、単純な進歩史観には与しないラスキですが(ちなみに、市井三郎氏のこれも名著である『歴史の進歩とはなにか』は、本書の第5章を解説ないしは敷衍した内容であることを実感)、現代社会において「理性が果し得る役割」(219頁、なお232~4頁も参照)を信頼していたと思しき彼が、今日の世界を観たら何と評するであろうか、実に知りたいところである。
歴史とは何か 改版
2024/05/12 14:20
歴史を見る目を考える
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
イギリスの著名な歴史家E・Hカーがケンブリッジ大学で連続講義をした講義録を翻訳したもの。歴史を読んだり解釈したり評論するとき歴史とは何かと考えることもあるだろう。
その答えになるかは分からないが考え方のヒントにはなった。歴史を考える哲学講義録と考えた方がいいかもしれない。カーは「歴史とは現在と過去の対話」と述べ自分の置かれた環境や考え方だけに囚われて見てはいけないと。また、新しさに流されてもいけない。常に過去を見る新しい目を持つべきと説いている。