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8件
断片的なものの社会学
著者 岸 政彦
★紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞!
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一生に一度はこういう本を書いてみたいと感じるような書でした。――星野智幸さん
この本は、奇妙な「外部」に読者を連れていく。
大冒険ではない。奇妙に断片的なシーンの集まりとしての社会。一瞬きらめく違和感。
それらを映画的につないでいく著者の編集技術には、ズルさを感じもする。美しすぎる。 ――千葉雅也さん
これはまず第一に、無類に面白い書物である。(…)
語る人たちに、共感ではなく理解をベースにひたすら寄り添おうとするスタンスは、
著者が本物の「社会学者」であることを端的に伝えている。─―佐々木敦さん(北海道新聞)
読み進めてすぐに、作者の物事と出来事の捉え方に、すっかり魅せられた。――唯川恵さん(読売新聞)
社会は、断片が断片のまま尊重されるほど複雑でうつくしい輝きを放つと
教わった。─―平松洋子さん(東京人)
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「この本は何も教えてはくれない。
ただ深く豊かに惑うだけだ。
そしてずっと、黙ってそばにいてくれる。
小石や犬のように。
私はこの本を必要としている」――星野智幸さん
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どんな人でもいろいろな「語り」をその内側に持っていて、その平凡さや普通さ、その「何事もなさ」に触れるだけで、胸をかきむしられるような気持ちになる。
梅田の繁華街ですれちがう厖大な数の人びとが、それぞれに「何事もない、普通の」物語を生きている。
小石も、ブログも、犬の死も、すぐに私の解釈や理解をすり抜けてしまう。それらはただそこにある。[…]
社会学者としては失格かもしれないが、いつかそうした「分析できないもの」ばかりを集めた本を書きたいと思っていた。(本文より)
断片的なものの社会学
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断片的なものの社会学
2017/09/15 22:36
人間の生活史の名著
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会学者の岸さんが人々の人生に耳を傾けて感じたことをありのままに書いた一冊。私達はつらいときにどうして薄ら笑いを浮かべてしまうのか、どうして寂しさを抱えながら他人と関わりたくないと思うのか、マジョリティが考える幸せにどう向き合うべきなのか。そういう答えのない問いに対して、誰かの人生とか自身の人生を取り上げて思いを綴っていく。
決して「こうするべきだ」とは書かない、言葉を一つ一つ目の前に置いていくような文章。それでもなぜかとても強い文章だと思ったし、久々に文章に惹かれました。人付き合いで疑問を感じた時に読み返したい本です。沁みました。
断片的なものの社会学
2017/12/28 04:46
不充分な人間の
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:猫目太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全体的に暗く、重い内容だが、どんどん先を知りたくなる。不思議と他者に冷たい様な著者の暖かい眼差しと、どんな人でも突き放さない優しさを感じる。「人は孤独で、なにもない存在」と絶望してしまいそうだ。不充分な存在で、それを生きていかなければならない辛さがある。それでも、不充分な存在同士、寄り添う社会が必要だと感じる。読み終えるのが惜しい本だった。
断片的なものの社会学
2023/04/29 18:46
人と人とが集まると社会が出来る。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
当たり前ですが、この日本に人は1人しか存在していません、などという事はありません。一人以上存在しています。一人以上存在していて、しかもその全員が生存している状況なら、何らかの関わりが生じます。それが社会(society)だと思います。
一方で私自身もそうですが一人の人というのは個人です。個人という存在です。個人という存在は自身の中で個性を持ち、自身での考え方や主張を擁しています。
個人が社会という枠組みの中でどの様に他の個人と関わりや関係を持っていくかは一括りに結論付けにくいです。
個人と社会との関わりについてマイノリティとされている側にいる人達からの声を拾って紹介された内容も著述され、またそれ以外に著者自身の独白もなかなかに頷けるものもあり、非常に興味深く読了出来ました。