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吉野弘詩集
結婚式の祝辞としてよく引かれる「祝婚歌」,いのちの営みに静謐で温かい眼差しを投げかける「I was born」,現代における「受難」の意味を,心のやさしさに凝視める「夕焼け」――――.穏やかな語り口の,深い愛情に満ちた,鮮やかな抒情の音をひびかせる,吉野弘(1926―2014)のエッセンス.(解説=小池昌代・谷川俊太郎)
吉野弘詩集
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吉野弘詩集
2019/02/26 15:43
あなたも あるとき 私のための風だったかもしれない
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩人の茨木のり子さんに「祝婚歌」と題したエッセイがある。
エッセイというより、吉野弘の短い詩論であるかもしれないが、エッセイ風に綴られている。
タイトルにあるように、これは吉野の代表作である「祝婚歌」にまつわるさまざまなこと、それは吉野の結婚生活における逸話や同人「櫂」における吉野の姿(まじめに長考する姿はこの文庫の解説を書いている谷川俊太郎さんも同じようなことを記している)であるが、そこから吉野の詩に向かう姿まで浮かんでくる、実に巧みな詩論でもある。
その最後に、茨木のり子さんはこう書いた。
「現代詩がひとびとに記憶され、愛され、現実に使われているということは、めったにあるものではない。ましてその詩が一級品であるというのは、きわめて稀な例である」と。
吉野弘が「祝婚歌」という詩をもっておそらく現代の詩人とて今でも広く人々に愛されていることは誰もが認めるところだろう。
この文庫で編者となった小池昌代さんは「日常を材とし、そこに詩を発見した作品は、意味を手放さず、わかりやすい」し、それでいて読者を深みへと連れていくと評している。
しかし、「祝婚歌」があまりに有名になったために、それ以外の吉野の詩を鑑賞することが妨げられていないだろうか。
この文庫に収められた詩がすべてとはいわないが、少なくともここには「祝婚歌」とは違う吉野弘もまたいる。
人はひとつの顔だけを持っている訳ではない。
一見人のよさそうな吉野にしてもそうだろう。
いくつもの表情があるからこそ、詩が生まれ、詩の深みが増すのではないか。
吉野弘はそういう詩人だ。
吉野弘詩集
2020/06/20 13:26
菜々子へ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
菜々子へ
(略)
ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。
自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。
自分があるとき
他人があり
世界がある。
(略)
この詩集の中で一番好きな詩です。
これだけで、買って良かったと思いました。