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7件
ゲームの王国
著者 小川 哲
【体験版/本電子書籍は、2月15日配信開始の電子書籍版『ゲームの王国』(上)を219ページ相当分まで読むことができます】サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子とされるソリヤ。貧村ロベーブレソンに生を享けた、天賦の智性を持つ神童のムイタック。皮肉な運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1974年のカンボジア、バタンバンで出会った。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪ったすべての不条理は、少女と少年を見つめながら進行する……あたかもゲームのように。
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ゲームの王国 下
2023/12/22 01:57
ジャンルレス
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほぼ歴史小説のようだった上巻から、
そういえばSFだったとなる下巻。
とはいえ、少し年代を先取りしているほかは
かなり現実的なライン。
かなり終盤にさしかかったところで突然来る
殺人犯vsヘモグロビンのくだりがあったり、
シリアスとジョークがしっかり編み込まれていて
クセになる読み心地。
或る愛の物語。
ゲームの王国 上
2023/12/02 01:18
東南アジア
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川さんの作品は2作目だけれど、
文体がクセになってきた。
決して読みやすいストーリーではないし、
視点がコロコロ変わって理解をしやすいわけでもない。
たまにトンデモな話も混ざっている気もするけれど。
上巻が終わってすべての準備が整った感じ。
作品のあちこちにちらばっている理論がどう回収されていくか楽しみ。
ゲームの王国 上
2019/12/25 22:11
不条理な世界で
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本SF大賞を受賞した作品と知って、本書を手に取った。
読み進めていくうちに、これはSFなのか?と首をかしげていた。
物語の舞台は1960年代から1970年代にかけてのカンボジア。
そこで語られるのは歴史小説といってもいいほどの、どこまでも現実的な描写や、史実を交えた革命の物語である。
本書を読んで驚いたのは、当時のカンボジアに対する圧倒的な情報量である。
私自身当時のカンボジアに対する知識などこれっぽちも持ち合わせていないが、ポル・ポトなど耳にしたことのある名前の人物を中心に当時の文化や慣習を丁寧に描いていた。
個人的に何より本当にこうだったのではないかと思わされたのは、ロベーブレソンの村民たちの物事の考え方だ。
論理的思考や科学的知識などではなく、伝承や呪術師のことを信用し、ティウンやムイタックが疑問を抱くと頭が悪いと罵る。
現代とは真逆の考え方が当時のことを全く知らない私でも、当時のことのように思えた。
不条理なルールを変えるために立ち上がり、革命を起こしたものがまた不条理なルールを作り出す。
そのようなどこにも救いがない世界に晒された人たちの描写がとても素晴らしい。
特にアドゥがお気に入りだ。
「たとえ意味がなくても、生き残らなければならない。死ねばすべての意味が消失する。」と決意し、何が何でも生き残ろうとしたアドゥの強さには感銘を受けた。
「理想郷は無限の善を前提にしているためとても危険だ。なぜならあらゆる有限の悪が許容され、想像以上の人々が苦しむことになる。」といった鋭い洞察に満ちたセリフなども本書の魅力の一つだ。
上巻は不条理に満ちた世界の恐ろしさや、その世界で懸命に生き延び、世界を変えようと奮闘する登場人物などが描かれていた。
下巻での展開が全く予想出来ないので非常に楽しみだ。