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6件
侍女の物語
著者 マーガレット・アトウッド , 斎藤 英治
【カナダ総督文学賞受賞】男性絶対優位の独裁体制が敷かれた近未来国家。出生率の激減により、支配階級の子供を産むための「侍女」たちは、自由と人間性を奪われた道具でしかない。侍女のオブフレッドは生き別れになった娘に会うため恋人と共に脱出しようとするが……。辛辣なシニシズムで描かれた戦慄の世界。
侍女の物語
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侍女の物語
2017/05/03 15:02
キリスト教原理主義の宗教国家
14人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語の舞台は、近未来のアメリカに
キリスト教原理主義勢力によって誕生した宗教国家、ギレアデ共和国。
環境汚染、原発事故、遺伝子実験によって出生率が低下しています。
数少ない健康な女性は、子供を産むための道具として
支配層である司令官に仕える「侍女」となることが決められています。
その制度を正当化するために、聖書の言葉が巧みに利用されています。
「トランプ政権の未来がここにある」という帯の文言に惹かれて読みましたが、
トランプ政権の跡のアメリカがこのような国家になるとはあまり思えません。
上に挙げたような原因で実際に出生率が低下するという話しに、現実感が持てないからです。もし、そのような状況に陥ったとしても、男女の平等が概ね認められている社会で、キリスト教原理主義の男尊女卑の社会が産まれるとは到底思えないからです。
ここまで、アメリカが「侍女の物語」のような社会になるとは思えないことを述べましたが、本作品が読む価値のない作品であるとは全く思っていません。
世界には、男尊女卑の社会が未だ存在しています。例えば、ISIL(通称「イスラム国」)は、女性を性奴隷にするための制度を戦略的に計画し、理論的に正当化しています。
勘違いしてほしくないですが、この問題について、イスラム教自体を批判しているわけではありません。イスラム教を、そのような制度を正当化するために利用することを批判しているだけです。
ISILの例を見てもわかるように、人権を無視した制度を正当化するために、
宗教の教えを巧みに利用する点については、本作品で描かれている世界は、
実現可能な近未来というよりかは、現在の世界にも通じているような気がします。
侍女の物語
2023/01/25 11:41
誰も仕合せではない。
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ合衆国でクー・デタが起こって、キリスト教の原理主義者が実権を握ったとされる架空のギレアデ国。出生率の低下により出産可能の女性たちが指導者層の男性の「侍女」として側に置かれる。「妻」でも「愛人」でもない。「侍女」だ。
宗教的に性行為は子孫繁栄の為に行われるもので、快楽や欲望の為にあるのではない。
理屈はそう。そして権利も知恵も取り上げられ、従順であれ家庭に回帰せよと、「女中」や「妻」、「侍女」、それ以外と役割を分けられた女性たち。
しかし、聖書の教えに従えば禁欲を強いられる(教義上水商売は大罪になるので、売買春はもってのほか)男性がいて、「妻」や「侍女」がいてもそれは種付け行為として管理される高位の男性がいる。
女性の自由を奪ったら、男性までも不自由になった社会。
厳しくすればするほど理想的になるかも知れないが、守れもできなくなる。
侍女の物語
2021/03/17 22:55
どんどん引きずり込まれる
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の作品を読むのは、昨年10月の「またの名をグレイス」以来、あの作品は本当にあった殺人事件をもとにして書かれた奇妙で不思議で恐ろしい物語だった。この作品も、マーガレット・アトウッド氏のことだから一筋縄ではいかない。「侍女」「司令官」「保護者」「目」と謎のワードが冒頭から飛び交う。ああ、刑事ジョンブックにも登場した隠者のように暮らすアーミッシュを描いた作品かとまったく頓珍漢なことまで考えていた。だんだんと、「侍女」の正体がわかってくるうちに読むのが怖くなってくる。主人公・オブフレッド(この名前を訳アリだ)が最後にどうなったのかがすごく気になる、逃亡できたのか、失敗したのか、謎のテープはどのように保管されたのか、続編の「誓願」ではどこまで明かされるのだろう、すごく気になる