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著者 リディア・デイヴィス(著) , 岸本佐知子(訳)
言葉と自在に戯れる、小説の可能性
「アメリカ文学の静かな巨人」のデビュー短編集。言葉と自在に戯れるデイヴィスの作風はすでに顕在。小説、伝記、詩、寓話、回想録、エッセイ……長さもスタイルも雰囲気も多様、つねに意識的で批評的な全34編。
ある女との短命に終わった情事を、男が費用対効果という観点から総括しようとする表題作「分解する」。救いのない不動産に全財産をつぎ込んだ男が、理想の家屋の設計の幻想を若い猟師と共有していくさまを描いて不思議に美しい「設計図」。語学講座のテキストの裏で不穏な自体が進行していく「フランス語講座その1――Le Meutre」。人生で何ひとつ成しえない男のオブローモフ的生活を描く「ワシーリィの生涯のためのスケッチ」。〈夫〉の喉にひっかかった小骨をめぐるどこかほのぼのとした「骨」や、長編『話の終わり』の原型とおぼしきファン必読の短編も。
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2024/01/20 15:26
甘くなく苦いお話
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おきらく - この投稿者のレビュー一覧を見る
リディア・デイヴィスの初の短編集。小説、伝記、詩、寓話、回想録、エッセイとどの作品も作風が異なる。特に表題の「分解する」は、終わってしまった恋(それが恋なのかも疑問)にかかった費用を細かく説明するめんどくさい男の話。語学講座のテキストの裏で不穏な自体が進行していく「フランス語講座その1――Le Meutre」には、受講者たる読書を不穏な感情を抱かせる。夫の喉にひっかかった小骨をめぐるどこかほのぼのとした「骨」は、ギスギスとした空気は感じられなかったが、後半の「靴下」では前夫ポール・オースターが「なるほど。あの作家は面倒くさそうな人物だ」と。
すべての話が日常的で登場人物たちは、不幸ではないが幸福でもなさそう。半径1m内で起こる些細な出来事だが、心にいつまでも刺さる嫌な思い出と感情表現が上手すぎる。
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2023/05/28 14:16
デビュー短編集
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
リディア・デイヴィスのデビュー短編集。派手でわかりやすいものではないが、文学を読むことのできる醍醐味を味合わせてくれるデイヴィスはすでにこの時点でできあがっていたのである。