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4件
あなたのための物語
著者 長谷敏司 (著)
西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格《wanna be》に小説の執筆をさせることによって、使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である“感覚の平板化”の解決に捧げようとする。いっぽう《wanna be》は徐々に、彼女のための物語を語りはじめるが……。
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あなたのための物語
2017/02/12 12:03
色褪せない名SF
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
人工神経制御言語ITPの開発者サマンサの人生を描いたSFです。
ITPで造られた仮想人格wanna beと、余命半年の生身のサマンサの対立。
倫理を重んじる会社と、生への渇望で倫理を踏み越えようとするサマンサの対立。
運命論を強く信じる母と、研究を重ねて運命に抗うサマンサの対立。
物語の中で常にサマンサは孤独な存在です。しかし筆者はサマンサにハッピーエンドを用意せず、容赦のない展開が訪れます。技術の進歩と共に、人類の人間性まで進化するわけではないので、この展開も必然と言えば必然なのかもしれません。
執念に憑りつかれたサマンサは最期に何を思ったのか。サマンサの心に寄り添って考えることができたなら、これは間違いなく「あなたのための物語」なんだと思います。
2020/04/14 06:05
この珠玉の小説を海外にも広げて欲しい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふたつゆび - この投稿者のレビュー一覧を見る
「航路」(コニー・ウィルス)の死生観と、「ドゥームズデイ・ブック」(同)の絶望と、「幸せの理由」や「祈りの海」(グレッグ・イーガン)の科学的構築に、「BEATLESS」(長谷敏司)の人工知能と人の心の乖離と恋愛を、かき混ぜた混沌の中から大人の小説としての最良の部分をすくい上げた様な小説。
ヘビーなSF愛好者でないとわかりにくい説明かもしれないけれど、これほど完成度の高い国内SFは久しぶりで、他の表現の仕方が思いつきません。語り口も海外作品ぽくって、翻訳者を確認しそうになったほどです。
冒頭の様な比喩を書くと自分で読み考えずに「所詮、真似事」とか「オリジナリティがない」とかいう専門家(馬鹿?)がいるけど、普遍的な課題の中で何をどう掬い上げ、小説として成立させること自体が、オリジナリティです。個人的には類似テーマで最優の作品と同列視するほど優れた作品です。
村上春樹と同レベルでSF分野に限らず海外にも通用する作品だと思いますので、ぜひ海外展開をお願いします。
あなたのための物語
2015/08/23 19:39
感動な物語
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やまだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
仮想人格wannabeと余命半年を切った博士サマンサの物語です。
wannabeの「何かお役に立てますか」のセリフが切なくなりこの小説の最後の文で喪失感をあじわいました。