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恥辱
〔ブッカー賞受賞〕52歳の大学教授は二度の離婚を経験後、娼婦や手近な女性で自分の欲望をうまく処理してきた。だが、軽い気持ちから関係を持った女生徒に告発され辞任に追い込まれる。彼は娘の住む片田舎の農園へと転がりこむが、そこにさえ厳しい審判が待ち受けていた。ノーベル賞作家の代表作。解説/野崎歓
恥辱
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恥辱
2010/02/21 22:00
今世紀初頭西欧知識人的堕落論
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西欧知識人が人類を牽引しているかのような世界観は、いわゆる先進国の
人々の間では、地動説以前の天動説や、ダーウィン以前のキリスト史観の
ように、それがないと思考しがたいほどに脳みそのベースになってしまって
いるけれど、きっと今は人類の思考の軸が拡散してきていて、良くも
悪くも何をどう考えるのが「良い」のか、よくわからない世界に
なってきている。
本書の主人公、初老の文学部准教授のデイビッド・ラウリーは、物語が
始まると結構すぐにセクハラ疑惑で職を失い、「百姓」を目指す娘・
ルーシーのところへ転がり込む。西欧中心主義の幻想が解けたリアルな
南アフリカでは、元准教授のおじさんは、本当にただの老いたおじさんで、
多すぎる犬を安楽死させる仕事くらいしかすることがない。
本書中盤以降で描かれる南アフリカの情景は過酷ではあるのだが、
それが過酷であろうとなかろうとアパルトヘイト以降の人種間の問題は
あぶり出され、そんな現実の中でこれまでの西欧の所業に対する贖罪を
全て負うかのようなルーシーの行動は、今後の「アフリカの白人」たちの
苦難と光明を体現するようでいて、尊い。
西欧的知的エリートは本書で何段も何段も堕ちていくのだが、そこで
犬の安楽死の処理をしながら初老の男は、老いてゆく自らと向き合い、
人種を超えて共有すべき大地と向き合い、望まれずに生まれ来る命と
向き合い、まさに「犬のように」犬を葬り去るときに胸に迫り来る想いと
向き合う。そんな想いに、遠からず我らも生きながら対面せねばならない。
堕ちようが過酷であろうが、生きねばならない。
恥辱
2020/06/30 21:55
主人公は嫌な男
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白い小説の宝庫「ブッカー賞」を2度受賞して、その上に「ノーベル賞」まで受賞している巨匠の作品。もちろん、この作品もブッカー賞を獲得している作品。ラウリーという主人公の元大学教授ははっきり言うと嫌なやつだ。週に1回は(2回の時も)買春し、教え子にも手を出す(このことで彼は職を失う羽目に会う。ざまあみろだ)。そのくせ、自分の娘がレイプされたと怒り狂う(怒るのは当たり前だろうが、お前がどの口でいうのかとも思える)。時代背景としてはアパルトヘイトが崩壊した後の南アフリカ、主人公のラウリーは52才だから旧人類に属している、隣人の黒人が偉そうにしていることに我慢できないし、もちろん娘が黒人たちに強姦されたことも我慢ならない。あいつらはついこの間まで奴隷だった連中じゃないかと嘆く。南アの白人たちの嘆きが聞こえてきそうだ
恥辱
2017/04/11 04:30
2003年ノーベル文学賞受賞者
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
高い知性を持ちながらも落ちてゆく52歳の大学教授の姿が印象的だった。文学とは何かを模索する野心作でもある。