たゆたえども沈まず
誰も知らない、ゴッホの真実。
天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。
二人の出会いが、〈世界を変える一枚〉を生んだ。
1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。彼の名は、林忠正。その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいた。兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すーー。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』の著者による
アート小説の最高傑作、誕生!
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たゆたえども沈まず
2017/12/21 15:31
原田マハがゴッホを書いたとなると読まずにいられない
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ゴッホといえば世界中の人が知っている画家であることは間違いないが、日本人ほど彼を好きな国民はいないのではないだろうか。
もしかしたら日本のどこかでいつもゴッホの絵が公開され、人々は長い列をなしているような気さえする。
おそらく日本人がどんな日本画家よりもその名を知っているゴッホをアート小説の旗手原田マハがどのように描いてみせるか、この作品ほど読む前から興味をひいたことはない。
そんな期待は多くの読者が抱いたと思うが、原田は単にゴッホとその弟テオ(そういえば日本人はこの兄弟の往復書簡も大好きだ)の関係だけでなく、そこの日本人の画商林忠正を配することで、ゴッホが愛した浮世絵との関係も浮かび上がらせることに成功した。
おそらく原田の創作と思われる林の部下である重吉という人物が、ゴッホ兄弟と林との仲介と林が持っていた野望と熱情を描くのに必要であったのであろう。
創作上のそんな構成は見事であっても、原田もまたゴッホの持っている悲劇性から脱却することはできなかったといえる。
もちろん画家ゴッホの生涯は確かに悲劇であるし、その弟テオも兄の死から半年で死んでしまうのであるからそれもまた悲劇であるが、もし純粋にゴッホという画家を評価するならば、そういう悲劇性から切り離れた描き方もあってもよかったような気がする。
それは画商林忠正をどう描くかによって違ってきたはずである。
ゴッホを描いた原田マハの次なるアートは何だろう。
たゆたえども沈まず
2018/05/08 22:23
パリ市の紋章Fluctuat nec mergiturがタイトルに
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人ってゴッホのことが大好きでしょう。もちろん彼の作品は素晴らしいし、人生そのものが小説的でもある。ただ、ここまで私たちがゴッホに惹かれるのは、何か他の理由があるんじゃないかとずっと考えてきた。ゴッホの弟で画商のテオは破天荒な生活をしながら絵を描いているゴッホを経済的精神的に支える。画商の林忠正はパリに浮世絵を広めゴッホは浮世絵に強く惹かれる。ゴッホとテオ兄弟愛と忠正との関係をリアリティ溢れる文章で描いていてマハさん渾身の一作になっているのでは。ゴッホの絵画に日本人が深くか関わっていたことは驚き。弟テオを通して語られるゴッホは、「銀河鉄道の父」で父の目から描かれた宮沢賢治を思い出した。
たゆたえども沈まず
2018/05/05 22:54
ゴッホ兄弟
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今でこそ評価の高いゴッホも生きてる間は不遇で、そんな兄を献身的に支えた弟の存在は広く知られてます。
そんなゴッホ兄弟を題材に、親交のあった日本人画商たちの姿を描いてます。
少しずつ壊れて行くゴッホ、兄を愛しながらも天才に付いて行けない弟の苦悩や寂しさが描かれてます。
緊張感ある展開に一気に読んでしまいました。