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5件
ジョージ・オーウェル
著者 川端康雄
「反ソ・反共」作家のイメージから「監視社会化」に警鐘を鳴らした人物へと,時代とともに受容のされ方も変化してきたオーウェル.ポスト真実の時代に再評価が進む『一九八四年』などの代表作をはじめ,少年時代から晩年までの生涯と作品をたどり,その思想の根源をさぐる.危機の時代に,彼が信じ続けた希望とは何か.
ジョージ・オーウェル
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ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌
2021/02/26 10:39
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1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
50年以上も昔の1968年に発売された早川書房の世界SF全集の一巻にハックスリイの「すばらしき新世界」とオーウエルの「1984年」が収められていた。当時16歳の頃にこの本を購入して読んだ。SFとはいえ内容が難しいものに思え、次第に忘れていった。その後、学生時代、英語の講義で使用されたエッセイ集でもオーウエルに出会い、再度、例えば1984年が来たら読み返してみようと思っていた。
そうこうしているうちに、21世紀になってしまった。この本はその後転居する度に持ち続けて今も書棚にある。そのオーウエルが没後70年だという。本書を読みオーウエルの人や人生について初めてわかったような気がする。
階級格差、植民地政策と人種差別などイギリスの社会も複雑性に富んでいるが、サッチャー以後の新自由主義的政策により格差も激しくなっているという。そのような背景をもつ社会に生まれ育ったオーウエルも強い影響を受けていたのであろう。波瀾万丈、破天荒とも思える行動は人間としての理想に対してそれを損なうものへの怒り、憤りをもって表現してきた人生だった。今年はオーウエルの作品をじっくり味わいたいと思う。
ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌
2020/08/22 12:39
ソ連に騙されなかった人間
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近「赤い闇」という映画を観た。1930年代前半のソ連の農業集団化と大飢餓を描いた映画である。そのなかで、ジョージ/オーウェルが登場する。革命後のソ連は、社会主義こそが優れていると、世界を騙そうとして。ソ連は、労働者の楽園であると。実際は、大飢餓や強制収容所があふれるこの世の自国であった。ソ連は、バーナード・ショーなど西欧の知識人をソ連に招いてポチョムキン村(エカチェリーナ二世を騙すためにポチョムキンが見せかけの豊かな村を作った)を見せたのだ。ショーは一生騙され続けたが、ジッドやオーウェルは、おかしいと感じるようになったのだ。現在のロシアや中国にも通じることである。オーウェルの生き方や視点は学ぶべきことが多いだろう。
ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌
2021/02/02 21:59
人間にはサンチョパンサ的側面も必要!なるほど
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの「一九八四年」のジョージ・オーウェルの46年というあまりにも短すぎる一生を丹念に掘り起こしたノンフィクション。この本を読んでみてわかったことなのだが、ジョージ・オーウェルという人の「一九八四年」や「動物農場」という作品は単に反共産や反ソ連の立場から書かれたものではないということ(もちろん西側陣営は彼の作品をそう扱ったが)、反民主主義的な政治手法をとる政権、そうトランプ政権がそうだった、もジョージ・オーウェル氏の憎悪の対象、トランプはまさに「動物農場」の豚そのものに彼が生きていれば思ったに違いない。人間のドン・キホーテ的側面は英雄崇拝、指導者崇拝に悪用されうからサンチョパンサ的な「地を這う虫から見た人生の眺め」を持つ側面も同時に必要なのだとオーウェルは説く、なるほどと思った