倒立する塔の殺人
著者 皆川博子
少女を殺したのは、物語に秘められた毒――戦時中のミッションスクールでは、少女たちの間で小説の回し書きが流行していた。蔓薔薇模様の囲みの中に『倒立する塔の殺人』とタイトルだけ記されたその美しいノートは、図書館の書架に本に紛れてひっそり置かれていた。ノートを手にした者は続きを書き継ぐ。しかし、一人の少女の死をきっかけに、物語に秘められた恐ろしい企みが明らかになり……物語と現実が絡み合う、万華鏡のように美しいミステリー。
倒立する塔の殺人
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倒立する塔の殺人
2016/04/16 17:25
現役の少女たちに是非読んでほしい作品
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的な好みとしては『薔薇密室』がドストライクなのですが、『倒立する塔の殺人』はまた別の意味で特別な作品。
「あぁ、これを何故小学5・6年生のときに読めなかったのだろう!」という(いえ、実際私がその年にはこの本はまだ書かれていないのですが)。
そういう、「そういう頃に読んでおきたかった!」という作品。
だから是非、そういう年代の人たちに読んでほしい。
ただし、影響受けすぎたら人生変わるかも。
中井英夫や佐々木丸美を読んでいなかったら多分今の私はいないように。
戦時下の日本にあるミッションスクールに通う女学生たち。 もうなんかそれだけでガツンとやられてしまう設定です。 他の皆川作品に比べて読後が軽めなのがよろしいかと(でもそれは手を抜いてるとか内容が重くないということではない。 メタフィクション構造でもあるし)。
こんなにも“少女の純粋なる残酷さ”を美しくもせつなく描かれてしまっているものはあるだろうか!、という意味で、萩尾望都作品にも通じる空気を文章で表現できてしまうのが素晴らしい。
まだまだ書き続けていただきたい方です。
倒立する塔の殺人
2016/12/06 22:53
受け継がれる少女小説
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:休暇旅行 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦時下、三人の少女の手を渡るリレー小説を中心に据えた、ヤングアダルト向けのミステリです。
女学校でひそかに手渡されていく何か、というイメージが魅力的です。その中身はみんな知らなくて、でもうつくしく危険な、そして生きていくために不可欠なものだ(自分など一部の人にとっては、といううぬぼれもふくみつつ)ということはみんな知っているから、どうにかして受け継がれていく。
作中に絵や小説への言及が多く、付録として作品のうしろに作中に登場した絵のギャラリーまでつけているあたり、作者自身もまた読者へと何かを手渡そうとしているように感じてしまいます。あえて語り手の女の子を、上述のイメージから離れた地に足のついた女の子にしたことにも、本気で届けようとする意志を見てしまう。読者への思いを感じる小説でした。
倒立する塔の殺人
2022/11/08 08:32
幻想小説?
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
御年90になっても意欲的に著作を続けていらっしゃる作者であるから、著作歴は非常に長い。当然作風もしばしば変わっているが、この作品も幻想味をずいぶん強めに出したもので、最近の作品とはずいぶん雰囲気が異なっている。サスペンス 謎解き要素も入っているが、はっきり言ってやや余分な気がする。幻想一本で書ききったほうがわかりやすかったようなきがする。