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3件
7つの階級
BBCが行ったイギリスの階級調査を複数の社会学者が分析した書。
従来の階級研究は、上流階級、中流階級、労働者階級の3つに分け、中流と労働者の間を明確に線引きすることが重視されてきたが、現代はそれほど単純ではない。
他から隔絶した最上層のエリートと、何も持たない最下層のプレカリアート(不安定な無産階級)という両極の間に、単純明快に分けることができない幅広い中流層が存在するという。著者らはこの中流を、経済資本(所得・貯蓄・住宅資産)・文化資本(学歴・趣味・教養)・社会関係資本(人脈)をどのようなバランスでどのくらい所有しているのかに着目して5つに分類し、7階級の存在を明らかにした。
1.エリート(elite)
2.確立した中流階級(established middle class)
3.技術系中流階級(technical middle class)
4.新富裕労働者(new affluent workers)
5.伝統的労働者階級(traditional working class)
6.新興サービス労働者(emerging service workers)
7.プレカリアート(precariat)
エリートを自覚しているくせに、自分は「普通」だと強調する現代的なエリートの姿、あからさまにはスノッブな態度はとらないが、自分の審美眼や知識をひけらかしたい豊富な文化資本の所有者など、英国階級調査参加者の偏りを補正するために行った追加的なインタビュー調査からは、現代のイギリスを生きる人々の生の声が知られ、非常に興味深い。
本書はイギリス特有の現象や慣例、考え方により叙述されるが、社会の上下両端の格差が著しいという状況は各国共通の現象であり、3つの資本が重なり合って格差が広がる実情は、私たち日本の現状にも当てはまる!
7つの階級
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7つの階級 英国階級調査報告
2022/02/15 22:38
エリート臭をまき散らす連中が私は嫌い
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.エリート(elite)
2.確立した中流階級(established middle class)
3.技術系中流階級(technical middle class)
4.新富裕労働者(new affluent workers)
5.伝統的労働者階級(traditional working class)
6.新興サービス労働者(emerging service workers)
7.プレカリアート(precariat)
簡単にブルーカラーはサッカーが好きで、ホワイトカラーはラグビーが好きだといった色分けができる時代ではなくなったようだ、なんだか「とても、とても、私はエリートなんかじゃ
ないですよ」と謙遜していながら、エリート臭をまき散らす連中が私は嫌いだ
2020/07/09 10:15
支配層から最下級まで
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
エリートからプレカリアートまでを、厳然と区分けしていきます。経済的な原因の他、文化的な資本や人脈の大切さを思い知らされました。
7つの階級 英国階級調査報告
2020/07/30 14:29
階級と格差・不平等
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授等がBBCとの連携で行った英国階級調査の報告書である。従来、貴族などの上流階級を除いて、中流階級と労働者階級に分かれていたイギリスの階級について調査分析し、新たに7つの階級区分に整理した。最上位のエリート層と最下層のプレカリアートは大きな格差となっている。中間の5階級は階級間の移動も自由であり、階級としての区分も緩いものとなっている。
世界的にも拡がっている不平等の拡大がイギリスでも示していることを確認した。階級区分を考える視点として、資産と所得という経済資本のみで評価するのではなく、文化資本と社会関係資本(社会的ネットワークなど)の3つを組み合わせて分析・評価することが必要であり、これらにより社会階級が形成されるとする。
不平等が拡大した大きな要因として1980年代のサッチャー政権から続く新自由主義的政策にあるとする。最下層の階級が益々貧しく富めるものは益々富んでゆく構造が問題であり、それが文化的、社会的不安、混乱の根源になり得る。不平等の拡大、格差の拡大はイギリスのみならず、アメリカや日本、その他世界各国でも進んでおり、各国の歴史的経緯等により差異はあるものの、普遍なものだろう。
今回は階級区分を分析の対象としているようだが、イギリスと同時期に新自由主義的政策を推し進め、格差の拡大が激しいアメリカの状況を論じたアビジット・V・バナジーらの「絶望を希望に変える経済学」で示されるように、政治、経済的な問題などについてもさらに多面的な調査分析が欲しいところだ。