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4件
ファウスト
生の意義を把握するためとあらば悪魔に魂を売りわたすことも辞さぬファウストにとって自己救済はいかにして可能だったか.――ゲーテ(一七四九―一八三二)は若くしてこの大作を書きはじめ,完成までにほとんど全生涯を費した.そして脱稿のあと「私の今後の生活は全くの贈物のような気がする」といって深い悦びを語ったという.
ファウスト 2
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ファウスト 第1部
2005/09/08 12:57
ゲーテの気迫
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る
第 1 部は比較的──飽くまで「比較的」ですが──スムースに進めます。しかし,第 2 部に移ると,ゲーテの,“気迫”と言うか,重さがずっしりと伸し掛って来ます。前以てホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』,ウェルギリウスの『アエネーイス』,又,旧・新約聖書あたりを読んでおけば,更に愉しむことが出来ただろうな,と思います。■
ファウスト 第1部
2012/07/22 16:57
世界征服の夢から天使墜落へと
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファウストはメフィストフェレスの誘惑に乗って、あらゆる欲望を実現する。彼の欲望は強靭で醜悪だ。むしろその激しさにメフィストの方が引きずられている。
ファウストは少女を毒牙にかけて破滅させる。美少女グレートヘンの悲劇など歯牙にもかけないのは、彼が人類を超越した者だと自認しているのか、悪魔の、そして神の後ろ盾によって保護されているのか、肉体は若返っても脳は瑞々しさを失っているのか、彼の描くヴィジョンの前には些細なことでしかないのか。肥大する欲望は魔女たちとの祝宴、ワルプルギスの夜を経て、もはや現世は顧みる必要も失われてしまうのだろうか。
あらゆる俗事は、究極の美女ヘレナとの愛の前には霞んでしまうのは仕方がない。時空を超え、詐術と権力を総動員して、結局どれほどの快楽だったのだろう。王国一つを征服し、侵略戦争を起こして、そうまでして手に入れずにはいられない激しい欲望だったのか。そこまでする価値のある至福だったのか。その巨大な仕掛けと壮麗さには目を見張る。神話上の賢女、妖精たち、科学の粋による人造人間ホムンクルスなどに彩られた展開は素晴らしい。
そんな美が奏でられるのは、もしかするとこの時代が最後だったのかもしれない。神の名の下にあらゆる生贄が許されるのは、既に19世紀には稀少だったはずだ。人々は皇帝を疑い、神の不在を疑う。自然は決して征服されることはなく、天地は法則に従い、理性は常に狂気と一体なのだと、人々は悟った。罪の清算は自らの中にメカニズムを求めた。
ファウストは、最後にはその欲望を人々に奉仕することに求める。世間の約束事を無視して自在に振舞うことより、その底に沈むことをを願うことで安寧を得るという対比こそが、この作品の眼目で、その落差のためにも華麗にしてグロテスクな遍歴は必要だったのかもしれない。そのような華麗なショーを見せてくれる最後の作家がゲーテだったのではないか。
ホフマンも、ネルヴァルも、ハイネも、そのような世界観からは既に離れている。聖的な世界は地に堕ちている。時代の境目として見れば、人間中心の哲学と神学的哲学の混交がゲーテの中にあったということか。
この古典中の古典、傑作中の傑作について、ど素人が分析するなんてゴメンナサイなのだけど、はてさて僕の中ではそういう位置に落ち着きましたよ。
ファウスト 第2部
2022/12/18 09:33
幸運な人
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
裕福な家庭に生まれる。親の社会的地位。男性に生まれた事。手を伸ばして本棚の本に触れても怒られなかった事。